第29話 犯人の行方
まさかルーナちゃんが狙われるなんて思っていなかったよ。
思わず予定と違うことしちゃった。
「あ、そうだ犯人は!」
ルーナちゃんを助けたことで安心しちゃったんだけど、犯人はどうなったんだろう。
「犯人ならもう逃げたわよ」
「えっ?」
ジニーさんに言われて見ると、そこには誰もいなかった。
犯人のものだと思われる血と何やら水晶のようなものだけが落ちていた。
「あー、やっちゃったかな……」
犯人を逃してしまった。後を追って真犯人の元にいかなきゃいけなかったのに。
『どんまい』
『まぁ、ルーナちゃん優先するのはわかる』
『とっさに動いちゃった感じだったね』
『かっこよかったよ!』
視聴者さんたちは慰めてくれるけど、これでハッピーエンドに行けなかったらどうしよう。
「アリスちゃん、安心して。ヴェラが後を追って行くのを見たわ」
「本当ですか!」
そっか! ヴェラさんだけ別行動してたんだっけ!
まだ繋がってるかも!
「とりあえず、ルーナちゃんを送りましょう。ヴェラならきっと本拠地を見つけて戻ってくるわ」
「そうですね、ルーナちゃんもいい?」
「はい、ルーナはよくわからないですけど……、あ! 錬金術の素材が尽きちゃって市場に買い物に行こうとしてたんでした」
それで、ここを歩いていたわけか。
運がいいのか、悪いのか。
まぁ、助けられたから良しとしておこうか。
「なるほど、そんなことがあったんですね」
家に着いたあと、改めてルーナちゃんに事情を説明する。
行方不明事件が起きていること、そしてその犯人と思われる人物を発見したこと。
「ルーナはアリスさんに助けられたんですね」
ありがとうございますと、ルーナちゃんにお礼を言われた。
「元は私がちゃんとルーナちゃんに気をつけるよう言っておくべきだったから」
少なくとも今日くらいは出歩かないようには言えたはずだ。
「でも、アリスさんはちゃんと助けてくれましたから!」
うん、その笑顔で救われた気持ちになるよ。
「そうだ、アリスちゃん、これ」
私達二人を見守っていたジニーさんが何やら私に渡してきた。
「これは……犯人が落としたものですか?」
現場に落ちていた水晶。
きっと犯人が落とした魔導具だと思う。
「何か魔法の力が込められているみたいだけど……、何かしらあまり良くないものな気がするわ」
ジニーさんが顔をしかめている。
確かに、水晶は毒々しい黄色が渦巻いていてあまり見ていて気持ち良いものじゃない。
『うーん、毒々しい……』
『あれ? なんか俺が見たやつと違う?』
『こんな色してたっけなぁ』
『もうちょっと透けてたと思うけど』
なんか視聴者さんたちが不思議そうにしているけど。
「どうやら、魔力が篭っているみたいね……、これで何をするつもりだったのかしら」
ジニーさんが呟いた一言でわかった。
『あ、これまだ使われる前のやつだからか』
『アリスちゃん、速攻で止めてたからな』
『使わせる間もなく攻撃して落としたから、使用前の魔導具がそのまま残っているのか』
どうやらそういうことらしい。
本来であれば、現行犯で捕まえるために、魔導具を使ってから助けるところを私がフライングして助けちゃったから少し違う結果になったらしい。
『まぁ、でもいいんじゃね?』
『結局追ってはいるみたいだし、結果オーライよ』
『逆にいいアイテム手に入れたって思っておこう』
まぁ、そう思っておこうか。
それにしても、
「あんな犯人がどうしてこんなアイテムを持ってたんですかね?」
「えっ?」
「だってこれ見たことのないアイテムですよ? どこから入手したんでしょう?」
私は錬金術師だし、市場で売っているレシピには基本的に全部目を通している。
そんな私でも見たことのないアイテム、それがどこから来たのか気になる。
『言われてみたらそうだな……』
『それ以降も登場してないアイテムだし』
『言っちゃ悪いがあんなチンピラが持ってるのは不自然だな』
「……こんなアイテムを作れるのは錬金術師くらいよね?」
魔導具カテゴリは錬金術師の分野だ。
つまり、このアイテムは錬金術師が作ったアイテムになる。
それもそれなりに高レベルの……
「おばあちゃんは違います!」
突然ルーナちゃんが叫んだ。
確かに、今の状況だけ見ると、モーリスさんはありえない話ではない。
冒険者ギルドからも認められているくらいに優秀な錬金術師だ。
でも、
「わかってるよ。モーリスさんがそんなことするはずないよ」
私だってお世話になっている人を疑いたくない。
ルーナちゃんを安心させるように頭を撫でてあげる。
「ジニーさん、この街にはもう一つ錬金術師さんのお店があるんですよね?」
以前そういう話を聞いている。
「ええ、嫌なやつよ……確かに、あれならありえるわね」
うん、疑うべきはそっちかな。会ったこともない人だけど、色々と聞いた限りだといいイメージはない。
「西地区の錬金術師さんですか? おばあちゃんも愚痴をこぼしてました」
どうやら同業のモーリスさんからしてもあまりいい人じゃなかったみたい。
「でも、あっちで売っているアイテムはそんなに高レベルのアイテムじゃなかったわよ?」
まぁ、錬金術師がレベル上げるのは大変だからね。
「まぁ、ヴェラが帰ってきたら聞けばいいわね」
そんな話をしていると。
「ふぅ、戻ったぞ」
ドアが開いて、中にヴェラさんが入ってきた。
「タイミング良しね。大丈夫だった?」
「ああ、ばっちりだ。多分、敵のアジトらしきところまで入れたぜ」
おおっ! ヴェラさんが優秀!
「それで……それはどこだったの?」
ジニーさんが聞く、ルーナちゃんがゴクリと息を呑んだ。
ヴェラさんの答えは。
「あいつが逃げ込んだのは、西地区の錬金術の店だった」




