夏至祭を楽しみに、兄も来たる!.3
「叫び過ぎて、アゴが筋肉痛」
その日キョウスケは、大きく寝過ごした。
キョウスケが慌てて教室に入った時、既に授業は三時限目の国語が始まっており、教師のアサギはしつこいくらいに彼の体調を心配していた。
それでも自宅に連絡が行かなかったのを見ると、どうやら事情を知る草守レイトが、気を利かせていたようである。
「それよりも、今日は本当に大丈夫なのォ、キョウスケくん?」
マキは顔を覗き込んで、まるで読めないキョウスケの表情を注意深く窺っている。
「――うん。分かんないけど、いつもの時間に起きれなかったんだ。疲れてたのかな」
「そりゃあ疲れるだろ。“あんなコト”が昨日あったんだから。しかし、スゲー活躍だったなあ、キョウスケ!」
「“あんなコト”って、なんですか?」
可愛らしい弁当包みを持って、二年の大山ヒカリは不思議そうに尋ねる。
「昨日って、なんかあったんですか?」
すっかり口をつぐむ一同に、まるで蜜を吸いに来たミツバチのように、いつの間にか現れたヒカリは、沈黙を続ける四人の周囲を忙しく飛び回る。
「ねえミーナ先輩」
「別に。なんでもない。それより今日はあんた、あっち行って。マキと、ふたりだけで食べるから」
「あー! それって、あからさまじゃないですかー。やだなあ、もうバレバレですよ、センパイ。マキ先輩は優しいから、私だけ仲間外れにしないですよねー?」
マキはニッコリ笑って、表情のみを彼女に返す。
こりゃ手強いな、と感じたヒカリは、押せばなんとかなりそうな、ミーナを攻めることにしたようだ。
『霧ヶ島中学のミツバチ』は、今日も美味しい蜜を求め、何度もアタックを繰り返す。
「――うるさい、うるさああああいッ!」
ブチ切れて叫んだミーナは、つかつかと歩き出し、ぽつんと自分の席で手製のサンドイッチをほおばる“草守レイト”の前に立つ。
「カオ、貸して」
まったく表情を変えない草守レイトは、サンドイッチを齧ったまま、ゆっくりとミーナに視線を合わせる。
「転校生が、ひとりで静かにゴハンなんて、気持ち悪いの。だから、あんたのカオ、貸しなさいよ」
「おいアイツ、誘うにしたって、もっと上手い言い方ってもんがあるだろうが。あれじゃ、完全にケンカ売ってると思われてるぜ」
周囲の緊張が急激に高まる。
傍若無人の“お姫様”と、孤高を貫く“転校生”。
きっと頂上決戦は、壮絶な死闘となりそうだ。
「マキ、キョウスケ。『山口商店』で親睦会よ。三年生だけでね」




