第16話 剣のセンスがない!
買い物を終えた私は、錬金術でおすすめのアイテムを作ることにした。
『そういえば、アリスちゃんって感覚としては異世界転移なんだっけ?』
木の剣を作っていると、急に視聴者さんが質問してきた。
「あー、はい。信じてもらえるとは思わないですけど、気がついたらアリスになっていた感覚ですね」
私自身が信じられないので、無理に信じてもらおうとは思っていない。
『その辺りは、運営が確認中だってさ』
『うん? 確認中? あれ? 結局公式じゃなかったってこと?』
『その辺りも含めて、担当者が確認してみるとのこと』
『なんか、よくわからんな』
視聴者さんの会話を聞きつつ、手を動かす。
このあたり、私は何もわかってないんだよね。
ゲームの運営? が私のこの状況と関係あるとは思えないけど。
『推測だけど、社長が勝手に何かした可能性があるんじゃないかとのこと』
『あっ……なるほど……』
『あの社長ならありえるな……』
なんかよくわからないけど、その社長っていうのはどうも曲者という認識っぽい。
『よくも悪くも面白いこと好きだからなぁ』
『まぁ、あれだけ癖が強いから社長なんてやってるんだと』
『ほへー』
よし、木の剣できた。
『社長の話は置いておいてだ、アリスちゃん異世界ならその木の剣とか使えないの?』
「うん? これを使う?」
『錬金術師は剣を装備できないだろ?』
『錬金術師が装備できるのは杖だけだぞ』
『そもそも生産職が武器を使って戦闘する意味が皆無だけどね』
うーん、そもそもの話だけど。
「装備ってどうやるのかわからないんだよね」
ゲームだったらどこかから装備みたいのをすればいいんだろうけど、残念ながらそういう項目が見つからない。
『便宜上、装備って言ってるだけで、実際は手に持つだけ』
『んだんだ。まぁ、装備できない武器とかだと効果が半減する』
『複数持ったりもできないね』
あー、なるほど、どの職業でも持てないわけじゃないけど、それを使える職業じゃないとうまく使えない感じかな。
『んで、アリスちゃんの場合はどうなんだろうと』
『言いたいことはわかった、異世界ってことなら誰でも半減とかなく使えるかもってことか』
『そゆこと。その辺のルールもいまいちわかってないからね』
つまり、これを使ってモンスターを攻撃したらどうなるかってことね。
『まぁ、経験値は入らないけどね』
『それでもいざというときの武器があるのは強いかと思って』
なんか色々と考えてくれてるみたいだ。
正直、ありがたい。
「わかりました、とりあえず、今日はこの武器を持っていって魔物と戦ってみます」
ミニラビットかスライム辺りなら戦えるでしょう。
『無理はせんどいてな』
ということで、錬金術を終えた私は、作った木の武器を持ってミニラビットと戦ってみた。
しかし、
「うーん、倒せるけど時間はかかりますね……」
10回叩いてやっとミニラビット一体を倒した。
『ダメージ1か……、こりゃ半減してるな』
『半減している上に、錬金術師は力皆無だから』
『投石の方が楽とは恐れ入った』
うん、10回っていうと、投石を10個投げても同じだけなんだよね。
それなら経験値も手に入るしメリットが薄い。
「一応投石がなくなったときのサブとしてはいいかもですが、そもそも接近して倒すのが厳しいです……」
接近するということは、相手の攻撃も受けやすくなるということ。
投石だったら相手の攻撃範囲外からひたすら投げれるけど、剣の場合はそうはいかないから。
それに、
『アリスちゃん剣のセンスが……』
『1体倒すまでに何度外したか誰か数えてた?』
『ざっと10回くらい?』
いや、しょうがなくない? 私剣なんて前世でも今世でも使ったことないんだよ?
急に使ったら誰でもあんなもんだと思いたい。
まぁ、今後使うとしては剣だけはないかなぁと我ながら思ったけど。
ひとまず、剣は封印して投石を使いながら街の外を歩く。
目的地は昨日とは反対側にある森の方だ。
どうやらそっちの方には、昨日とは全然違う生態系になっているらしく。
「うわっ、暗い!」
一歩森の中に入ってすぐにその違いがわかった。
昨日の森は木漏れ日という感じで気持ちよかったんだけど、今日の森は薄暗くどこか不気味な感じなのだ。
「えっと、ここって大丈夫なんですかね?」
不安になったので、私弱いんですけど? と改めて聞いてみる。
『推奨レベル的には同じくらいのはず』
『薄暗いのは……、まぁ、出てくる魔物があれだからね』
あれ、先に聞いていたけど。
『お、早速おでましだ』
視聴者さんのコメントと同時にガサガサという音がする。
昨日はスライムが出てきたけど。
「うっ、気持ち悪い」
出てきたのは巨大なイモムシだった。
『まぁ、女性にはこっちの森は不人気だったなぁ』
『虫の森ってだけあって、虫しか出てこないからなぁ』
『倒せば糸素材が手に入って結構有用なんだけどなぁ』
生理的に受け付けない見た目だったので、目をそらしてコメントを見る。
虫の森と呼ばれているこちらの森は虫モンスターしか出てこない女性には大変厳しい場所らしい。
かくいう私も既に帰りたくなってる。
『まぁまぁ、そのイモムシはミニラビットと同じHPしかないからな』
『動きも遅いし、スライム以下』
『ただし見た目を除く』
視聴者さんに言われ、私は距離を取って投石で攻撃を始める。
ミニラビットと同じと言っていた通り、10個投げたらイモムシが消えた。
地面には、糸っぽいアイテムが落ちていた。
『おっ、糸ドロップしとる』
『これも素材になるからちゃんと確保するんだぞー』
なんかばっちい気がして気がひけるんだけど。
素材になると言われてしまっては回収しないわけにはいかない。
でも、あんまり持ってたくなかったから、回収して即座にインベントリにしまったよ。
「あっ、また出た」
その後、ちょっと腰が引けつつも、素材を回収するために森を進んだ。
どうやらイモムシとの遭遇率は高いらしく、かれこれ10回ほど戦った。
流石の私も、それだけ倒せば慣れてきて、無心で石を投げることができるようになった。
糸もそれなりに落とすみたいで、5個確保することができた。
でも、
「あんまり奥には行かないようにしないとね」
昨日みたいに、あんまり奥に行くと、別の魔物に遭遇するかもしれない。
昨日みたいに逃げ帰るのは避けたい。
『ここの、次のモンスターは、ビーだっけか?』
『そうそう、イモムシは弱いけど、ビーは苦戦した記憶がある』
ビー……、虫……
「ひょっとして蜂の魔物ですか?」
ビーって文字だけ見ると分かりづらいけど。
ビーはbee、つまり英語で蜂のことだ。
『そうそう、30センチサイズの蜂だと思っておけばいいよ』
えっ、なにそれ怖くない?
『まぁ、実際は体力低いからすぐ倒せるんだけど、やっぱり拒否感あるよなぁ』
『あいつら刺してくるからな、HPのお陰で痛みないのはわかってるんだけど』
うん、逃げよう。蜂は無理。
聞いただけで怖くなった私は、結局今日も逃げ帰ることになるのだった。
やっぱり一人じゃ限界がある。
ミナリアさんが言っていた冒険者の人協力してくれるといいなぁ。
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