白きオオカミを追いかけて.1
それは誰が灯した松明か。
古びた燭台に灯された炎があちこちで揺らめいている。
キョウスケたちが暗くて長い、長い階段を降りた先は、明らかに人の手で整備された、“広大な地下空間”だった……。
「あー、あ……だあああああああーッ!!!!」
「バカトラ、うるさいッ」
わんわんわん、わん……と、ふたりの声は心地よく建物内に反響する。
音響効果、収容人数、視覚効果など――まさに大規模コンサートにはもってこいの場所であろう。
「ヒャア、これが“サギリの遺跡”。まったくトンデモネーッ! ケケケッ。この分ダト、本気で期待してもイイカモナ」
「……アナタ、顔が下品デス。今とっても悪いコト、考えてマスネ」
「ねえミーナちゃん、あの天井を見て! うわあ、凄ぉい。クルクル眼が回るよお」
そう言ってマキは視線を上へ向けながら、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしている。
遥かな天井を支える太い石柱群に、今にもぶつかりそうな彼女を、ミーナが危なっかしそうに眺めていた。
そこは訪問者をひれ伏させるだけの、圧倒的な威容を備えていた。
「――キョ、キョウスケッ! あ、あそこに誰かいるぞ!」
キョウスケたちの足元にまで達する、ひび割れた石畳に伸びる巨大な影。
「ヤダ、今度はなに!」
それは訪問者を待ちかまえる、神殿の守護者だ。
「とっても綺麗……」
眼の覚めるような純白の毛色。
そして、ライオンのような雄大な体躯。
「“オオカミ”だ……俺、小さい頃に爺ちゃんから聞いたことがある。ずっと昔、島に巨大な台風が来た日の夜、“白いオオカミ”が東の岬に現れて、棚田がある山の方へ皆を避難させたって……」
「それ、私もパパから聞いた。“パパ”の“パパ”の“パパ”の“パパ”が、それ見てヤバいと思って、たくさんの船を山まで引っ張り上げたって話。ウチの玄関に、その時に組合からもらった、木彫りのオオカミがあるもの」
守護者は、じっとして動かない。
「コイツ、本物の“島の護り神”だッ!」
その声は、
まるで『魂』を震わせるような、心にグッと響く低い声だった。




