第17話 装備を整える
「アリスちゃん、例の件だけど、明日でいいかしら?」
朝配信を始めて、冒険者ギルドに納品に行った私はミナリアさんに聞かれた。
「はい?」
えっと、例の件?
「冒険者の人とパーティを組むってやつですか?」
昨日の今日なんだけど、もう決まったの?
「ええ、事情を話したらすぐに引き受けてくれたわよ」
本当に決まったんだ、というか受け入れてくれたんだ。
「それで、会うなら早いほうがいいってことで、アリスちゃん明日は予定あったりするかしら?」
「ない。ないです」
今のままだとどん詰まりなのだ。少しでも可能性が増すからすぐにというのは、こちらとしてもありがたい。
「それじゃあ、明日、ちょっと早めに来てもらえるかしら? 最初の鐘が鳴るくらいの時間に」
「わかりました」
私はいつも2つ目の鐘が鳴るくらいの時間に来ているから、それよりもちょっと早くなる感じ。
冒険者ギルドが朝一のクエスト目当ての冒険者でいっぱいになるから避けていたけど、冒険者と合わせるならそのくらいじゃないと駄目なんだろう。
「それじゃあ、よろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
って、そうだ肝心なこと聞いてなかった。
「そういえば、お相手の方ってどんな人なんですか?」
私が聞くと、ミナリアさんは忘れていたという感じで説明をしてくれた。
「そうねぇ、詳しいことは個人情報になるからあまり話せないんだけど」
この世界でも、個人情報って概念あるんだなぁ……
「あの子はアリスちゃんと同じく生産職だけど、冒険に出ている子よ」
アリスちゃんとしては先輩になるかしらねぇ、なんて笑いながら言うミナリアさん。
私以外に生産職で冒険に出ている人なんているんだね。
冒険者ギルドを出て、視聴者さんに相談する。
「何を準備したらいいですかね?」
一人でしか冒険に出たことがない私は、明日のために何をしたらいいかわからない。
『うーん、やっぱりポーション類が必須かな』
『んだんだ、相手の実力はわからないけど、回復はあっても困るもんじゃないしな』
なるほど、やっぱりポーション類か、なるべく沢山作っておこう。
『しかし、相手も生産職っていうのが怖いな』
『だよなぁ。どのくらい戦えるかわからん』
『一応、レベルの高い生産職ならステはそれなりにあると思うけど』
『そんな高レベル生産職が最初の街にいるはずがない……』
そんな反応になるよね。
まぁ、ゲームの話だと、生産職と戦闘職を両方とも持てるから、わざわざ生産職が外に出るなんて考えには至らないんだと思う。
でも、この世界に生きる私としては、生産職しかなれないけど必要な素材があるから外に出るしかないってのがあるんだよね。
きっと、お相手の生産職さんも同じような考えだと思う。
『まぁ、人数が増えれば楽にはなるさ』
『せやね。生産職でも近くの森くらいは攻略できるさ』
若干、希望が入っている気がするけど、まぁ、今はそれ以上は言えないよね。
『話を戻すけど、後は防具とか買っておいた方がいいんじゃない?』
なるほど。
確かに、どこまで行くかわからないけど、私もノーダメージっていうわけにはいかないかもしれない。
少しでも足を引っ張らないためにも防具は必須かもしれない。
『錬金術師だと軽装系か』
『服屋で買えるけど……アリスちゃんお金……』
『あっ……』
視聴者さんに心配されてしまった。
しかし、
「今の私の持ち金、2000ゴルもあるよ!」
配信を始めた最初の頃、持ちかね100ゴルとかだったのが20倍。
これには視聴者さんも驚いて……
『うーん、ギリギリ』
『ドヤ顔アリスちゃん可愛い』
『アリスちゃん、金銭感覚が……』
なんとも残念な子を見るようなコメントをされてしまった。
えっと……
「防具ってそんなに高いんです?」
『2000だと全身は無理かなぁ』
『頭と身体、足でギリギリ。アクセは無理って感じ?』
あ、そうか、言われてみれば防具って服を想像してたけど、頭とか足につけるやつもあるんだ。
『今回の場合は、防御力優先だから、身体が最優先だね』
『ちょっとwiki見て一番効率良さそうなのまとめてみるわ』
『おっ、行ってら』
親切な視聴者さんが、今の状況に一番良さそうなものを見つけてくれるそうだ。
すごくありがたい。
私からは何も返せないのがすごく心苦しいんだけど。
それを言ったら、
『まぁ、俺達としては、アリスちゃんの放送見れるだけで満足だから』
『むしろ、もっとなんかさせて欲しい』
『はよ貢がさせて』
なんて言われてしまった。
まぁ、貢ぐ云々は置いておいて、
『結局のところ、見てて楽しいから見てるんよ』
『せやな、というか、錬金術の新しい見方出てきただけで十分』
『わい錬金術師、やっと注目浴びるようになって感謝しかない』
ありがたいコメントも頂いてしまった。
ゲームのことはよくわからないけど、私の配信が少しでもためになっているのだと嬉しい。
「少しでも皆さんが楽しめるように頑張ります」
この視聴者さんたちのためにも、街の襲撃をなんとか乗り切らないと行けないね。
改めて決意を固めた私だった。
戻ってきた視聴者さんからおすすめの装備を教えてもらった私はそれを買いに向かった。
「えっと、本当にローブだけでいいんです?」
その視聴者さんいわく、
『2000だと、服屋で買える一番高い魔術師のローブが一番防御力が上がる』
とのことなので、それを買ったわけだけど。
『他の部位はあんまり防御力は上がらないからね』
『特注できるならまた別なんだけど』
店売りで買えるだとこれということなので、それで納得しておくことにする。
一番高いローブは1500ゴルだった。
つまり、残りは500ゴル。
『残ったお金で、レシピ買うのが良し』
『レベルが上がればステータスも上がるからね』
なるほど、つまり、
「後は、アトリエに帰ってひたすら錬金術ってことですね」
『そゆこと』
『レッツ大量生産』
ということで、アトリエに帰った私はひたすらレベリングという名の錬金術に時間を費やすのであった。




