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BECAUSE YOU ALWAYS STAND BY ME  作者: 古蔦瑠璃
第三章 月曜日
33/63

32 シンクロニシティ(1)

 玄関チャイムが鳴ったのが、朝の6時半少し前ぐらいだった。その音で、あたしは目を覚ました。隣で寝てたはずのかおりちゃんはもういなくて、お京さんがいたはずのベッドももぬけの殻。あたし1人がゲストルームの布団の中だった。

 外で複数の人が話をしてるような気配がして、なんだかザワついてるなと思いながらあたし、しばらく動かずに様子をうかがう。ほどなくバイクのエンジンがかかる音がして、そのあと続いて車のエンジン音もして、やがて静かになった。

 起き上がって携帯のメールをチェックしてると、コンコン、とドアをノックする音がして、お京さんが顔を出す。


「鞠乃ちゃん、起きてた?」

「はい。ドアホン鳴ってましたけど、あたしが出て行っていいのかどうかわからなかったから、騒ぎが収まるのを待ってました」

「騒がしかったよねえ。もう大丈夫だから出ておいでよ」

「はい。あっ、制服に着替えてから行きます」


 ハンガーに掛けてたセーラー服に袖を通して、使っていた貸し布団を折りたたむと、あたし、リビングに移動した。

 キッチンカウンターのところに1人分の朝食が用意されてて、莫さんにどうぞ、と座るように促された

 ほかほかの白ご飯に、お豆腐とワカメのお味噌汁、だし巻き卵、オクラとプチトマトのおひたし。それに焼きのりが添えてある。


「トースト派だったら申し訳ないんだが」


 そう言われてあたし、ぶんぶんと大きく首を振る。


「とんでもないです。ありがとうございます。なんかすごいちゃんとした朝ご飯!」

「ささっ。食べて頂戴。あたしたちはもう先にいただいたからね」


 お京さん、ソファでくつろいでコーヒー飲みながらそんな風に言った。


「これ、お京さんが? それとも莫さんが?」

「莫よ、莫。あたしには人んちの台所使って料理する趣味はないからねー。でも和食をリクエストしたのはア・タ・シ。夕べはタオの不味くはないけどさしておいしくもない適当料理でアテが外れたからね」


 お京さん、そんなひどいことを言いながら、優雅に足を組み替えた。ていうことは、莫さんは料理が得意なのかな? 夕べはあたし、ポテトサラダは口にしなかったから、莫さんと司くんの料理の食べ比べはしていない。見た目は確かにかなーり違ったけど。


「はい。いただきます」


 あたし、椅子に座って手を合わせたけど、ふと、周囲の静けさが気になった。


「えーと、司くんは? かおりちゃんと裕希さんも、もう出たんですか?」

「かおりちゃんは早朝莫が送っていったわ。タオとヒロくんは、今しがたバイクで出発したところよ」


 お京さん、うふっと笑って説明してくれた。

 かおりちゃんは夜が明ける前にこっそり支度をして出て行こうとしたんだけど、莫さんがそれを止めて、一応怪しい人影がないか外を見回ってから、車に乗せて駅まで送ったんだって。

 あたしが目が覚めなかったのは、目覚ましが鳴るよりも先にかおりちゃんが起きたから。かおりちゃん、目覚ましなしで起きられるなんてすごい。

 さっきのチャイムはやっぱり朝から押しかけてきた国原さんで、玄関先でお京さんと押し問答をしているうちに、司くんと裕希くん、バルコニーから抜け出してバイクで出発したんだって。それに気づいた国原さん、慌てて追いかけて行ったらしい。アクション映画みたいなエピソード。ちょっと見たかった気もする。


「それって大丈夫なんですか?」

「大丈夫でしょ。車でバイクを追っかけるのは無理よ」


 すまし顔のお京さんに、莫さんも質問をする。


「行先で待ち伏せされたりとかはないかな? 京平、さっき国原さんに行先漏らしてなかったか? 病院に診断書を取りに行かせるとかなんとか」

「それも平気。どこの病院に行ったかは話してないからね」

「しかし休日診療してくれるところは少ないだろう? 順に当たって捜されると、診察中に追いつかれるんじゃないのか?」

「隣の市の総合病院に連れて行ったのよ。決まったところに通うんだったら、カノンからちょっと離れてたほうが後々いいかなーってきのうとっさに思ったのよね」


 とりあえず知りたいことは教えてもらったから、2人の会話を聞きながらあたし、黙って朝食をもぐもぐ食べた。

 なにこれおいしい。お味噌汁も、おひたしも、だし巻き卵も、全部すっごくおいしかった。別に奇をてらった料理じゃないの。でも、おだしがきいてて味つけがおいしい。(あたし語彙がなさすぎるね。あと、焼きのりは普通だった)

 ごちそうさまと手を合わせるとすぐに、莫さんが紅茶を入れてくれた。水曜日の会話であたしが紅茶派だって話したからだと思う。だってお京さんはちょうどコーヒー飲んでるとこだもの。


「ありがとうございます、莫さん」

「ここにもアッサムが置いてなくて、ブレンドだけどね」

「いえ、十分です。ほんとごちそうさまです」

「どういたしまして。食欲が戻ったみたいでよかったよ」


 そういって莫さんは少し目じりを下げて笑った。ああ、そうだった。あたし、夕べは料理をほとんど口にしなかったものね。いろんな出来事があったせいで夕べはのすごーくおなか一杯になっちゃってたんだよね。


「支度ができたら車で送るよ」

「ありがとうございます。けど、駅まですぐだし、歩きます。地図も書いてもらったし」

「荷物が多いから電車だと大変だろう。高校まで送るよ」

「いえ、それはちょっと。学校の前に知らない男の人の車で乗りつけたら騒ぎになりますから」


 そういってあたし、断った。

 うちの高校は少人数体制だから、先生方は生徒のことを割とよく把握してる。あと、私立の学校って公立みたいに先生の転勤がないからね。中学時代の担任も含めて、複数の先生があたしん家の家族構成だとか両親の顔とかもよく知ってる。だから莫さんのこと見られたら、誰?って思われる。

 特に今日は来客対応のために先生方が校門付近に出てきてるはずだから見とがめられる可能性大だし、下手をすると親が呼び出されかねない事態になる。あっ、男女交際全面禁止ってわけじゃないよ。高校生らしい節度のあるおつきあいを、っていうぐらいのスタンスなの。うちの高校ホンモノのお嬢様みたいなのも通ってて、そういう人には婚約者がいたりもするから。

 けど、外泊してカレシに車で送ってもらったって思われたら完全アウトだからね。しかも、同年代ならまだしも莫さんはほんとにまずい。見た目ちょいワルな感じなので、なおさらだ。


「なら、学校の最寄りの駅までどうだい? 現在ストーカー警報発令中だからね。鞠乃さんがとばっちりを食らわないとは限らないから、用心するに越したことはないと思うんだ」

「でしたら乗り換え駅まで送ってもらえますか?」


 定期持ってる路線まで行けたら楽だし、あたし、そんな風にお願いした。

 国原さんは、莫さんにかかるとストーカー扱いらしい。こちらから連絡するって言ってたのに、それを待たずに早朝から押しかけてきたのだものね。恋人のことが心配で仕方がないっていえばそうなのかもしれないけど、恋人に逃げられることが心配だったんだものね。

 裕希くん、とりあえず無事に脱出できたけど、気持ちの上でもちゃんと脱出できるといいなあ。

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