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試練と成長の予兆。

そして翌日、教会にレミィを訪ねた。

「やっぱりそう言う答えになったのね。まぁ、それが一番安全で確実だろうけど……分かったわ。私も一緒に行きます!」

「「ありがと~レミィ姉!」」

「あなた達だけを危ない目に合わせる訳にはいかないし、アンデッド相手なら私が一番の戦力だからね」

そう言って力こぶを作ってみせるレミィに少し不安を覚えので聞いてみた。

「なぁ、浄化魔法とか祈りでサクサク倒していくんだよな?」

「何を言っているの、レンヤは? ダンジョンや平地ならまとめて浄化できるけど、樹齢の高い木々が多い森ではそれらが障害物になって浄化魔法では効率が悪いの。だから聖なるメイスでガンガン殴り倒すのよ。と言っても本当は強力な神聖魔法なら範囲内の障害物関係なしに一発なんだけどね。私使えないし、でも付与魔法は得意だから皆も安心して殴ってね」


やっぱりか……最初会った時はおしとやかな司祭様かと思っていたが、実は肉体派の脳筋司祭だった。

家事全般をそつなくこなし、パン造りが趣味だと言う女性らしい一面を持っているのに、何故か事あるごとに腕っぷしの強さをアピールしたがるのだ。


岩場に生える常夢草取りに付き合った時もひどかった……


「凄い急斜面の岩場だけど……落ちたりしないか、これ」

「普通に落ちるから気を付けてね」

「そうですよね……」

足場はしっかりしているがこの角度では踏み外したら一気に下まで行くな……

「大丈夫だよ、レンヤ兄。落ちても崖の下はワタゴケの群生地だから死ぬことは無い!」

「……」

地面まで一五メートルはあるんですけど……

「うふふ、レンヤは臆病ね。怪我をしても私がヒールで治してあげるから、頑張って常夢草を採りなさい! 後、暴君山羊ディアロスクレソに会っても手を出してはダメよ。何もしなければ襲ってこないからね」

「いやいや、今までもそんな事言って真っ先に飛び掛かって行くのはレミィだよね⁉ 今回は本当にやめろよ! こんな所で襲われたら確実に落ちるから!」

「分かってるわよ!」

レミィの返事に三人とも苦笑するしかなかった。まだ付き合いの短い自分ですら彼女との今までの経験からこうなのだ、そんな自分より長い付き合いのアルティとカルノスを見るとその表情は既に諦めの境地に達している様だった。

せめて巻き込まれない様にと、レミィから離れて薬草を探す事にした。

今探している常夢草は強力な回復ポーションの材料になる。その為に教会として定期的にポーションを作成して戦地や疫病に苦しむ地域の教会に転送しているという事だった。弱者救済は宗派関係なく全教会の基本方針らしい。

で、先ほど話に出た暴君山羊はこの様な岩場を縄張りとして群れで暮らす猛獣で、その頭突きは岩をも砕く程凶悪であるが、普段は意外に大人しいらしい。

ただ、その毛皮や角は素材として高値で取引され、その肉は栄養満点で各種内臓は薬になるというたいへん美味しい獲物なのである。

だから……

「あっ、暴君山羊」

……しまった! つい目の前に現れたので口に出してしまった!

「しゃーっ!」

「なっ⁉」

と思った時には既に手遅れだった……逃げる間もなく既にレミィは飛び掛かっていた。

レミィが暴君山羊に襲い掛かると、今まで隠れていた山羊たちが仲間の危機を救おうと群れをなしてこちらに突進して来るのが見えた……

「あぁ~終わった……これ」

自分は結局、その乱闘に巻き込まれ、地面に叩き落とされてあばらを何本か折ったのだった。

それに対してレミィは、突如現れた大きな角を持つ暴君山羊に自ら挑みかけ、そのまま素手でねじ伏せ、群れまで蹴散らすと言う脳筋っぷりを見せつけたのだった。


そんな事もありレミィには自重してもらって、出来ればアンデッドを集めて魔法で一掃と思っていたけど、この調子ではやっぱり各個撃破がメインになりそうだ。


「そうと決まれば準備しないと。聖水とか色々準備しないといけないから、出発は三日後ね。皆も装備品の準備をしっかりしておくこと!」

「「了解!」」

自分の心配事を余所に、アルティとカルノスは元気に返事した。

まぁ、取り敢えず話はまとまり、その後は冒険者ギルドにパーティー募集の張り紙を出して、ギル鍛冶店で銀の短剣を購入する事にした。

銀の武器はこの世界でもアンデッド系には有効な様で、それぞれの攻撃手段以外に、もしもの事を考えて持って行く事にしたのだ。


「こんにちは~。銀の短剣ある?」


この村にも他に武器店はあるし、そこの方がリーズナブルなのだが今回は銀製の武器が必要なのだ。そして銀製の武器は本来、鉄製品に対して強度で劣る。しかし、それをカバーする技をドワーフの鍛冶職人は持っていると言う訳だ。

まぁ、その分値は張るのだけど、今回相手にするアンデッドの数が多い事を考えると費用対効果は悪くないと言う結論に達したのだった。


「なんじゃ、三人して銀の短剣なんぞ買いに来たのか?」

そう言って作業場からギルが顔を出した。

「クエストで必要なんだ。しかも今回は耐久性と攻撃力を必要としているのさ」

「ふん。魔法使いなら炎の魔法でも覚えた方が速いじゃろうに……お前らだけで退治に行くのか?」


どうやら状況は分かっている様だ。ハイドワーフであるギルが手伝ってくれるなら助かるのだけど、上位種族だけあってなるべく人類に手を貸すことをせず、見守る事を基本姿勢としている様だった。余程の事がない限り自ら問題には関わろうとはしない。

