3-7 砂漠の星
「すごい!絶景!!」
もうすぐ日が沈む。
真横から差し込む赤い太陽の光に、陰影が波のように続く、赤とオレンジが混じったように輝く砂漠の砂。
「だから砂と太陽の国なのね……」
名前に負けない圧巻の景色。
呆然としてたら、キャンプの準備が出来ていた。
今夜はこの砂漠の真ん中で野営だ。
「ルディ、ごはんできたよ。」
「ごはん!!」
リューの料理はいつもシンプルだけど美味しい。
今晩もお肉とコロコロした野菜を焼いて塩とスパイスで味付けしたものに、パリッと焼きなおした四角いパンだ。
「美味しい〜!」
「……最近ルディが食べるの見ないと、食べた感がないんだよな……」
沈んでいく夕日を眺めながら食べるご飯は最高だ。
焚き火がパチパチと乾いた音を鳴らしている。
だんだん涼しくなってきて、爽やかな気分だ。
「よっと」
リューがバサッと大きい敷物を広げた。
鮮やかな模様の織物の敷物は柔らかくて気持ちよさそうだ。
そこにゴロンとリューが寝転がる。
「ほら、ルディもおいでよ。」
「食後に寝たら牛になるっておばあちゃんに言われたよ!」
「ルディ牛かぁ……エサ代がやばそうだ。」
「ちょっと!!」
なんだかリューが伸び伸びとしてる。
ちょっとかわいい。
「お行儀なんてここで気にしなくていいでしょ。俺とルディしかいないんだから。」
「そう……かな?」
結局誘われるままに、リューの隣に寝転がる。
橙から藍色に変わっていく空に、明るい星がポツポツと増えていく。
「綺麗だねぇ!」
「いやいや。まだまだだから。」
リューが嬉しそうに笑う。
「ちょっと冷えてきそうだから、寒くならないように少しだけ結界張るね。」
「なにそれ!?そんなことできるの!?」
「……実は今までもやってた。気づかなかった?」
「………気付かなかった……」
そう言えば。何度か野営したけど。
夜露に背中が濡れた記憶もない。
リューの気遣い結界はどこに隠れてるか分からない。
「ほら、ちゃんと空見てて。」
「……?」
ポツポツと星が増えていく。
ぼーっと見ていると、それはあっという間に、ビックリするぐらいたくさんの星の海になった。
「凄い……なにこれ……」
時々流れる星が、長い軌跡を辿る。
「感動した?」
「うん……」
砂と星空に挟まれて、空との距離感がわからなくなる。
細かすぎる小さな星の光がくっついて、川の流れのように見える。
「昔からこうやって寝転がるの好きだったんだ。」
「確かに……これは好きになるね……」
「でしょ?」
少年時代のリューは、砂漠で大の字になって星空を見ていたりしたんだろうか。
そんなリューにも会ってみたかった。
「こうしてたら、ただのリューカスになったような気がしてさ。」
「ただのリューカス?」
「そう。ただのリューカスと、ルディア」
広すぎる砂漠と、もっと広い空に挟まれてる。
ここには今、二人しかいない。
確かに、ただのリューカスとルディアなのかもしれない。
「……なんかいいね。」
世界はこんなにも広い。
もっと自由に生きてもいいのかもしれない。
この先どうなるか、分からないけど。
いつか、リューと…リューのまわりの権力と欲の渦から、逃れる選択をするかもしれないけど。
リューに、好きだと告げられることなんて、ないかもしれないけど。
今この時を、後悔しないように生きてもいいかもしれない。
気まぐれに、自由に。
「あのさ、リュー。」
「ん??」
「腕枕して」
「……!?」
「よいしょっと」
リューの腕を勝手に枕にして寝そべる。
寒い砂漠の夜に、リューの温かさが気持ちいい。
「すごい気持ちよく寝れそう……」
「……っちょっと、ルディ」
「なに?嫌なの?」
「嫌じゃ……ないけど……」
「じゃあいいよね〜」
リューにぴったりくっついて、頬ずりしてみる。
最高だ。
「頭も撫でてほしいな〜」
「………」
枕にした手で、頭を抱きかかえるようにして撫でてくれた。
リューの腕の中は、いつも優しい。
「あー安心するー」
「…………………」
柔らかく撫でられる髪の毛が気持ちいい。
薄目を開ければ満天の星空とどこまでも続く砂漠。
耳に聞こえるのはパチパチという焚き火の音。
なんて贅沢なんだろう。
「……ルディは俺のこと振り回すの上手だよね」
「振り回す??」
リューを見上げると、燃えるような目をしていた。
空いた手で顎をすくい上げられて、しっかりと唇を重ねられる。
深く食べられて、とろけそうになった。
開放されても、そのままリューの腕の中で動けなくて。
リューの暖かさに包まれたまま、私は幸せな気持ちで眠りについた。
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