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LOVE MAZE〜ラブメイズ〜私の恋愛感情知りませんか?  作者: 水波瀬なぎ


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14/21

【14話目】そっけない彼氏より優しい男友達がいいです

『……なに?』


電話に出た透弥の声が、あまりに素っ気なかったので、亜梨花も素っ気なく返した。


もう少し、優しい反応を期待してただけに、イラっとしてしまった。


「わたし、何日放置されるのかな」


透弥は黙ったままで、何も言わない。


「わたしたち、付き合ってるんだよね、こういうの付き合ってるって言える?」


不満が、声になってどんどん出てきた。


「付き合ってるのって、わたしの勘違いかな。どうなの?」


『さあね』


「何よそれ!」


まるで他人事のように透弥が言うから、つい大声で反応してしまった。


『俺のほうが聞きたいんだけど』


今度は亜梨花が黙り込んだ。


透弥が連絡して来ないように、こっちからも連絡していなかったのだ。


お互い、相手に放置されていると思っていたとしても無理はないと思った。


『一樹とも上手くやってるんだろ? だから、俺なんか適当に扱ってるんだよね』


「え?」


一樹と上手くやってる?


急に一樹のことを振られて、脳内処理が追いつかない。


『功至が、さっき見たって言うんだ。亜梨花んちに一樹が入ってくところ』


「あ……」


そうか。


さっき功至が来て、入れ替わりに一樹が来たのだ。


見られていたとしても不思議はない。


だけど、それは誤解だ。


功至も功至だ。


見ただけで、事実を確認しもしないで、透弥に告げ口するなんてひどい。


『結構長い時間、一樹が出て来なかったらしいじゃん? 何してたかはどうでもいいんだ。俺、言ったよね。他の男を部屋に入れたらダメだよって』


違ったかな? と透弥は確認するように聞いた。


「それは……確かにそうだけど、でも……」


『言い訳するより、謝ったほうがいいと思うよ』


冷たい口調に、心の中も冷えてゆく。


『功至が言ってた。亜梨花は一樹とも満更じゃないんだろって。俺のことがダメでも、一樹がいるから寂しくないんじゃないのかって』


亜梨花の言うことに耳を貸さないで、功至の言ったことを信じて責める。


勝手に誤解して、勝手に怒って……。


『亜梨花?』


「もういい。じゃあねっ!」


透弥なんかいらない。


大嫌い、知らない、もう会わない。


どうせもう終わり。


もともと、付き合おうって言葉だけで、何も始まってなかったんだ。


電話を切ったあとも、腑に落ちないイライラとモヤモヤで、どうしようもなく腹がたって、我慢しきれなくて涙が出た。


衝動的に電話を切ってしまったことは、後悔してももう遅い。




翌日、イライラが治まらなかった亜梨花は、仕事帰りに、同僚の桜井涼を誘ってみた。


年下の奥さんは、まもなく赤ちゃんを出産するらしく、里帰り中らしい。


退屈なんだと、最近聞いたばかりなのだ。


「高浜さん、飲みすぎだよ」


ヤケになって、ついつい飲みすぎた。


「誘われたときも思ったけど、高浜さん、彼氏出来たって言ってただろ? いいの? 俺と一緒に酔っちゃって」


「そっちこそ。奥さんの留守中に、わたしなんかと飲んでていいの?」


誘ったらすぐ乗ってきたくせに、今さら何を言っているんだろう。


「別に何があるわけじゃなし、一緒に飲むくらいいいんじゃね?」


「そうよ。そうよね。いいのいいの。ふん、彼氏なんか!」


亜梨花が言い放ったひとことは、しっかり涼に聞かれていた。


「ああ、もしかしてケンカ中とか? だからヤケ酒飲みたかったんだ?」


ケンカ中と言うより、たぶんもう終わってる。


でも、いちいち涼に説明するのも面倒なので、無視してだまっていた。


「これ以上飲まないほうがいいよ。送ってく」


涼に腕をつかまれた。


「送らなくていいもん。ひとりで帰れる。帰りたいなら、先に帰ってくれてもよくってよーだ」


自分でも何を言っているのか、わからないくらい酔っていた。


ちゃんとしゃべれているのかも、あやしい状況だ。


「置いて帰ったら、他の男にさらわれそう」


そんなことを言いながら、涼が身体に手を回す。


抱えられるようにして、椅子からおろされた。


床に足をついて、やばいと思う。


足元がユラユラ揺れる。


頭もぐるるぐ回る。


とてもじゃないけど、ひとりではまともに歩けないどころか、立っているのもおぼつかない。


