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新生活の始まり。

今回のミッションの報酬は、冒険者ギルドの依頼ではないので金銭的なモノはないがその代りに、念願の空き家と土地を手に入れた。

と言っても放置されている家だけでも六軒あり、以前は農地だった荒れ地もそれなりの広さがあるので独り占めという訳ではない。

そんな中で自分が貰ったのは、森に近い一番大きな石造りの平屋6LDK温泉付きの家とその隣の畑である。

「いや~……。改めて見ると意外と大きいよなこの家」

「そうだね。一つ一つの部屋も広めだし、なんと言っても温泉付きだからね」

「本当にこの家を貰って良かったのかな?」

「何言ってるの? ここを大爪熊から取り返したのはレンヤ兄じゃん! 堂々と胸を張って貰っておけばいいんだよ!」

「……そうだよな。貰っていいんだよな?」

「「良いんだよ!」」


それからの二ヶ月は村の人たちの協力で、開放地の復旧と家の修繕作業の日々が続いた。

因みに、今回の戦利品のお陰で筋トレ兼用アルバイトからは卒業できた。本来ならその後はアルティ達との狩り訓練に突入する所だったけど、今は毎日修繕作業に追われている。

その為冒険者としての実戦経験はアップしていないが、代わりに筋力と体力が想像以上にアップしていた。


そんなこんなで、この二ヶ月ほどで廃屋が住める様になった。この家が短期間で修繕できたのは元々石造りで頑丈だった事。その為に床板と屋根の修繕くらいで住めそうだったからだ。ただ、日本人として温泉を引けるのならと風呂場は思い切って作り直して、窓を大きくとった半露天形式にしてみた。

そして、家が何とか住める様になった所で事件は起こった。

自分がカルノスの家から引っ越すのに必要な物を色々と店で買い込み、その運搬をアルティとカルノスに頼んでいたのだ。


キッチン用品に寝具、それに日用品などで五○○○リオンほど買い込み、さらにこの世界では超高級品たる冷蔵庫! 三○○○○リオンだ。自分の開墾バイト料が一日二○○リオンだったから約半年分か……断熱性の高い貴重な木と氷の魔力が宿る氷結石という魔法石を使っている為に高額なんだとか。

本来なら、最初の資金が三○○○○リオンしかない自分には買えない代物だったけど、大爪熊の爪二本を冒険者ギルドが六○万リオンで買い取ってくれたので、修繕と引っ越し費用の二〇万リオンに当面の生活費も確保できたのだ!

更に、机や椅子にベッドなど全部屋分の家具一式はギルが、これまた爪一本と交換で作ってくれた。

本来、ドワーフの細工物は高価らしいのだが自分たちの活躍に感心したのと、爪を切り落とした村正に興味が湧いた様で、その時に村正・吉光の修繕の為に賢者様から貰った刀の製法の知識を教えたらそのお礼も兼ねてという事だった。

それら大量の荷物を、今日二人に届けてもらったのだ。

そしてレミィやテトさんたち村の人たちも手伝いに来てくれて荷物を運び入れ、セッティングや片付けがひと段落した時にはこの家の中に、何故かアルティとカルノスの部屋も完成していたのだった。


「……どう言うことかな、これは?」

自分がもっともな疑問を口にすると、二人はさも当然とばかりに

「「今日からここに住むんだよ」」

と答えた。

「……」

そして、呆気にとられる自分に対して更に

「僕たちも一応、報酬を貰う権利はあるんだよ」

「そうそう、だけど家や土地なんて大層なモノはいらないからって事で、アルと相談してこの家の部屋を貰う事にしたんだ。自立生活の為にはいい経験にもなるだろうってお爺ちゃんもアルの親父さんも賛成してくれたんだ」

