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探索開始……?.4



「なんだか、凄いところね……この中を本当に行くの?」

「こんなこともあろうかと思って、ジャジャーン!!!! ポケットに虫除けスプレー! はいミーナちゃん、全身をスプレーしまーす」

「この辺もさあ、“キョウスケの家の土地”だろ?」

「分かんない。バア様に連れられて、今でも森に入るけど、いつまで経っても、まったく覚えられないんだ」

「そりゃあ広過ぎるからねえ。でも、そうだよなあ……キョウスケのバア様が居ないんじゃ、遭難しに行くようなもんだ」


 ようやく我に返った草守レイトは、ギュッと表情を引き締める。




 彼女は、忘れていた。

 どこにでも居る少女が、当たり前のように感じる普通の日常を。



 そして、知らぬ間に背負わされた“自らの宿命”を。



 甘えを完全に捨てきれない自分に、強い腹立たしさを覚える。

 私は――彼らとは根本的に違っている。

 “ココ”へは、仕事で来ているのだ。




 彼らのように、冒険なんて求めていない。


      

      欲しいのは〈神器〉が存在する確かな証。



 きっと、この“霧ヶ島”でなら――


      ″パパ”が喜ぶ結果を持ち帰れるはずだ。



「ノーク」

 草守レイトは彼の名を呼ぶ。


(ハッハー! 待ちくたびれたゼー。ようやく出番かオジョー!)

「感覚野を最大範囲で広げる。近付く足音、危険な罠、敵の気配、すべて見逃さないで」

(誰にモノを言ってるんダ。いつものコトだろオジョー、任せロ。ヤー、今日は明るいから調子デルゼー! ウー、輝く太陽サイコーッ!)

「見逃した、は済まされないわよノック。“民間人”が居るんだから」

(そっちコソ、しっかり受け取れヨ)




 草守レイトの身体がまばゆく輝き始める!




 しかし、それが分かるのはキョウスケだけだ。

 ヤストラもミーナもマキも、銀の少女の内から溢れる“金色の光”を視認することは出来ない。



 キョウスケの左肩には、昨日からずっと、美しい妖精の姿があった


 キョウスケは、妖精にそっと語りかける。

「スクナ、草守さんから溢れる光が分かる?」

(ハイ分かりマス。あのヒトの〈使い魔〉はきっト、憑依型(ひょういがた)デスネ)

「その憑依型って?」


(スクナは使役型(しえきがた)の〈使い魔〉デス。憑依型の皆さまハ、(あるじ)様の身体に入っテ、“身体機能”を飛躍的に高めマス。スクナのように〈秘術〉は使えませヌガ、“主様ゴ自身が武器”となって戦いマス)


 キョウスケは昨日の出来事を思い出す。


 あの夜――

 華奢な草守レイトが恐ろしい怪物を相手に、大立ち回りを演じていたこと。


 まるで蟹の甲羅のような、固い鎧に覆われたクモの怪物を相手に、なんと銀の少女は“素手”で、怪物の肉体を“引き裂いた”のだ。

 

 その尋常でない出来事は、やはり不思議な力が働いていた――


(……悔しいですケレド、キョウスケ様には知って置いて欲しいのデス。憑依型の皆さまの方ガ、ヒトには重宝されるようデス。使役型のスクナは〈ヒガン〉でないと力を出せませヌ。スクナの〈秘術〉ハ、“こちらの世界”では自由に使えないのデス)


 魔法とも呼べるスクナの強大な力は、“特殊な空間でのみ使用可能”な、限定的な力だった。

 それに引き換え、草守レイトの〈式神〉は場所に制約されることなく、力を発揮出来る。



 スクナが悲痛な想いで打ち明けた、憑依型(ひょういがた)の重宝される理由が分かる気がする。




「道案内なら私がするわ」


 草守レイトはキョウスケを見て、そう言った。


「道案内って……ホントに分かんのかよレイト。薬草を採りに山に入る、キョウスケのバア様じゃなきゃムリだよ」

「信用出来ないなら引き返すことね。そっちの足立さんも、麻河さんも」

「ちょっと! ここまで来てソレ?」


「行きましょう、キョウスケくん。私は、あなたさえ居ればいいの」


「あんた、なんなのよッ! ……あんたって、やっぱムカツク」

「ミーナちゃん、レイトちゃんを信じようよ」

 マキは、怒り狂うミーナを必死になってなだめている。


「僕が説明するよ」

 そこに居た一同は、彼に注目した。


 キョウスケは言った。

「マキだって、本当は信じられないでしょ。なにも分からないまま、信用は出来ないよ。それは誰だってそうだよ、草守さん」


 キョウスケは、先ほどスクナが教えてくれたことを、出来るだけ理解しやすいように、ヤストラ、ミーナ、マキの三人に説明した。細かいところはスクナが補足して、それをキョウスケが通訳した。





「……はあ。聞けば聞くほど、すげえなそりゃ。じゃあ、それ使ってレイトがさ、オリンピックに出られればいいのにな」

「あんたってホントバカ。完全にズルじゃない」

「だってさあ、フツウ思わない? ぶっちぎりだぜ、きっと」

「“ドーピング検査”に引っ掛かるかも!」

「マキ、それ本気で言ってる?」


 草守レイトは、思わず吹き出してしまった。

 どうやらマキが言った“ドーピング検査”がツボにはまったようだった。



「初めて、笑った」

「えっ?」




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