転校生来たる!.9
「……初日から転校生を連れ回すなんて、イイ度胸してるじゃない」
「いいじゃねえかアサギ。島の案内だよ、案内。
それってさあ、俺たちの重大な義務じゃん」
「あのねえ……そんなコトは授業が終わってからにしなさいよッ!
普段はイイ子のキョウスケくんまでワル乗りして――
もしも転校初日で、なんかあったら完ッ全な、
私の“責任問題”になるじゃないのッ!」
それは、変わらないはずの日常だった。
寂れた漁村――
これまでも、これからも、
それは決して変わることのない事実。
「いつまでも平和ボケしてるんじゃないわよッ!
いーい? あなたたちは“三年生”。高校受験が控えている
大切な時期だってことを、もう一度自覚なさいッ!」
廃校になる学校――
それは少しだけ、この島が見せた“衰退”への一歩。
「そんなに怒るなっての。こんな島で、なにが起こるっていうんだアサギ」
その変化を感じていたのは、“彼”だけだ――
「こぉんな、魚クサイ町でよ」
「そんなことないよォ。私、この香が好き。
生まれた時から知ってる、海の匂いだよォ」
「あのなあマキ。そんなこと言ってんの、この中でお前だけだぜ。
俺は漁師だけはゴメンだ」
その島には、白い夜が訪れる。
霧である。
月が出ると、その様相は一層引き立つ。
おぞましいほどに美しい。
その原因は誰も知らぬ。
漂う海風の具合か、それとも大地の呼吸がためか。
そもそも島の人間は、そんなことを気にも留めぬ。
そう在るものだと思っている。
特殊である。
異様である。
昼に見た景色は、そこにはもうない。
漁港の明かりは幻想的だ。
夜になって尚、光を唯一失わない。
海沿いのコンクリートは絶えず濡れている。
降りかかるは潮か、はたまた立ち込める酷い霧か。
この島は内地と違い過ぎる。
――異形の者も、居る。




