【12話目】透弥視点〜距離感バグってるよな、亜梨花
【透弥視点】です。
亜梨花のウエディングショーを、後ろのほうの席に座って見学していた。
本当に、きれいだ。
普段化粧っ気がないせいか、きれいにメイクしている顔を見ると別人みたい。
いつもストレートの髪も、くるくるに巻いてある。
くるくる?
ふわふわ?
とにかく、なんていうのかな?
話すの苦手だし、語彙力なくて、あれなんだけど、うん、そうだ。
華やか、きれい。
あいつ、彼女になったんだよ。
信じらんねーけど、昨日。
初めて会った日から、亜梨花のことは意識していた。
紗夜から
「透弥くんには、亜梨花って子を紹介するんだからね」
と言われていたし、写真も見せてもらっていた。
「きれいでしょ、モデルやってるんだよ、つきあえるといいね」
そういわれてたから、最初から意識していた。
うまくしゃべれなかったけどな。
だけど俺に紹介されたはずの亜梨花なのに、暁登も、一樹も、たぶん功至までもが亜梨花を好きになってる。
なんでだろうと考えていた。
亜梨花になんの引力があって、みんなが惹かれる?
きれいなことは見たままだから、それはわかる。
そして出したひとつの仮定。
あいつ、簡単すぎる、男との距離感がバグってる。
だからみんな、俺も行けるんじゃないかって判断を誤るんだ。
だけど亜梨花にはまったくその認識がなく、無意識なところが厄介。
あんなに近づけたのに、なんでこんなにそらされる?
という繰り返しだったもんな。
あれって、なんなんだろう?
いまだって、
『つきあった』
『彼女になった』
という「言葉の事実」はあるものの、ものすごく気持ちは不安定なんだ。
安心できないというか、こわい。
少しでもほかの男が近いと、とてもこわくなって、イラっとなって怒ってしまって、そういった自分にも情けなくなる。
余裕なくてカッコ悪い。
ほっとくと自然消滅するだろうと思うくらい、連絡もよこさない。
どっちもどっちだけれど。
亜梨花の部屋でしたように、熊本でしたように、ちょっと誘えば亜梨花は簡単に自分を差し出す。
でもそれを嬉しいと思ってた自分もいるから、責められないんだけど。
それを経験したからこそ、あいつ、誰にでもそうやってんじゃないか?
という疑いは拭えなくなる。
しょっちゅう部屋には一樹が行くし、なんなら功至だって頻繁に行ってて。
「狙われ過ぎな自覚あんのかな?」
なんか、
『亜梨花とつきあう権』
みたいなやつの争奪戦みたい。
やっぱり、今一番気になるのは、一樹なんだよな。
一樹にはまだ、亜梨花とつきあったことは言ってない。
亜梨花が一樹に言ってたら、知ってるだろうけど、俺からは言ってない。
諦めてくれるんだろうか?
そしてそう簡単に、諦められる?
あいつと話したとき、あいつ相当真剣そうだった。
一樹はいいやつなんだ。
ただ、男から見たいいやつと、女から見たいい男っていうのは、どうやら違うらしいことがわかってきた。
簡単に女の子に手を出さないことが、たぶん「いいひと」なんだ。
簡単に出しちゃう俺みたいなのが、でも、女の子に執着される。
寝たくらいで、という男側。
寝たんだから好きになった、みたいなことを言う女側。
そんなふうに思ってた。
真逆すぎて、交われない気持ちなんだろうなと思う。
だけどな、亜梨花は違ったんだよな。
キスしたり抱かれたりしてるときは、あんなに体中で
「好き!!!」
みたいになるのに、離れたらなんだこれ?
あれは夢だったのかと思うほどに、クール?
亜梨花のトリセツが欲しいと、本気で思っていた。
これまでとは違う。
受け身でいたら亜梨花はいなくなる。
「頑張って、電話してみようかな」
いや、LINEがいいかな。
直接行くのは?
そんなことを悩んでいるうち、10日も過ぎてしまっていた。
「亜梨花からも連絡なくてさ」
つい、功至にぼやいてしまったのが、良くなかったな。




