表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

お約束の様に村に危険が迫る!

それからも、クエストをこなしつつ毎日の様に森に入っていた。

そのお陰で随分と身体能力は上がっていたのだが……


「新しく教えてもらった投擲スキルもだいぶ身に付いてきたけど、剣術の方は余り上達してないなぁ……」


抜き身の村正を眺めながら、これでは戦士と言うより狩人になってしまうのではないかと心配になる。


それに生命エネルギー補完への影響力が未だよく分からない点だ。現時点で自分の周囲と言うかこのエヴァン村ではモンスター化は起きていない。

しかしそれは自分が来る前も同じだった為、影響があったのかどうか分かりずらいのだ。

それでも賢者様達は観測を続けているはずだから、もしかしたら向こうでは何か進展があったのかもしれないがそれを知るすべはない。

まぁ元々賢者様達の干渉を最小限にする為に自分達が召喚されたんだから、簡単には連絡が取れないんだけどちょっと不安になる。

予定では自分含めた渡界者は全員で八人いたはずだった。

それがこの世界に来て数日で二個の印が消えた……つまり二人死んだ事になる。

転生した場所が悪かったのか、状況が厳しかったのか分からないが残念だ。だからと言ってそれで自分が落ち込むようなことは無かった。元々顔も知らない他人だし仲間意識がある訳でもなかった。情報として知っていた程度だ。

それに初期は自分が生き延びる事で精一杯だったからそこまで気が回らなかったと言うのが本当の所だ。

しかし、この世界でも一ヶ月が経ち慣れてきた所で更に一人……

自分がちょうど大爪熊を退けた直後だったの事もあり、その事実を知った時は改めて異世界で生きて行く事の厳しさを思い知らされた感じだった。

当然顔も名前も知らない彼、もしくは彼女かも知れないが、それでも感謝している。

この世界に慣れ始め、大爪熊の一件で勘違いしかけたかもしれない自分を冷静に戻してくれたのだから。

いずれこの村を出て冒険に出る事があれば彼らの痕跡でも探そうかと思う。自分に明確な目的地がある訳でもないし、色々検証する為にも色々な場所を訪れるのも必要だろうし、更にもっとモンスターを倒すべきだろう……

そう考えていて気が付いた事があった。

それは未だモンスター化した相手と戦った事がないという事に。これは自分達の影響を知る為にも割と重要な案件な気がする。

森のもっと奥に行けば魔獣と呼ばれる劣化現象が発生源だと思われるモンスターがいるらしいが……今まで出会ったのは、小型のコカトリスとフォレストバジリスクの二体だけだ。

しかも、その二体とも戦わずに速攻で逃げ帰った。

あの頃の自分達と言うか特に自分には荷が重すぎたのだ……という事もあって有効なデータは全然取れていないはずだ。

まぁ、その意味では劣化現象が顕著な人種や亜人種と戦いたい所なのだが、村の周辺で人型モンスターにお目にかかっていない状況だった。


「やっぱり、冒険範囲を広げないとダメかもしれないな」

「森じゃ、剣で戦う事は少ないから仕方ないんじゃない? もと北の奥まで行くとコボルトやリザードマンの様な亜人種がいるから、場合によっては戦う事もあるかもしれないけど。でも、エリアとの稽古は続けてるんだよね?」

カルノスの言葉に、別の事を考えていて一瞬何の事だろうと疑問に思いかけて、さっきの独り言の件だと気付く。

無意識に口に出ていたのだ……現世でも独り言が多いと言われてたっけ。


エリアとはカルノスの知り合いで、二十代後半だけどそうは見えない童顔の元衛兵で、自分の剣術訓練の相手をしてもらっている。

「まぁ、確かに時間がある時はエリアと稽古してるけど、実戦経験を積んでおかないと不安がね……」

「ココにいる限り、そんなに剣術が必要になる事は無いと思うな……ここまで戦火が広がってきたら別だけど……」


カルノスは珍しく沈んだ表情を浮かべる……故郷が戦乱に巻き込まれた過去の事でも思い出させてしまったのかもしれない……

何かフォローを、と色々考え過ぎて結局何も出てこなかった。

そして沈黙と共に、ちょっと重い空気が流れ始めた時、救世主が現れた。

「たっだいまー」

そう玄関から元気のいい声がして、アルティが帰ってきたのだ。


そして夕食時に、アルティが冒険者ギルドで仕入れた情報を話してくれた。


「最近、街からの難民が来なくなっていたから戦火も落ち着いたのかと村の人達も思ってたんだけど、どうもあまり喜ばしい理由じゃなかったみたいなんだ」

「なんか不安を煽る言い方だな……」

「アルはたまに真顔で嘘つくからね」

「え? そうなのか? 意外だな~。でも今まで自分にはそんな事なかったけど……なかったよな? それとも自分が気付いていなかっただけなのか⁉」

「イイカッコしいなんだよ。俺なんていつもひどい目にあわされてるんだ」

とカルノスがアルティの憎まれ口をたたいていた時、『トンッ』とこぎみ良い音がしたと思ったら、テーブルに乗せていたカルノスの手の指と指の間にナイフが刺さっていた

「カル、うるさいよ」

「……はい」

「……え~と、それで何の話だっけ?」

「だから、難民が来なくなった本当の理由だよ」

「で、その理由はなんだったんだ?」

そう聞いた自分に、ちょっと不安気な面持ちで

「それが、どうも森の中で、アンデッドの群れに襲われて全滅しているらしいんだよ」

その言葉に自分とカルノスは顔を見合わせて黙ってしまった。


アンデッドの群れ?


