第9話 調理器具とキッチンをつくろう
「リヒトくん、今から調理器具を作るんだよね?」
「ああ。出来たら、炊事場まで作成したいところだが・・・・・・あまり欲は言うまい」
「まずは、包丁辺りから作りましょう。三徳包丁がいいですよ」
ヨルがアドバイスしてくるので、素直に従っておく。
万能工作機械・デミは、ゼウス号の残骸から即座に包丁を生み出す。「ステンレスの材料に、少し鋼を混ぜたみたいですね。残骸野中に、材料があったみたいで良かったです」とヨル。
それから、森の中の木を一本伐採して、まな板をすぐに作り出す。それから菜箸と、俺と陽奈の使う箸を二セット。
浅めと深めの鍋二つ。フライパン。おたまにフライ返し、計量カップにボウル、ザル。さらには蒸し器に燻製機。
「デミちゃん、調理器具、作りすぎでしょ・・・・・・わたし、これ全部使いこなせる気がしないんだけれど」
「一個ずつ、使えるようになればいいんですよ!」
ヨルが、明るい声で主張する。
地面に並べられた調理器具の数々を見ていると、かなり本格的に料理を始める雰囲気が漂ってくる。
しかし、これだけが並んでいるという状況も、味気ない。
「デミ。調理器具の作成はもういい。これから、とりあえずキッチンを作ってくれ。」
万能工作機械デミは、すぐにキッチン建設に取りかかる。
残骸から取り出せる合金だけでは足りなかったようで、近くの岩壁も切り落として、材料にする。そうして、キッチンはあっという間に完成した。合金製の簡素な屋根と周囲を囲む石壁。中央にはコンロが四つ並んでいる。その右隣には、鉄板まで用意されている。キャンプ場でよく見るような施設を改造した感じ、といえば良いだろうか。
「これで、もっと簡単に火が熾せます」
「便利になったね。リヒトくん、早速夕ご飯の支度をしよっか」
「だな。その前に、釣りマシンから今日の獲物を回収してくる」
「お願いね。わたし、このコンロの使い方とか、ヨルちゃんに色々聞いておくから」
♢
「それでは、いただきます」
俺たちは互いに手を合わせて、自分たちで作った晩ご飯を食べ始める。
「アメジストエビのスープ、美味しいね」
「ああ。見てくれはかなり強烈だけれどな」
アメジストエビ――見た目は宝石のようなこのエビをじっくりと煮込んで、岩塩や香辛料で味付けしたもの。やたらとおいしい。
それから、オリハルコンシェルのバター焼きに、スパイラルオレンジのサラダ。俺と陽奈の二人で作った、この惑星特有の料理。
「素材がいいのかな。どれも、おいしい。あ、それともリヒトくんの腕が確かなのかしら。わたし、あんまし料理上手じゃないんだよね・・・・・・」
「それは俺も一緒だぞ」
「惑星コンスタンティアが移住先に選ばれた理由の一つに、人類にとって食事可能な動植物が極めて多かった、というのはありますからね。でも、お二人ともそこまで料理が下手ってわけじゃありませんよ? すこしは自信を持ってください!」
ヨルの快活な励ましの声が、俺たちの心を暖かくする。
「陽奈。明日は、あのゼウス号の巨大な残骸のところに行ってみよう。何か、役に立つものが見つかるかもしれないし」
「そうだね。わたし、準備しておくね」
「それでは、あそこまでの道案内はこのヨルにお任せください!」
「ヨル、ついでに地図作成も頼むよ」
「了解です!」
山頂から眺めても気付くような、巨大なゼウス号の残骸。いったい、何があるのだろろうか。楽しみだな。




