第11話 ライバル
「みんな~だいじょうぶ~」
「はい、なんとか」
俺たちはボコボコにされた後、椎名たちによって医務室へと運ばれた。
意識はあったが全治2ヶ月はかかる重傷だったそうだ。
だが、手術には回復力を上げる効果もあったらしく、一晩寝たら痛みなんて全く感じなくなった。
「あいつ何者なんですかね。椎名先生とは知り合いみたいでしたし」
「誰なんだろね。アンドリウスって名前らしいけど」
あきのりが言うように奴は椎名や大臣を知っていたし、ただの侵入者ではないのだろう。
それになぜ俺の名前を知っていたのかが気になるな。
「ずいえきさんが勝てないなんてびっくりっしたっちゃん」
「訓練で疲れて調子が悪かったからね。うん。次やれば勝てると思うよ。はっきり言って」
「ほんとに!? やっぱずいえきさんはすごいっちゃん!」
めめこは能面のようなシジミアイを輝かせて俺を見る。
……まぁ、あんな恐ろしい奴とは2度と関わりたくないな。うん。
「はぁ呆れた、あれだけ一方的にやられといてよく言うわ」
なみがめめこの肩に手を乗せながら俺に悪態をついてきた。
「何だと」
「あーしたちに謝罪とかないの?」
「な、なんで俺が謝らないといけないんだよ」
こいつ、俺が愛子の指示を無視したことに怒ってるのか?
でも女は脳が小さい無能だって科学的に証明されてるから……。
「しょーみ、ずいが勝手なことしたからこうなってると違うんけ?
あーあ、こいつが一番強いって聞いて、同じ隊ならワンチャン楽ができると思ったのにほーんとガッカリ。
NPだけでナマポスキルは使えないポンコツ。
口だけ強気、中身はコミュ障で社会不適合者。おまけに髪とか服とか不潔だしほんと生理的に無理。
こんなならハコッスの隊とかいけばよかった。楽しそうだし」
「うぅ……、わかったよごめん」
「1億円かかってるのに、ごめんで、あぁそうですかって許せると思ってるんけ?」
言いすぎだろさすがに。なんで劣等種の女にこんな言われないといけないんだ。
こりゃないよ……とほほ……。
「なみさん。ずいえきさんもきっと反省してるわ」
愛子が俺となみの間に入り仲裁をしてくれた。
優しくされると好きになっちゃいそうだ。
なみの説教もちょっと興奮したけど。
あ、いいこと思いついた。
「なにかみんなに飲み物買ってこようかね。それで許してよ。うん」
世間から冷たい目を常に向けられるナマポ生活で学んだかとがある。
他人と争いが起きそうになったら、上辺だけでも謝りとにかく媚びる。
それに尽きる。これでご近所トラブルはすべて解決してきた。
大人の対応ってやつだね。うん。
各々の希望を聞き俺は売店へと向かう。
めめこは自分で見て選びたいからとついてきた。
「よぉ、ずいえき。お前ボコされたんだってな」
売店で買い物をしてると、知らない男2人組が話しかけてきた。
「君は誰かね」
「え、まさか俺のこと知らないの? ケイだよシミズケイ」
「いや、聞いたことないね。うん」
中肉中背で顔にほくろが多いこと以外これといった特徴のない男だ。
大方、他の隊のやつだろう。いちいち覚えてない。
「やっぱお前のこと気に食わんわー。1日100円俺に払え。それで見逃してやっから」
「見逃す?なに言ってんのお前」
「おきゅーりょーだよ。おきゅーりょー」
シミズケイと名乗った男は手のひらを上に向けて金を催促してきた。
カツアゲか?
