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LOVE MAZE〜ラブメイズ〜私の恋愛感情知りませんか?  作者: 水波瀬なぎ


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9/21

【9話目】簡単に男の子を部屋に入れたわたしが甘かったのです

「さっきはごめん、ついカッとなって」


何でも怒って階段をおりていたら、踏み外して落ちたそうだ。


「顔も痛いけど、腕も痛い…」


横で一樹も、透弥の様子に呆れているみたいで


「なにやってんだよ、落ち着いたか?」


苦笑いで言っている。



すり傷があったから、とりあえず持ってた消毒薬をシュッして、絆創膏をペタリと貼ってあげた。


それからようやく透弥は、亜梨花との関係と、自分の気持ちを一樹に話した。


「はー? おまえすっげーな、良くそんな遠くまで行けたもんだ」


一樹は、俺なんかLINEと電話でつながって喜んでたよ、なんて言ってる。


「けどさー、亜梨花はどうなんだよ。俺とのこと考えてくれるってさっき言ったわけだしさ、まだ透弥に傾いてるってわけじゃねーってことだろ?」


透弥に先を越されたと知った一樹が、諦めきれない様子で亜梨花に確認するように聞いている。


「私は――」


「もういいだろ。亜梨花が混乱する」


口を開きかけた亜梨花を遮るように透弥が一樹に言った。


「透弥は黙ってろ。俺は亜梨花に聞いてるんだ。な、亜梨花。まだ気持ちに迷いがあるんだよな?」


一樹が亜梨花の顔を覗き込むようにした瞬間。


「そんなに近づくなよ!」


透弥が一樹の腕をつかんで引き戻す。


「指図すんなよ。まだ透弥のもんじゃねーだろ」


「一樹のでもないだろ!」


「そうだけど、透弥みたいな乱暴なヤツに亜梨花は渡せない」


「俺のどこが乱暴なんだよ」


「付き合ってもないのに、亜梨花とやったんだろ。十分乱暴じゃんかよ! 一歩間違えば強姦だぞ、強姦!」


「嫌がってたらそうだけど、亜梨花はちゃんと受け入れてくれたと思って――」


そこまで言いかけて、透弥がふと言葉を途切らせた。


そして視線を亜梨花に向ける。


「もしかして、亜梨花……。嫌だったの?」


透弥の表情は固い。


嫌じゃなかった。


少なくとも、無理矢理ではなかった。


でも、その場の雰囲気に流されたとも言える。


「亜梨花、困ってるじゃんかよ。嫌だったんだよ」


そうだよな? と、一樹が亜梨花に肯定を促す。


「嫌──」


じゃなかった。と続けようとしたのに、一樹が途中で遮った。


「ほら見ろ透弥。嫌だって言ったぞ」


「ちょ……」


「そうだったのか、嫌なのに無理に俺……」


「そうだよ透弥。ひでー男。無理矢理押しかけて、無理矢理ホテル連れてって、嫌だって言えないように亜梨花のこと脅してやったんだろ! 反省しやがれ」


「反省はするけど、俺、亜梨花のこと脅してなんかないし」


「反論するのかよ。反省してねーじゃんかよ。亜梨花にキスしたとか、やったとかで自分の女にしたつもりになってんじゃねーよ。亜梨花は嫌だって言えずに我慢したんだ。亜梨花の気持ちを勝手に誤解して勝手に怒りやがって」


「わかったよ。悪かったな。でも、脅しては──」


「そうよ。脅されたんじゃないもん!」


やっと亜梨花は口を挟めた。


一樹と透弥が同時に亜梨花を見た。


「わたしは、透弥くんに脅されてやったわけじゃないよ。無理矢理でもなかったし、一樹くんが思ってるみたいな我慢とか、そういうのも違う」


そこまで言ってから、亜梨花は透弥を見た。


「透弥くんのことは、嫌いじゃないよ。でも、好きかどうかは、わからない。曖昧なの。雰囲気に流されたかもしれない」


亜梨花は正直に今の気持ちを言ったけれど、透弥も一樹も不可解な顔をしている。


「だって、透弥くんだってあのとき、好きって言ってくれなかったし、付き合ってとも言わなかったじゃない?」


亜梨花は自分の曖昧な気持ちを誤魔化すように、透弥に責任転嫁してしまった。


「でも、好きじゃなくて、わざわざ遠くまで行かない」


透弥が言うと


「やりたいためだけに、行ったとも考えられるじゃんかよ」


一樹が茶化すように話に割り込む。


透弥が睨んだ。


「一樹は関係ないから黙ってろ」


「関係ないとは何だ。俺は亜梨花が好き。ちゃんと告白したんだし、亜梨花の返事待ちなんだし、ここで引き下がるわけにはいかねーんだよ。亜梨花の彼氏になれるかどうかの瀬戸際なんだ。邪魔だって言われたって、黙っていられるかよ!」


