第18話 助っ人は美少女エルフ
「どんな人だろうね」
冒険者ギルドに向かいつつ、ちょっとした不安を紛らわすように視聴者に聞いてみる。
話題は、今日一緒に冒険に行くことになっている冒険者の人について。
『ミナリアさんの話からは生産職ってことしかわかってないんだっけ』
だね、あとは個人情報ってことで教えてもらえなかった。
まぁ、勝手に情報が広がっていくことがないってのは、ありがたいことではあるけど、こういう時は困るよね。
『昨日のアーカイブ見てきた、ミナリアさんは”あの子”って言ってたから若い子だと思われる』
そういえば、そうだっけ?
なんとなく、聞き流してたけど、確かにそう言ってた気もする。
『つまり、女の子かそれともショタか……』
『どっちでもありだな……』
『少なくともミナリアさんよりは歳下と思っていいだろう、なお、ミナリアさんの年齢は……』
『おっと、ミナリアさんについてはそこまでにしておくんだな』
女性の年齢については触れてはいけないよ?
というか、私も知らない。
あの人、年齢不詳だよね……
ちょっと緊張しつつ、冒険者ギルドに入る。
いつもよりも早い時間だから、かなり沢山の人がギルド内にはいた。
皆、依頼書の前に立って、吟味している。
そんな中、私は、人の間を縫ってミナリアさんの前に立つ。
「おはようございます」
「おはよう、アリスちゃん」
幸いにも、ミナリアさんの前には誰もいないみたい。
「アリスちゃん、いいローブ着ているわね。それに杖も持って、気合は十分そうね」
ローブは昨日買ったやつだけど、外に出る用の格好してきたのは始めてだっけ。
ミナリアさんが、うんうんと頷いている。
「それなら大丈夫そうね、それじゃあ、早速だけど紹介するわ」
来た!
一体どんな人かな。
「ロナちゃん、来てくれるかしら?」
ロナ? というのが相手の名前らしい。
そして、さっきの私のように人の間を縫ってきて出てきたのは。
一人の女の子だった。
『女の子キタ!!』
『可愛い!』
『ハンマーっ娘だぞっ!』
『あれ? この娘見たことあるような?』
唐突な美人な女の子にコメントがだいぶ盛り上がっている。
そのロナさん? の見た目は、年齢は私より少し上っていう感じかな。
背中に大きなハンマーを背負っているからきっとあれが武器っぽい。
動きやすい格好はいかにも冒険者という感じ。
クールなというよりちょっと眠そうな顔をした、ちょっと不思議な感じがするような女の子。
しかし、そんな表情よりも目立つ特徴がある。
『耳の形からするとエルフか!』
耳が少し尖っている!
これは私でも知っているエルフの特徴だ!
「紹介するわね、この子はロナちゃん、鍛冶をやっている子よ」
ロナと呼ばれたその子が私をじっと見つめる。
あ、挨拶しないと。
「アリスです! よろしくお願いします」
勢い余って頭を下げてしまった。
「ん、よろしく」
ロナさんからの返答はそれだけだった。
あれ? なんかちょっと反応薄い?
そんな私を見て、ミナリアさんが苦笑いをする。
「ちょっと変わった子ではあるけど、悪い子ではないのよ」
変わった子であると、本人の前で言っちゃうの?
そして、ロナさんはそれに対してなんの気にした様子もない。
「ん、それじゃあ、行こ」
「えっ? きゃっ!」
気にした様子もないまま、ロナさんは急に私の手を取り、そのまま引っ張ってギルドの外へと出ていく。
思わず、驚きの声を上げた私だったが、ミナリアさんが相変わらずの苦笑いのまま、手を振っているのが見えた。
そのまま手を引かれ、街の外へと向かっていく。
あれ? 細かいお話とかしなくていいのかな?
そんなことを思いつつも言い出せないまま引っ張られる私。
そして、そんな私を横目になにやらコメントが盛り上がっていた。
『おつなぎ、てぇてぇ』
『ちょっと長身の女の子に引っ張られるアリスちゃん、ありだな』
なんかよくわからない盛り上がり方をしてる。
それに、
『この子見たことあると思ったら、鍛冶屋にいる謎の女の子じゃね!』
『あ、そっか、確かにどっかで見たことあると思ったんだわ』
『美人NPCランキングで必ず上位に入ってくるのに、話しかけてもなんの反応もない子』
そんなランキングあるんだ。
確かに、ロナさんは女の私から見ても美形だ。
エルフってやっぱりこの世界でも美形なのかな?
『この子ロナちゃんって言うんだ』
『話しかけてもなんの反応もしないから、運営のバグか何かだと思われてたんだよね』
『それお前が不審者と間違われただけじゃね?』
『いや、そうじゃないって、誰が話しかけても無反応なんだって』
『鍛冶屋にいる、謎のNPCエルフってちょっと話題になってたよね』
『この子鍛冶職だったんだ……』
どうやらロナさんはゲームの世界だとちょっとした有名人らしいことがわかった。
そんな有名人が、突然現れたことでコメントが騒ぎになっていた。
まとめると、話しかけても全然返してくれないけど、エルフで美人だったので、かなり話題になってたとのこと。
そんな人がどうして私とパーティなんて組んで手伝ってくれるんだろ?
というか、私今どこに向かってるの?
「あの? ロナさん? これって今どこに向かっているんですか?」
わからないので聞いてみた。
すると、ロナさんは、立ち止まり、ちらっと私の方を見て、私の手を離して指を指す。
「あっち」
と一言だけ言った。
ロナさんが指を指した方角は、私が一昨日行ったあたりの方。
「そっちに何かあるんですか?」
私の言葉に、ロナさんはなぜか首をかしげた。
「……? ミナからウルフを倒したいと聞いた」
「あ……」
察すると、ミナ、つまりミナリアさんから、私がウルフに苦戦したことを聞いたんだろう。
それで、それを倒しに向かっていると。
違ってた? とでも言いたげに、こちらを見るロナさん。
「いえ、それで大丈夫です」
実際に欲しいのは、森やその先で手に入る素材ではあるけど、結局ウルフを倒せなければどうしようもないので、それで問題ない。
「そう、それじゃあ、行こ」
再び私の手を取って歩きだした。
いや、いいんだけど、私の手を取る意味あるのかな?
流石にはぐれたりしないよ?
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