なんで俺がこいつに金を払わなきゃならねんだ。
「そっちの女は身体で払うのなら許してやってもいいぜ」
シミズケイはめめこを見て気色の悪い笑みを浮かべた。
何とも言えない表情を浮かべためめこと俺の視線が合う。
ここは俺が男見せるしかないな。
「てめぇ、いい加減にしろ」
「何だやんのか?」
「俺の仲間に手を出してただで済むと思うなよ。はっきり言って」
「ナマポスキルも使えない奴がいつまでもデケェ面しやがって……。表出ろ! どっちが強いか俺のおきゅ拳で証明してやる!」
シミズケイは懐から給料袋のようなものを取り出し、両手でそれを顔の前に掲げた。
俺はそれに応じファイティングポーズをとる。
こいつの構え、一見馬鹿げているが妙に悪寒を感じる。
侮れない。そう本能が反応しているのだ。
「ずいえき、かかってこいよ」
シミズケイはニヤリと笑い俺を挑発してきた。
自分から仕掛けてこないとなるとカウンター攻撃が狙いか?
フッ、正面から潰してやる。
トンファーがないから素手で殴るしかないか。
俺はシミズケイの顔面めがけてパンチを繰り出す。
シミズケイは避けるそぶりなど全く見せず、衝撃で後方の壁に勢いよくぶつかる。
様子見のつもりだった攻撃がもろに当たってしまい逆に驚いた。
「……すげぇな一撃で2100円かよ」
凹んだ壁の下で倒れていたシミズケイが起き上がった。
目は吹っ飛び口から上は顔と認識できないほど欠損している。
「お、おい大丈夫~?」
あまりの怪我の酷さに心配をしたが、それは杞憂だった。
見るも無残だった怪我がみるみると元通りになっていく。
俺のパンチを受けて平気なんて……、これがこいつのナマポスキルか。
「2100円。給料は貯まった、褒美をくれてやるぜ!」
シミズケイはさっきと比較にならない程に素早い動きで突進してきた。
速い……、だが俺の方が上だ!
俺は突進に正面から受けようと身構える。
「割れの流儀 伍ノ型 次元割り!」
どこからともなく聞こえたその声とともに、俺とシミズケイの間に紫の割れ目が現れる。
シミズケイは突進の勢いそのまま吸い込まれるようにその割れ目へと姿を消した。
「そこまでにしとけて」
シミズケイの後ろで黙って見ているだけだった男が口を開いた。
今のはこいつの仕業か。
小〇旬を肉付のよくしたような顔で黒ぶちの眼鏡をかけ、手には日本刀を握っている。
「ワイらは戦いに来たわけやないやろ。それにケイじゃこいつは倒せへんで」
「待てや!まだ負けてねぇだろ」
紫の割れ目からシミズケイが黒ぶち眼鏡の男に怒鳴りながら顔を出す。
「ずいえきさん、めめこさん、すまんな。ワイのダチが迷惑かけた。熱くなりやすい性格なんだワイに免じて許してやってくれや」
黒ぶち眼鏡の男は爽やかな感じで軽く頭を下げた。
「……その剣術、あなたは確かハコッスさんですよね?」
めめこが黒ぶち眼鏡の男に話しかけた。
ハコッス? あぁ、知ってるわ。
俺の次に強いとか噂されてるやつだ。
「おう、あの天下のずいえき隊の方にワイが知られとるなんて嬉しい限りや」
ハコッスは日本刀を鞘に納めながら、満面の笑みを浮かべてそう言った。
「それでお前たちは何し来たの。うん」
「新しくワイらに団長が就任してな、挨拶するから君ら呼んで来るよう言われたんや」
団長だと?
嫌な予感がする。まさかアイツか……。
「じゃ、ワイらは先に戻ってるわ。はよ仲間呼んで来てな」
「わかったよ」
まだごねているシミズケイを半分引きずるようにしてハコッス達は去っていく。
シミズケイは嫌なやつだったけど、こいつは何となくだけどめっちゃええやつな感じがするわ。うん。
「あ、それとな」
ハコッスがこちらを振り返る。
「あまり自分の実力を過信しない方が良い。己の実力に見合った言動をしないといつか痛い目に合うで」
ハコッスはそう言い残して背を向けた。