一樹も必死らしいが、透弥も負けてなかった。


「俺だって、はっきり嫌いだって拒否されたわけじゃないんだ。絶対、引かないからね」


熱くなっている2人を見ながら、亜梨花は思った。


2人の男の子に取り合いされて、何も感じない自分が一番の問題だろう。


嬉しいと思う気持ちより、面倒だな、と思っていた。


早く2人とも、帰って欲しいと思っていた。


嫌いだとか、嫌いじゃないって気持ちはわかる。


だけど、好きだと思う気持ちだけが曖昧で分かりにくい。


こんなにふたりが、好きだと言ってくれているのに、心が揺れもしないわたしが。






あれ以来、一樹は毎日のようにやって来る。


透弥はLINEは時々くれるものの、一樹みたいに押しかけて来たことはなかった。


比べてはいけないけれど、行動力では一樹のほうが、勝っていると思う。


一生懸命さは、一樹のほうに感じる。


とはいえ、熊本まで来てくれた透弥だって、行動力がないわけじゃない。


「良くわかんない」


というのが亜梨花の本音だった。


ふたりのことは見えるのに、自分の心だけが見えなかった。




亜梨花は今日、紗夜と那絵に呼ばれてちょっと飲んできた。


一樹と透弥の2人に追いかけられていると知り、紗夜から聞きたくもないお説教をされてきた。


亜梨花の態度に問題があるとか、返事をすぐにしないで待たせて、いい気になっているとか。


そんなんじゃないのに、そうだと決め付ける紗夜は、やっぱり友達なんかじゃないと思う。


そばで困った顔をするだけの那絵にしても、友達のフリをしているだけじゃないだろうかとさえ思えた。


単なる高校からの腐れ縁みたいなものであり、暇つぶしに八つ当たりされてる気さえしていた。


被害妄想なんだろうけど……。と、亜梨花は自分の気持ちにも嫌気がさしている。


そんなムカついた気分のまま帰宅し、ドアの前にいる一樹を見たら、ますます気が重くなった。


座り込んで待っていた一樹は、亜梨花に気がつくと立ち上がって笑顔で言った。


「お疲れ様。今日は残業だったのか? 遅くまで大変だな」


「ううん。今日は紗夜たちと飲んでた」


残業のほうがずっとマシだけどね、と思ったがそこは口にしない。


「じゃあ、腹減ってねーか。コレ、明日に回すかなー」


一樹が持ち上げた袋の中身は、作ってくれる予定の食材のようだ。


いつもご飯を作ってくれるのは有り難い。でも、付き合っているわけでもないのに、食後も遅くまで部屋にいられるのは、正直すごく迷惑なのである。


どちらかと言うと、誰かと一緒にいるより、ひとりで好きなことをするほうが、亜梨花は落ち着くのだ。


時々ならいいけど、こう毎日のように続くとうんざりしてしまう。


「今日はもうご飯も食べたし……」


だから帰って、と言いかけて口をつぐんだ。


一樹にすれば、何時に帰ってくるかわからない亜梨花を、ずっと待っていたのだ。


来るなら連絡してくれたらいいのに、いつも勝手に突然来てるんだけどね。


でもあまりはっきり迷惑だとも、言いにくい雰囲気で……。


「じゃあさ、ちょっとコーヒーでも入れてやるよ」


飲んだら帰るからさ。と一樹に強引に決定され、亜梨花もうなずいてしまう。


我ながら、本当に優柔不断だと思う。


嫌なら嫌だっていえばいいのに、言えないで後悔する。


そして、その不満はいつも一気に爆発して、もっと相手を傷つけることもある。


わかっているのに、繰り返してしまう嫌な性格だ。




部屋に入るとすぐ、一樹はすでに慣れた様子でキッチンへ向かう。


そして慣れた手つきでコーヒーを淹れてくれた。


亜梨花の座っている場所までカップを運んでくると、亜梨花の目の前に置く。


一樹は自分用のカップを手に持ったまま、亜梨花に聞いた。


「あのさ、あの、隣りに座ってもいいか?」


亜梨花の傍らに立って、一樹は亜梨花を見下ろしている。


「もう、こうして何日もここに来てるしさ、亜梨花も部屋に入れてくれる。そろそろ、もうちょっと仲良くしたいかなーなんちゃって」


一樹は持っていたカップをテーブルに置きながら、亜梨花の返事も待たずに隣に座った。


「亜梨花」


すぐそこに一樹がいて、テーブルとベッドの間の狭い空間では、すぐに逃げることも出来なくて……。


「あの、まだ私、返事してないよ。まだ、付き合うって言ってない……」


やや身を引きながら、亜梨花は一樹に言った。


「透弥とは、やったくせに」


「あれは、だから、流れって言うか」


「流れでやれるんだったらさ、俺ともやれる?」


一樹が迫ってきた。


毎日部屋に来て、ご飯を作ってくれて、ご飯を一緒に食べていた。


ただ、それだけだった。


一樹は、亜梨花の返事を待っててくれる。


返事をちゃんとするまでは大丈夫、何もないはずだと、どういうわけかそんな風に信じていたけれど、今日になって裏切られた気分だった。


「嫌……」


「……嫌?」


すぐに引いてくれるかと思ったのに、引かないどころか、一樹は亜梨花の肩に手を触れた。


「い……嫌っ! やめて!」


亜梨花は一樹の体を思い切り突き飛ばした。


「うわあっ!」


亜梨花は自分でも驚くほどの力が出ていたらしい。


突き飛ばされた一樹は、大袈裟に床に仰向けに倒れた。


「あ……ごめん。大丈夫?」


つい、手を伸ばしてしまった亜梨花。


その瞬間、手首をつかまれて引っ張られる。






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