まぁ、一個人の能力を当てにする様な集団なんてろくなモノにならないから、それで正解だと思う……ただ以前、蜜酒の誘惑に負けかけていた様な気もするけど……忘れた事にしよう。

ギルが出してきた銀の短剣は柄には細かい細工が施され、聖属性強化の紫水晶がはめ込まれたいかにも高そうなモノであったけど、出された短剣は二本だけだった。


「えっ⁉ 二本だけ⁉ もしかして本当に俺には炎の魔法を覚えろって言うの⁉」

一本足りない短剣を見てカルノスがギルに涙目で訴えている。

「何を泣いとるんじゃ、その短剣はお前とアルの分じゃ」

「えっ⁉」

今度は自分が驚く番である。

「なんじゃ? お前さん、自分の使っとる剣の事なのに何も知らんかったのか?」

「えっ?」


自分の使う『村正』と『吉光』は普通の刀であって、特殊能力は付いていない。と言うか賢者様からもらった武具には魔法効果は無いのが原則だったはずなのだ。

「前に見せてもらったじゃろ。その時分かったんじゃが、その二本の刀とも、ホーント系も切れるぞ。多分、刀匠の技量と刀造りで話しとった神に祈ったり身を清めたりして刀を打つと言う儀式も関係しとるんじゃろうな」

「そう、なんですか……」

確かに日本刀は古来より魔物退治と切っても切れない繋がりがあるが、そんな能力が本当にあるものなのだろうか……でもギルがその様な能力があると言うのだから自分の持つ刀にはあるのだろう。

まぁ日本刀の、刀匠渾身の作なら可能性がありそうな気がする……いや、あるに違いない! きっとそうだ! そう言う事にしておこう。

てんてたって妖刀村正だしな。

「だからお前さんには銀の武器なんて必要ないわい。まぁアンデッド用に強化したいのならこの水晶の玉でも括り付けておけば大丈夫じゃ」

そう言われ結局、銀の短剣二本(一本一〇万リオン)と水晶のアクセサリー二個(三万リオン)を買ってギルの鍛冶屋を後にした。

後は薬屋で回復と治癒ポーションを買ったのだが、これが高い! 今回はアンデッドの数が多く、長時間の戦闘を想定して魔法以外の回復手段を持っておこうという事になったのだけど……

今までは、森で狩りをしていても休憩を取りながらだったし、怪我を負ってもカルノスの魔法で治してもらっていたからポーションを買った事はなかったのだが、こんなに高いとは予想外だった。


ゲームとかなら基本アイテムとして安値で買えるのに、ここでは疲れを取る回復ポーションが三〇〇リオン、怪我を治療する治癒ポーションが三〇〇〇リオンだ。

ただ、この治癒ポーションは軽い骨折や裂傷を瞬時に治してくれる優れもので、ランクが高いほど効果は上がり、モノによってはちょん切れた腕なんかもくっつけてしまうそうだ……故に、冒険者には必須アイテムであり尚且つ経済的負担の大きいアイテムなのである。


「こんなに高いと稼ぎの無い冒険者はそう簡単にポーションに頼れないな……」

「そうだよ。だから冒険者で食っていく様になるのは大変なんだよ。まぁ、僕たちにはカルノスって言う便利な回復役がいるから出費は抑えられてるけどね」

そう言ってアルティは悪戯っぽく笑った。

「他にも回復系のアイテムってあるよな? カルノスの魔法もプリーストに比べると弱いんだし……ある程度持っておきたいところだけど、この値段では貯金がすぐ無くなりそうだ」


それに、失った体の一部も再生するって言うけど、元が異世界人たる自分にもその効果が有効なんだろうか? 魔法による傷の回復は有効だったけど、あれは自己回復力の強化だとすれば理解できる。しかし激しく損傷した部分は、どちらかと言うと再生に近いんじゃ……だとすると、どういった仕組みで……iPS細胞でも作ってそれに作用するんだろうか?


「そんなにお金の心配しなくても……薬草そのままでも効果あるから、それで補う手もあるよ。だた、即効性に難があるけどね。だから結局はポーションの方をみんな使うんだ。もし、レン兄が危険度の高いクエストを受けるなら、お金をケチらずに高級ポーションは持っておいた方が良いよ」

自分が別の事で考え込んでしまったのを、経済状況を心配していると勘違いされてしまった様だ……ちょっと恥ずかしい。


「い、いや、そういう訳じゃないんだ。そんなお金に困ってるとか、ケチってるとかじゃないんだ! この数ヶ月三人でずいぶん稼いだし、ちょっと別の事で不安になったと言うか……」

なんだかよく分からない言い訳を言ってしまっている……

「別の不安? まぁ今回のクエストは十分に危険度の高いクエストだけどね。大量のアンデッドに少人数で挑むのは危険行為だけど今なら少し間延びしてるはずだから大丈夫だよ。中心部を掃討するかは様子を見ないと分からないけど、今回の作戦で確実に数は減らせるから頑張ろうね」

話しが変わってしまったが、変な事で悩んでも仕方ない。再生するかどうかなんてその時分かる事だし、そもそも、そんな怪我を負わなければいいのさ! 

殺られる前に殺る!

「ゾンビやスケルトンなんか、切り倒しまくってやるぜ!」

「おおぉー!」

あれ?

……いつの間にか心の叫びを声に出していた自分に、アルティがノリ良く腕を上げて同調してくれていた。

が再び心の中で『こんな熱血キャラじゃないんだー』と叫んでいる自分がいた……


「どうしたの? 二人とも。そんな大声出して。レンヤ兄、顔真っ赤だし」

カルノスにそう指摘され、更に顔が赤くなるのが分かった……

そんな自分を見て隣でアルティは笑いを堪えているのが分かった……もう、走って逃げたい……

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