白きオオカミを追いかけて.2
「よく来た。嵯桐の一族と、その従者たちよ」
「じゅ、従者たち!?」
そう言ってヤストラは、周囲をキョロキョロと見渡す。
やはりそこには、彼らの他に誰もいない。
「違うのか?」
「いや、違うっていうか、そのなんというか――」
既にしどろもどろである。
“伝説の白いオオカミ”と普通に会話をしていることが、彼には信じられなかった。
「ココに〈神器〉はありますか」
キョウスケが問いかける。
彼らがなぜ、ここを訪れたのか――それは先ほどの、“狡猾な吸血鬼”がキョウスケたちに新たに提示した、草守レイトを解放する条件に他ならない。
「僕たちは、大切な仲間と引き換えに〈神器〉を地上へ持ち帰らなくてはなりません。ココに〈神器〉はありますか?」
今度は白いオオカミが、キョウスケに問いかける。
「ほう。ならば〈神器〉とはなんだ」
形、大きさ――
白きオオカミが問う――
具体的に〈神器〉とは、なんだ。
キョウスケには答えられない。
「ハッハーン。それをガキンチョに聞くのが間違いってもんダロ。ここは“ジョーシキジン”のオレっちが代わりに答えてヤル。――“スゲーヤツ”ダ、“スゲーヤツ”!! とにかく“スゲー力”を持ってる道具ダ! どんなクソヤローにだって分かるようナ、“見ればイッパツで分かるヤツ”が〈神器〉ダッ! それ以外に絶対ミトメネー」
「“誰の眼にも明らかなモノ”が〈神器〉か。なるほど。漠然ではあるが、分かりやすくてよい。なれば我は、お前たちに『真実』を伝えよう」
白いオオカミは、それから少しだけ間を置いた。
きっとそこにいた誰しもが、同じ解答を導き出したであろう。
「この先に〈神器〉は確かに存在するぞ。――進め、若者よ。その命ある限り。これより我は“最奥”にて待つ」
すると白いオオカミは、シュルシュルと煙のように遥かな天井へと立ち昇ると、その姿はすっかり消えてなくなった。




