1/47
序
はるか昔。
まだ人と神が、今よりもずっと近くに在った頃――。
――チリン。
どこからともなく、小さな鈴の音が夜風に溶けた。
その音に気づく者は、誰ひとりとしていない。
それが、長き運命の始まりであることを、この時はまだ誰も知らなかった。
※ ※ ※
人々は、妖魔と呼ばれる人ならざるものに脅かされていた。
妖魔は人の魂を喰らい、村を滅ぼし、街を焼く。
その力はあまりにも強大で、人はただ恐れ、祈ることしかできなかった。
だが――。
神は、人々を見捨てなかった。
朱雀。
青龍。
白虎。
玄武。
四柱の神々は、それぞれ人を選び、神力を授ける。
神に選ばれし者たちは妖魔を封じ、その封印の地へ街を築いた。
さらに結界を張り巡らせ、災厄が二度と人の世へ溢れぬよう、代々その使命を受け継いでいく。
やがて幾百年もの時が流れた。
人々は平穏を手にし、妖魔の存在すら昔話として語るようになる。
当たり前のように朝が訪れ、当たり前のように夜を迎える。
誰もが、それが永遠に続くものだと信じていた。
――だが、その平穏は、今なお誰かが守り続けている。
四神に選ばれし守護者たちは、人知れず結界を維持し、今日も静かに使命を果たしていた。
これは、そんな時代の物語。




