探索開始……?.3
「″ココ”って……こんなになってたんだ……」
空に向かって伸びる、段々畑が続いている。
若い五人の前に現れたのは、見渡す限りの緑の台地――
水の香がする。
島の沿岸部に漂う、塩辛い海のモノではない。
もっと濁った、泥水の匂いだ。
「緑色の稲穂……信じられない。“田んぼ”がある……」
草守レイトは言葉を失う。
島の内陸部は、“緑色の海”が壮大に広がっていた。その海の中でちょこちょこと動く白い影は、棚田を見回る人々だ。ココからではとても遠過ぎて、働くヒトの顔を確認することは出来ない。
「まさかレイト、この俺たちが魚ばっかり食ってると思ってたんじゃねーだろうな。ま、実際はそうなんだろうけど。米屋の『シミズ』で売ってる米は間違いなく、この島で採れた、霧ヶ島産だぜ」
「そうなんだ……安井くん……私、少しだけ勘違いしてたみたい。でも考えてみれば、とても当たり前のコトよね。“この島に与えられた恵み”は、海の恵みだけじゃないもの」
「あなたさっき、“ココ”を何度も往復してるって言わなかった? この棚田だって見たでしょ、その時に」
草守レイトは知らない。
なぜなら、銀の少女が出歩くのは、決まって“霧深い夜”だった。
こんな光景がそこに広がっていようとは、島の外からやって来た彼女には、想像すらできなかった。
「来週の月曜から始まる“夏至祭”があるだろ? そのメインイベントの〈ミハシラ取り〉は、“山組”と“海組”がガチンコでやり合う、すんげえ熱い戦いなんだぜ! レイトも観に来いよな、絶対! きっと、忘れられない夏になるぜッ!」
「メインイベントの〈ミハシラ取り〉……なに、それ……?」
去年の祭りを思い出し、もんもんと燃え上がるヤストラは熱っぽい眼でキョウスケを見た。
「ん。よっしゃああッ、なんだか早くも燃えてきたあああッ!!!! ハッハーン、ざまあみやがれ“山組”め、今年も絶対に負けねえからな! ちなみにレイト、キョウスケは“山組”だ。それでもって俺は“海組”。ああッ、哀しいことにその日だけは、長年の宿敵関係となっちまうんだよなあ。そうだろ、キョウスケッ!」
「ウチは“薬屋”だから。薬草は山の恵みでしょ。だからウチは“山組”。ヤストラの両親は、先祖代々の漁師だから“海組”。数は圧倒的に海組の方が多いんだけどね。それだけ、この島のヒトたちは海に支えられている、と言える」
「はいはーい! 久しぶりに口を開いたと思ったら、長い説明を御苦労さま、優等生のキョウスケくん。それより急がなくてもいいの? 私、早く日陰に入りたいんだけど。こんな日差しの強いトコロに居たら、すぐにお肌が荒れちゃうし」
一行は道を急ぐ。
まるで天へと続く階段のような、美しい棚田の風景をバックに、彼らは歩き続ける。
ひとりで勝手に燃え上がるヤストラの活躍談を、キョウスケは黙って聞いている。その後ろでは、草守レイトを質問攻めにするマキの姿があった。それを面白くなさそうに眺めているのはミーナだ。
棚田地帯を過ぎると、“深い原生林”が次第に姿を見せ始める。




