白きオオカミを追いかけて.4
「ダーカーラ……ナットク出来るカァァッ!! “この組み合わせ”にオレハ、フフクを申し立てル! どうしてお前と一緒にオレサマガ、こんなトコロを歩かなくちゃイケナインダッ! オレはお前がダイッキライダッ」
男女は辺りをキョロキョロしながら、十字路の前で話している。
「オレの話を聞ケッ、聞こえないフリはヤメロ!」
「うるせえカブトムシ。少し黙れ」
「だーかーらッ、“カブトムシ”はヤメロ! オレには『ノーク』といウ、カッコイー名前が――」
「ねえカブトムシさん。もう一度、お空から見てくれるかなあ?」
「オイ、のんびりネーチャン。さっきからあんた何度目ダヨ。いい加減に覚えロ。マズ、さっきの角を右ダロ、そしたら左、そこから右ニ、左――」
「ああああッ、もうワケ分かんねー! どうしてこんなに複雑なんだよ。これじゃあ出口なんて、いつまで経っても見つけられる気がしねえじゃん」
ヤストラは、短い髪の毛を掻きむしっている。
これで果たして何度目の十字路だろう。もはや入口がどこなのか……それすらも判明しない。
“迷宮”に足を踏み入れて、かなり時間が経っていた。引き返すことは不可能に近い。
――また行き止まりだ。もはやこれも何度目か。ずっと彼らに立ちはだかるのは、カベ、カベ、そしてまたカベである。色彩の乏しい風景は、どうやら“人の精神”に少なからず影響を与えるようだ。
「言い出しっぺはヤストラくんだよお。ヤストラくんが、“別れて出口を探そうね”って言ったんだからァ」
「ああそうだよ! そう言ってキョウスケと別れたよ! ああ悪いのは俺だよ、俺ッ! だからこうして必死になってるんじゃねえか!」
「だってこれじゃあ――」
マキはそこで言い淀む。
彼女はこれまで、“ミーナ”という存在に頼りきり、そしてヤストラは、“キョウスケ”に頼ってきた。
そのふたりがこうして、ふたりきりでここに居るのだ。
「……ギブアップとか、ムリ?」
「出来るかァ、そんなもん! いいかマキ、迷っている時に弱音は禁物だ。厳しい時に弱音なんか吐いたら」
と、もの凄い地響きとともに、まるで山が崩れ落ちるような轟音が周囲の静寂を打ち破る!!
「な、なにかな……? さっきの凄い音」
「おいカブトムシッ、飛んで確認だ!」
ビシッと指差し、ヤストラは命令する。するとノークは仏頂面で羽を動かすと、やがて空高く舞い上がった。
「まさかキョウスケ……“あっち”になにか起きたか……」
「ウソ。ミーナちゃん!」
まるで太陽から逃れるように、ノークは小さな両手で日よけを作ると、“その光景”を見て「オオー」と唸った。
「スゲー、ケムリ。こりゃ“ヤッチマッタナ”、ガキンチョとイケてるネーチャン。オシイヤツを失ってシマッタ」
偵察からすぐにも戻ってきたノークを、ヤストラとマキは厳しい表情で、代わる代わる問い詰める。
「――オイオイッ、君タチ顔がコワイヨッ!! 勘違いスルナ、オレがやったワケジャネー。オレを怒ったところで“イミネージャン”。まあ落ち着けヨ。こんなのハ、“ニチジョーサハンジダ”」
呆然とするヤストラとマキに、彼は淡々と言った。
「タダのワナだヨ、侵入者避けのナ。オレっちの世界じゃ珍しくもネー。だからこっちも気を付けろヨ。特にそっちノ、のんびりネーチャン。オレサマはなぜカ、“ネーチャン”がドジを踏みそうな気がしてナラナイ。余計なフラグ立てんジャネーゾ」
「じゃあ、さっきのってマジで……」
「あのスゲーの聞いタロ? あれで無事だったら反則ダゼ。ハガネの肉体、って表現じゃ済マネー。ウケケケッ」
「そんなワナだなんて……ミーナちゃん!」