この村にも当然墓地はあるが、花が植えられ手入れも行き届いていて、公園の様に綺麗だったし、そこに幽霊やゾンビが出るなんて事も聞いた事はなかった。それに森の中で遺跡などいろいろな場所に連れて行ってもらったが一度もアンデッドが出るなんて事も聞いた事がなかったけど……


「今までこの付近で、アンデッドが出たなんて聞いた事ないけど……それって、同盟軍のネクロマンサーが使役してるとか死体樹が操っているとかじゃなく、本当のアンデッドが現れたって事?」


カルノスの言葉からすると、やはりこの村の付近ではアンデッドは出ない様だ……まぁ、今なんか死体樹なんて不気味な名前が出ていた様な気がするがここはスルーしておこう。


「そう、本物のアンデッド。しかも村に近づいてるらしいんだ」

「それは、マズいんじゃないか? 話を聞く限り人を襲うんだよな?」

「レンヤ兄の言う通り。人を襲うんだけど、倒すには聖属性の攻撃で浄化しないと復活してくるのが厄介なんだ……」

「聖属性で浄化? て事は普通の攻撃ではスケルトンも倒せないと?」

「その通り。それが低ランクモンスターなのに厄介な点なんだ。それより、どこからアンデッドなんて現れたんだろう? その情報は確かなものなのか、アル?」

「確かみたいだよ。逃げてきた神父さんがいたから……その人は避難民としてこの村を目指してたらしいんだけど、みんなゾンビとスケルトンに襲われたって」

「逃げ延びた人が居たんだ。その人の証言?」

「そうみたいだよ。教会には寄らなかったから直接会ってないけど、その人が嘘をつく理由も無いだろうから本当だと思うよ。それにヘルハウンドも居たって……」

「そうか、魔獣が居たならそれが原因か」

「多分。そうなるとアンデッドの正体も元は避難民のなれの果てかな」

「……魔獣に襲われる事がアンデッドに関係あるのか?」

「あれ? 知らなかった? ……多分、レンヤ兄の言っていた生命エネルギーが劣化して凶悪化したモンスター? これに殺された者の一部がどうも影響を受けてアンデッド化する様なんだ。普通、戦争や事故で死んでもレイスになる事はあっても、アンデッドにはならないんだよ。だからこれはマズイかもしれない……」


カルノスが珍しく真剣な表情で考え込んでいる。


「ここで問題になるのが、アンデッドに殺された者はアンデッドになるって事なんだ。だから、アンデッドの正体が避難民なら、この村に繋がる森の街道沿いには大量のアンデッドいるという事になる……」


カルノスの後を引き継いでアルティが説明してくれた。

つまり、この村を目指して人々は森に入って行ったけど、辿り着く前にヘルハウンドに殺されてアンデッド化し更にその後やって来た避難民たちはアンデッド達に襲われ全滅した……そしてそ更にアンデッドが増える……


「元々この村に続く森の街道って危険なんだろ? だから殆どが集団で移動すると聞いてたけど」

「そうなんだよね……人が来なくなって一年近くは経つから……もしみんな襲われたのが原因なら軽く一○○体は超えてると思うよ。しかもゾンビやスケルトンは一カ所に留まる訳じゃないから、今回の神父さんを追って村に近づいて来る可能性が高いんだよね」

「この世界のアンデッドって、そんなに追跡能力が高いのか⁉」

「ゾンビは動きが鈍いから問題ないかもだけど、スケルトンは早くはないけど走れるから……村近くまで引っ張って来た可能性は考えておかないとね」


街道と言っても整備されている訳ではないし、慣れてなければ十分追いつかれるって事か……いや、今まで誰も逃げて来れなかったのなら、スケルトンの方が速かったのかもしれない。そして当然、襲われた人々は村を目指して逃げるだろうから……


「一つ聞くけど、アンデッドは昼間でも動ける?」

「動けるけど、日光は苦手で多少弱体化するよ。だた、今回運が悪かったのは日光が届き難い森の中だって事。街道も例外じゃないんだよね」


そこまで話して自分もアルティも黙って考え込んでしまった。

状況は明らかによろしくない! 

このまま放置すればいずれはこの村に辿り着くだろうし、しかもその場合は村の被害も大きくなるだろう。

この村には避難民の兵士が数名と聖職者が二名だけ。しかもその内の一人はアレな、じゃなく相当なお年だ。これでは村全体を守るのにアンデッドの集団相手では分が悪い……

二人も、色々考えているんだろう……腕組みして眉間にしわを作って、時折ぼそぼそと独り言を呟いている。


ひとしきり思考を巡らせた後に三人が辿り着いた答えは

「「「先手必勝かな」」」

だった。

その三人同時の呟きに互いに顔を見合わせ、噴き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