第19話 強すぎる生産職
というわけで、森までやってきました。
「ロナさん! 素材採取したいんですけど」
私がそういうと、ロナさんは頷いて手を離してくれた。
「ん、警戒しておく」
そう言って少し私から離れて周りを見回すロナさん。
どうやら、私が集めている間そうしてくれるみたい。
本当に助かるなぁ……
そうして、採取をしながら森を進んでいき、ついにやつが出た。
この間も出てきた小型犬サイズの魔物、ベビーウルフだ。
「ウ゛ゥゥ」
ベビーウルフは私のことを睨んで唸る。
動いたら飛びかかってきそうなので、動かないでいると。
「出た」
私とベビーウルフの間に、ロナさんが入り込む。
ロナさんは背中に背負ったハンマーを構える。
おっと、見ているだけじゃいけない。私も投石を取り出して、少しでもフォローしないと。
そんなことを思って取り出そうとしたら、
「……っ!」
ロナさんが凄い速さで動き。
「んっ!!」
勢いよくハンマーを振り抜いた。
ベビーウルフは一歩も動けないまま、一瞬で光と消えた。
……えー、えっと?
『えっ?』
『何が起きたし?』
『いや、相手ベビーウルフだから強くはないけど……えっ?』
『動き見えんかったわ』
視聴者さんも混乱中。
大前提として、ロナさんも鍛冶職のはず、つまりそれほど強くない……はずだったんだけど。
ロナさんは何事もなかったように、ベビーウルフが消えた後に残ったお肉を手に戻ってきた。
「んっ」
そして、私に差し出してきた。
受け取れと?
「えっと、もらっていいんですか?」
鍛冶職だから確かに肉はいらないかもだけど。
「私、何もしてないんですが?」
「ん、肉は必要ないから、んっ」
再度私に押し付けるように肉を渡してきた。
若干呆然としたまま肉を受け取る私。
「ありがとうございます」
「別にいい」
『ロナちゃんめっちゃいい子じゃね?』
『それな』
『というか、普通に強くね?』
『それな』
『鍛冶職ってあんなに強かったか?』
『いや、言うて生産職だし……、筋力はあると思うから他よりは戦えるとは思うが』
そうだ、ぼぉっとしてる場合じゃない。
「ロナさん、あんなに強かったんですね」
再び歩きだして話しかける。
「まさか、あんなに一瞬で倒すとは思いませんでした」
私がそう言うと、ロナさんは立ち止まり、
「これのおかげ」
ハンマーを見せてくれた。
えっと、ステータスを見ればいいのかな?
ってええっ!?
『ファッ!?』
『STR+120あるんだが!?』
『今の俺の武器の倍近いんだが?』
『えっ? 攻略組でも確か80くらいじゃなかったか?』
『嘘やん!』
あ、良かった視聴者さんも驚いている。
私の感覚としてもこれは凄い武器だと思ったけど。
「これ……凄いですね」
「ん、師匠が作ってくれた」
私が素直に驚いていることを伝えると、ロナさんはどこか誇らしげに胸を張った。
「へぇ……ロナさんの師匠が……」
「自慢の師匠」
なるほど。
流石にロナさん自身が作ったわけじゃないけど、これを作れる人が身内にいるって凄いなぁ。
というか、この武器を軽々使えるロナさんってやっぱり凄い人なのでは?
『始まりの街の鍛冶屋で売ってる商品そんなにランク高いのないんだが?』
『まぁ、売ってる商品と実際に作れるのは差があるから……』
『こんなん作れるってわかったら攻略組が卒倒するぞ』
『プレイヤーの鍛冶師も卒倒しそう』
『ハンマー使いの俺氏、現在始まりの街に移動中』
『すでに、向かってるやつおったわww』
流れる視聴者さんのコメントを見つつ、森の奥へと向かっていく。
道中?
出てくるベビーウルフは全部一瞬で消えていったよ。
そりゃ、一年後でも追いついてないくらいのオーパーツ武器で最初の森を歩いてたらそうなるよねという感じだ。
ちなみに、聞いてみたところ、ロナさん自身のレベルはさほど高くないらしい。
「今レベル15くらい」
とは言っても、私よりも10以上高いんだけど?
ただ、視聴者さんいわく、
『まぁ、生産職ならそんなもんじゃね?』
『はじめのうちは上がりやすいからな』
『ただし錬金術師は除く』
『錬金術師ェ』
とさほど驚くものではないとのこと。
しかし、
「そろそろウルフが出てくる」
進んでいると、急にロナさんが言った。
えっ?
「ウルフはさっきから出てますけど?」
「もっとでっかいやつ」
うん? つまり?
『あ、ベビーじゃなくて、通常ウルフのエリアか』
『チワワからゴールデンレトリーバーに変わったと思っておけばいいよ』
『ゴールデンレトリーバーってか普通に狼でええやろ』
『ごめん、大型犬の種類出てこなかったんや……』
『草』
とっさに、種類出て来ないことってあるよね……
ではなく、さっきの小型犬とかじゃなくて、親みたいなでかいのが出てくるってことでは?
「きた」
私が混乱していると、ロナさんは止まってハンマーを構えた。
その瞬間、
「ガアァッ!!」
草むらから大きな影が飛び込んできた。
「ひゃっ!」
驚いて悲鳴を上げてしまった。
しかし、
「……ッ!」
ロナさんが、影に向かってハンマーを振り抜く。
大きな影がさっきにベビーウルフをでっかくした魔物だと私が認識したときには、ウルフは光となって消えていくところだった。
『まぁ、残当か……』
『あの装備だったらウルフくらい余裕よね』
驚いたのは私だけだったようでコメント欄は冷静だった。
ウルフが消えた後には、また肉が残されていた。
さっきと同じ種類だけど、大きいやつだ。
また、ロナさんが差し出してきた。
「んっ」
「あ、ありがとうございます、でも、ロナさんはいいんですか?」
さっきから何もしていない私、素材だけを受け取っているけど。
「肉はいらない、牙と爪が出たらもらう」
なるほど?
『あー、確かに、牙とか爪なら鍛冶の素材になるな』
そういうことらしい。
鍛冶師としては、売るくらいしか価値がないとのこと。
いや、それでも普通に売ればいいんじゃない?
と言ってみたんだけど。
「お金には困っていない」
とのことだった。
うん、一度は言ってみたいセリフだね。
再度押し付けられて受け取るしかない私だった。
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