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ナマポランドフクシマ  作者: にーとしのしの
12/14

第12話 団長

 俺はハコッスらと別れた後、隊のみんなを連れて呼ばれた部屋へと向かった。

 部屋に着くと、既に全団員が集合して俺たちを待っていた。


 シミズケイが遅いだの喚いてる。

 目を合わせないようにしよう。うん。


 そして部屋の前方にいるのは椎名と……。


 アンドリウスだった。


 嫌な予感はなぜか的中してしまう。

 いい予感は当たらないのに……もうなんでこうなるの!


 狐の面はしていないが、異様にデカい大剣と体格で一目でわかる。

 女性のようなきれいな黒髪。どこか遠くでも見ているのかと感じさせるまっすぐ前を見るクールな目が印象的だ。


「さっさと並んで! また殴られたいの?」


 女が命令すんな。イライラするな。

 椎名の叱責に促されるまま、軍隊のように整列している群に加わった。


 それにしても俺たちは成長したものだね。

 2ヶ月前まで有象無象のナマポ受給者の奇妙な集団が、今やまるで軍隊のよう。

 みんな頑張ってると思うよ。ばじで。


 他の隊の面々を見ても顔つきが以前とは全く違うね。はっきり言って。

 特に列の先頭に立つ隊長達はみんな強そうだ。

 俺ほどではないけどね。うん。

 というか、先頭にいるってことは、ハコッスとシミズケイも隊長なのかよ。


「もう分かっているとは思うけど、こいつが調査団の団長に任命されアンドリウスよ」


 椎名はアンドリウスを手で示して紹介した。

 まぁそうなるよなぁ、そこにいるって事は。うん。

 こないだの事を思いだすと、俺は奴を直視できない。

 もうおしっこチビっちゃいそうだよ。おしっこ。


「あなた達にとっては彼が絶対。これからは彼の指示で動いてもらうから、くれぐれも逆らったりしないようにね」


 椎名はそう言うと、アンドリウスに目配せした。

 聴衆に緊張が走るのがなんとなくわかった。

 無理もない。

 大剣担いだ2mの大男なんて何処のベルセルクだよ。それとも、なんでも屋か。


「んあっ、俺の名はアンドリウス、世界最強の男だ」


 アンドリウスは仁王立ちのままそう言った。

 この間と同じ台詞だ。

 話し方の独特なクセが少し気になるな。うん。


「んあっ、ここで言う事は1つだけだ。

 俺はこの調査に1人で行く。んあっ、お前たちを連れて行くつもりはない」


 連れて行くつもりはないだと?

 どういうことだよ、ちょっと訳がわからんね。はっきり言って。

 ざわつく団員達が収まるのを待ってから、アンドリウスは再び喋り始めた。


「んあっ、俺は第1回調査団で福島に行った。あそこはお前たちみたいな金目的の素人が行っていい場所じゃない」

「経験者だからって先輩ヅラですかい?」


 誰かがヤジを入れて反応した。

 シミズケイだ。

 ほんとうるさい奴だな。うん。


「んあっ、力も覚悟ない雑魚がいたところで足手まといになるだけだ」

「それならやってみるか? ここの57人とあんたどっちが強いかをよ!」


 おい、勝手に俺たちを使うな。

 アンドリウスとまた戦うなんて絶対に御免だぞ。ばじで。


「ち、ちょっと待ちなさいよ! アン、いくら団長だからってそんな権限は持たされていないはずよ」


 椎名が焦った様子で止めに入る。


「んあっ、だから頼んでいる辞退してくれと。

 ここで辞退しても、表の世界には出れないだろうが、んあっ、仕事と命は保証する」


 どう見ても頼んでいる態度ではないだろ。うん。

 でも、あいつの強さをこの身で体感した俺からすると、足手まといだというのも頷けなくはない。はっきり言って。

 周囲の反応と比べて、俺の隊の面々は俺含め大人しくしているのもそのためだろう。


「そんな勝手許すことはできないわ」

「……んあっ、全員死ぬぞ」


 アンドリウスは絞り出すような小声で答えた。

 全員死ぬとは随分と恐いね〜。


「あなたやっぱりまだ1年前のことを……」


 アンドリウスは何も言わない。

 表情は変えずただ黙っている。


「気持ちはわかるけど、彼らはきっとあなたの力になる。

 私も上もそう考えてのことよ。訓練も十分に積んであるわ。今回はきっと大丈夫よ」

「……勝手にしろ。んあっ」


 そう言い残すと、アンドリウスは部屋から出て行ってしまった。

 椎名は呆れたように深くため息をついた。


 1年前というと、1回目の調査が行われたと聞いている。

 その関係なのかね?

 アンドリウスは福島に行ったことがあると言ってたしな。


「はぁ……、もう話すしかなさそうね」


 アンドリウスがいなくなり、続いた沈黙を破って、椎名が喋り始めた。


「アンは……、アンドリウス団長は第1回調査団唯一の生き残りよ」


 ゆ、唯一だって!?

 上手くいかなかったとは聞いてたけど。

 それって……そんなぁ……。


「それって、あの人以外みんな死んだってことですか?」


 俺の後ろから質問が飛んだ。この声はなみだ。


「わからないわ。彼以外帰って来なかった。

 詳しい事はいくら問い詰めても、喋りたがらなくてね……」


 思い出した。

 自分たちが強くなった事で忘れていた。

 ここに来た時、覚えた恐怖を。



 調査開始日まであと2日。


次回、第13話「フクシマ」

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