そう言って何故かドヤ顔でカルノスは親指を立てる。

「はぁ~」

と溜息をつくが、確かに報酬は三人の物だ……それに自分一人で住むには確かに広すぎると思っていた事は事実だったので反論はなかった。

「……まぁ、保護者の了解が取れてるなら反対はしないけどな」

「「今日からよろしくね!」」


こうして三人での共同生活が始まった。


その日の夕食後、この家自慢の源泉かけ流しの温泉でゆっくり疲れを癒していると、カルノスが入って来た。

「レンヤ兄に聞きたかった事があるんだけど」

何やら真剣な表情で訪ねてくる

「何?」

「この世界の危機についてなんだけど」

あぁ、やっぱり気にしてたんだ……そうだよな。自分達の未来が掛かってるんだから

「あれから俺なりに色々調べたんだ……そしてレンヤ兄の話からこの世界の神話はある程度事実に基づいて語り継がれていると確信した」

そう言えば、カルノスは考古学に興味があるんだったっけ。と思いつつそのまま話を聞く事にした。


「で、創生神話の中で、神エーテリオンは最初に植物や虫、魚に小動物に祝福を与え種類を増やしたとあるんだけど……これって、神が降り立つ前にその生物達はこの世界に居たって事なんじゃないかと思うんだけど」

「おおぉ~ 流石だね」

「やっぱり! ならそれらその最初の生物達は神の造りし生命体の宿命の外にあるって事でいいのかな?」

「その通り。それらは少し神の手が加わっていても基本は太古から進化して来たこの世界の生命体で魂……こっちでは生命エネルギーだったか、その完全な複製が出来るから、劣化も無いしこのまま問題なく存在していくはずだ」

それを聞いたカルノスは少し考え込んでから

「……なら、それらを多く摂取すれば……生命エネルギーを取り込めたりは出来ない?」

何となく含みのある、何か他に言いたそうな事がある、そんな話し方に聞こえた。

多分、ある可能性に気付いているのだろう……


「それは無理みたいだね。生命エネルギーの摂取による補充は微々たるモノで意味が無いらしい。基本は生命誕生時に親から複製されるものだそうだ」

「そうか……」

そう言って俯く。

そんなカルノスの姿を見て確信した。ならばこちらから答えようと決めた。


「仮定の話として、もしこの世界で生命エネルギー溢れるそれらの種を殺し尽せば、それらが持っていた生命エネルギーは世界に解き放たれると思う」

自分の言葉に、カルノスは一瞬体を震わせたがそのまま黙って話を聞いていた。


「そしてその満ちた生命エネルギーのお陰でもしかしたら生き残った種の生命エネルギーは正常化されるかもしれない。その可能性は否定できない様だけど、現時点ではこの世界の種族が生命エネルギーを吸収して正常化できた実例はないらしい。」

「そ、そうだよね……他の種を犠牲にしても意味ないよね」

そう、力なく笑いながら顔を上げる……それを見て少し心が痛んだがここまで話したら最後まで認識しておいた方が良いだろうと言葉を続けた。


「ただ、完全に効果が無い訳でもない様だ。生命体は死ぬと生命エネルギーは周囲に拡散すし、一時的に近くにいる生命体に取り込まれる、その時同種の生命エネルギーなら多少劣化を遅らせる程度にはなるという事だった。もしこの事実を知る国があるなら、殲滅対象を同種の生命エネルギーを有する種にすれば状況を打開できるかもと考えてもおかしくなないだろう。自分達だけの事を考えるならな……」

