秘境倶楽部、出動!!.4
あの不完全だった遺跡の扉が、今は“完全に開いている”――
それはなぜ……“キョウスケの強い意思”によって、だ。
「まさに迫真の演技。素晴らしいです」
なんと
“草守レイト”の拘束が、いつの間にか解かれている!!
「さて、“お芝居”の必要はもうございません。御協力、感謝致します」
囚われの少女は、どうしたことか自由の身になっていた――
しかし、少女が逃げ出す素振りはない。
「私の“刀”を返して」
「おお、それは恐ろしい。〈妖魔〉が恐れる〈白銀騎士団〉に武器を返すなどと、〈魔族〉クラスの者でないと出来ない相談です。それを私のような小物が――」
「黙りなさい」
吸血鬼の余裕が瞬時に消え去る。
ピンと張り詰めた空気が周囲に流れた。
「〈妖魔〉、私とは対等の関係のはずだ。私の“刀”を返せ」
表情が強張ったままの吸血鬼は、やがてブルルと全身を震わせると、“闇と見紛う片翼”の中から、長大な物体をひとつ、取り出してみせた。
草守レイトは形のよい眉を寄せ、露骨に嫌そうな表情をした。
「……まったく汚らわしい。我が“草守家”の宝を、〈妖魔〉の懐に抱かせるとは」
「おっしゃるな。“これ”は色々と便利なのですぞ」
「その奇妙な呪法で、島のあちこちに〈妖魔〉を送っていたのだろう。どうりで感知出来ないはずだ……後々の憂いを断つために、ここで切り捨ててくれようか」
少女の冷たい視線が、吸血鬼の胸元に深々と突き刺さる。それを受け、吸血鬼の心臓が大きく脈打ち始めた。
「ご、ごォ、ご冗談を! 我らは一時とは言え、ともに手を取り合った“仲間”では――」
「それを口にするなッ!!」
華奢な美少女に似合わぬ猛烈な怒声が、辺りの静寂を打ち破った。
「“仲間”……私の、“仲間”は……」
少女は、悲痛な表情を浮かべている。
彼女を繋ぐ〈白銀騎士団〉――そこに“仲間”と呼べる存在はない。強いて挙げれば、父の旧友たちが唯一そう呼べる間柄だったのかもしれない。それでも少女が考える『仲間』とは少し違う。
「たとえ、ともに過ごす時間は短くとも、利害が一致する関係が“仲間”でしょう? 彼らが神殿の封印を解き、そして〈神器〉への道のりが開かれる。あなたが求めるのは我らと同じ、“共通”の存在でしょう?」
「違うッ!」
少女が考える『仲間』とは――
自らを投げ打ってでも、その人を助けたいと思う者の存在。
ならば少女は、キョウスケたちにとっての『仲間』と言えただろう。
しかし草守レイトは、
自らに課せられた使命をもって――
その『仲間』を裏切ったのだ!
「どうやら今は高ぶっておられる様子。そこで自身の神に祈りなさい。彼らが無事、“神殿の最奥”へと辿り着くように。そして、それ以上に自身の成功を祈りなさい。“狭霧キョウカ”が張った結界は、“我が主”ですら手を焼く。なれば搦め手から攻めるも一興――」
吸血鬼の不気味な笑い声が、深い森にこだまする。
「キョウスケ……」
罪深き美少女が強く祈るのは、果たして自身の成功か、それとも彼らの無事なる帰還か。
解放されたはずの彼女は、どうしたことか、そこから身動きひとつ出来ないでいた。




