【第18話】一樹視点、透弥に文句言うはずが俺って…
【一樹視点です】
透弥の態度がめちゃくちゃ悪い。
なんであいつ、あんなにすぐ怒るんだろうな?
でも、さっきの感じだとまた亜梨花とはケンカ別れ。
このすきに割り込めたらなぁ……。
でも、亜梨花に拒まれたし、帰るしかないけど、その前に透弥にひとこと言いたいことがある。
「透弥! いるか?」
寮の部屋のドアをどんどん叩く。
すぐにドアは開いた。
「静かにしろよ」
出てきたのは透弥じゃない、功至だ。
「なんでおまえ、なんで裸?」
功至は上半身裸だ。
「透弥は?」
「あー、いまシャワーしてる」
まあ、入れよと功至の部屋じゃないのに、功至に言われる。
「一樹も亜梨花、狙ってんだってな」
功至は、その辺に座れよと言って、冷蔵庫から缶ビールを出してきてくれた。
見ると、もうすでに何缶もの空き缶が転がってる。
「透弥、悩んでるんだよ、どうしたらいいかわかんねーって」
「俺だってわかんねーよ、悩んでるのは俺も同じ」
一樹は功至に言った。
「だってさ、どう見ても亜梨花は透弥なのに、すぐ怒ったりケンカしたりしてさ、今だってそうじゃん、透弥一人で怒って帰っちゃってさ」
「で、一樹はなに? 透弥を追っかけてここに来たわけ?」
功至はうかがうような目で一樹のことをじっと見た。
「ん、まあちょっと言いたいことあって」
功至がそんなふうに見てくると、なんか怖いな。
「そうか、好きにすれば? 俺もう帰るし、そろそろ透弥出てくるんじゃね」
功至は服を着ると出て行った。
それからすぐ、透弥がシャワーから出てきた。
「あれ、一樹、功至は?」
「あ、ああいま帰った」
「そか」
こいつも上半身裸で、平気で出てきやがって、髪だってまだ濡れてて。
透弥は、俺の前に座ると、俺の飲みかけの缶ビールを勝手に飲んだ。
あ、それ、俺の、なのに。
やっぱ透弥って、妖しい雰囲気を醸し出してるよって思った。
「おまえ、早く服着ろよ、風邪ひくぞ」
同じ男の裸なのに、なんか目のやり場に困るってゆーか。
ああ、これじゃあ女は、惑わされるのも当たり前なのかも。
俺にはないものかもしれない。
「で、何、一樹、まだ文句でもあるの?」
透弥が服を着ながら聞いてくる。
「いや、うん、さっきのあれは、やっぱり誤解もあるし、ちゃんと誤解といてやんねーと、亜梨花かわいそうだって思って」
「かわいそう? 誤解?」
どこが? と言って透弥はうっすら笑った。
「あ、あれじゃあさ、関わった男みんなと、その、やったみたいじゃんか」
「…違った?」
「違うだろ、少なくとも俺は何もしてない! 手も握ってないからな」
「ふうん、そっか」
「そもそも、みんなって誰だよ、おまえと俺と、ほかにだれかいる?」
聞くとしばらく透弥は考え込むようなしぐさをして
「ん、功至とか暁登、そして会社のやつら、かな」
たくさん出してきやがったな。
「まさか、そいつらみんなと、亜梨花が関係したって言いたいわけ?」
「さあ、どうかな」
「わかんねーんだろ? なのに勝手な妄想で亜梨花を傷つけんなよ!」
「妄想なのか…」
透弥がぶつぶつ言ってる。
「そうだよ、暁登なんか最初のときしか亜梨花と接触ないし、会社のやつだって、証拠もなんもない。功至は怒って手はあげるけど女に手は出さねーだろ」
だとしたらやっぱり、透弥だけなんだよ。
わかってんのか。
と、ここまで言ったあと、俺はハッとする。
これじゃあ亜梨花と透弥の仲直りに加担してるようなもの。
関係修復の手伝いしちゃったぜ、ということに気づく。
でもいいか
「だから意地張ってねーで、素直に仲直りしたほうがいいって」
「うん、わかったありがとう」
ああ、なんて俺っていいやつ。
そして、バカ。