つまりは戦争が問題解決は出来ずとも時間稼ぎにはなると言える……ある意味でこの事実は戦争の正当化、殺人の肯定にもなりうるものである。

「っ⁉ ……」

カルノスは青ざめた顔で絶句している。


そうなるよな……戦争被害者である彼には酷な話だ。

もし彼から以前聞いた戦争がこの事実を元に起こされたのなら、種の存亡が掛かっているのだからお前らの犠牲は諦めろと言われている様なモノだろう。

しかし、もしそうならその戦争はジェノサイドを伴ったもっと悲惨なモノになっていてもおかしくないと思えるのだが……そんな話題は無かった。

もしかすると他に何か在るのかも知れないけど……


そんな事よりも、今はカルノスの方が先だな。


「多分、カルノスはその可能性に既にたどり着いていたんだろ?」

自分の問いかけに無言で頷く

「その不安を今まで抱えてたのか……もっと早く話してくれれば良かったのに」

そう言ってカルノスの頭に手を置く。

「そうしたかったけど、事実を知るのが怖かった……認めたくなかったのかも」

まぁ子供には、と言うか自分でも重たい事実だし……

出来れば知りたくないし認めたくないよな。


「いいか、種族存亡の危機があったとしても戦争で攻められた国がそれを黙って受け入れる理由は無いんだ。元々この世界にも昔から戦争はあったんだろ?」

「うん。歴史では各種族が勢力を拡大する上で何回も起きてるはずだよ」

「そうだろ。つまり戦争自体の理由は色々で種族存亡も理由の一つでしかないのさ。今回の戦争だって敵国は軍事連合なんだろ? 種族の存亡を大義名分にするなら他国の殲滅が優先されるはずさ。だからこの戦争も色々な欲望が入り混じって動いているんだ」

自分のそんな熱弁をカルノスは真剣に聞き入っている


「だからそんな相手国のエゴや都合に、こちらが付き合ってやる理由は無い! 攻められたらやり返す権利はあるし、恨みを晴らす権利も当然ある。だからカルノスが戦争に抱いている感情を押し殺す必要はないのさ。今まで通り自分の気持ちに素直に従えば良いんだ」

「……そうなのかな」

「まぁ、確かに戦争や殺し合いなんて無い方が良いに決まっている。憎しみの連鎖は断ち切るにこした事はない。しかし、それは世界規模の問題を解決する為の手段としての犠牲を理由にする様なモノではないと思う」

「……」

「つまり、生命危機の問題を、カルノス達が戦争で払った犠牲を諦める理由にする必要はないって事だ」

「……」

「だから戦争は戦争で考える。そこで出す答えは個人の自由だ。世界の危機を救う事は神様や女神様に任せて置けば良いんだよ。それに、これは極秘事項なんだが……カルノスは誰にも口外しないと約束できるか?」

今まで真剣に自分の話を聞いていたカルノスは頷く。

「自分達渡界者は生命活動の中で生命エネルギーを周囲に放出し、それは他の生命体にも影響を与えその者たちがもつ生命エネルギーを根本的に修復する能力を持っているんだ」

「えっ、それは本当なの?」

「本当だとも。ただしその影響力や範囲や未知数だからそれを女神様達が観測しているはずさ。だからある程度したらその報告が来るはずだけど、取り敢えずはこの村の人達は安心しても良いんじゃないか。自分も時間がある時は村中を歩き回る様にしているし、その……カルノスやアルティ達の未来くらいは自分が守ってやるさ!」

なんて大それた事を言う自分目がけて、目をうるうるさせたカルノスが飛びついて来た。


「レンヤ兄―。ありがと~」


ちょっと気恥しい感じだったが、かわいい弟の頭を撫でながら、ふと、こういう世界の真実的な事実はゲームとかならもっと後の方で開示されるんだろうな等と変な事が頭をよぎる。

まぁ、現実なんてこんなもんか。

それより、明日から頑張らないとな……こんな事言っといて、何も出来ずに終わったらカッコ悪いし簡単には死ねないな。

そんな事を考えながら自分の左手の甲に目を落とす。

そこの印は既に昨日から一つ減って5個になっていた……

それを見て少し思いにふけろうかと思っていたら勢いよく風呂の扉が開いた。

そこから

「いつまで風呂に入っているのかな~」

とお怒りのアルティが現れたので二人して慌てて風呂から上がったのだった。

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