「ああ、ちょっ……大丈夫か?」


涼の声が遠くに聞こえた。


それからのことは、覚えていない。


完全に酔ってしまったらしく、気がついたときは自分の部屋のベッドにタイムスリップしていた。



「あ、亜梨花……大丈夫か?」


ベッド脇に、何故か一樹がいた。


「な、何でいるの!」


びっくりして飛び起きた。


掛けられたタオルケットを引っ張って、体全部をガードする。


「すごい反応」


声のするほうを見ると、さっきまで一緒に飲んでいた涼もいた。


「高浜さん、飲みすぎだよ。ちょっと加減したほうがいいね。あんな風になるなんて」


苦笑いで涼が言う。


「あんな風?……」


あんな風とは、どんな風なのだ。


「誰でも酒が入れば理性のガードは緩むんだろうけど」


「わたし、何かした?」


「何かされても文句は言えないこと……言ってたかな」


「何言った?」


「うーん、抱いてもいいのよって」


お酒が入って、ガードが緩んで、ヤケクソだったし、そういう気持ちになったとしてもおかしくないかもしれない。


「正直なところ、禁欲生活中だし、やばかったかな」


「ごめんなさい!」


恥ずかしくて顔から火が出そう。


亜梨花は頭からタオルケットを被って隠れた。


「でも、何とか落ち着かせて玄関まで連れてきたらさ、彼がいたわけだ」


一樹を指して涼が苦笑いした。


「じゃ、後は彼から事情を聞くといいよ」


ちゃんと仲直りしなよ。と言い残し、涼は帰って行った。


残された一樹は、困ったような表情のまま、黙っている。


「……あの」


おそるおそる、亜梨花は聞いた。


「なんで……いるの?」


「うん、透弥とケンカしたって功至に聞いて。で、原因は俺だって責められるから。一応誤解は解いてきたつもりだけど、あんま信じてもらえなかった」


ごめんと一樹は言ってから続けた。


「亜梨花も落ち込んでるかもって思って謝るつもりで来てみたんだけど、そしたら亜梨花とさっきの男が一緒に帰ってきたんだ」


事情はわかった。


だけど、今こうして部屋にいる事実。また透弥に知られたら誤解されるのではないか。


それに、誤解が解けてるとすれば、透弥から連絡があっても良さそうなものだ。


それがないと言うことは、まだ一樹のことは誤解されたままだし、亜梨花のことも許してくれているわけではなさそうだ。


「ごめん、さっきのヤツに誤解された。俺が亜梨花の彼氏だって思ってたみたい」


「……そっか」


こんな夜中に家の前で待っていれば、そう思われても不思議ではない。


「しかも俺、彼氏だって誤解されたまま、説教された」


「涼が一樹くんにお説教したの?」


彼氏だと誤解されたのもおかしいけど、素直に説教をされている一樹を想像しても、ちょっと笑えた。


「ケンカするのはいいけど、亜梨花がヤケになる前に何とかしろって言われた」


ヤケになってごめんなさい。


「俺が相手だったから良かったものの、男はそう甘いもんじゃないよ、結局そういう事態になって傷つくのは女の子のほうだ、しっかり守ってやらなきゃダメだぞってさ。そんな風に言われた」


「それ、大人しく聞いてたの?」


「彼氏じゃないって否定するスキなく説教された。ホントは、透弥が責められなきゃいけないことだから納得いかなかったけどさ、言ってることは間違ってないことだし、大人の男の考えを吸収するのも悪くないよなって思って」


「大人の男ねー……」


出会ったときの涼って、今みたいじゃなかった。


もっと余裕なくて、言うことやること空回りしているような雰囲気があった。


何か物足りないような、大人なんだろうけど子供っぽいような。


でも、今の奥さんと知り合ってから、だんだん頼もしくなってきたような気がする。


涼は、奥さんを守るために頑張ったんだろうな、と思った。


「で、いいもの吸収できた?」


「うん。出来たと思う。俺、目先のことばっか考えてた。どうしたら亜梨花の気持ちをつかめるかなって、そればっか考えてた。でも、その前に自分を見つめ直す必要があるって感じた。今のままじゃダメだ。頼もしい大人の男になる」


涼が一樹に何をどれくらい説教したのか知らないけれど、気合が入っているのがわかる。


「だからさ、見ててくれよなっ。認めてもらえるまで頑張るからな」


夢は諦めたらそこで終わりだ。


と、一樹は言った。


まだ、諦めないつもりらしい。


だけど、そんな風に頑張ろうと思う一樹のことは、悪くないかもしれないと亜梨花はほんの少しだけ思った。


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