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第10話 残骸探索に行きますよ!


「リヒトくん、お待たせ。よく眠れた?」


 自室から出てきた蒼海あおみ陽奈ひなは、元気いっぱいにそうあいさつをしてくる。


 俺は軽くうなずきつつ、「ああ。ぐっすりだよ。それで陽奈、準備は出来たか?」と返す。「もちろん。というか、ワクワクしすぎて朝早く目が覚めちゃった」と陽奈は笑う。


「リヒトさん、陽奈さん。地図は持ちましたか?」

「ああ。バッチリだ」


 俺は確認のため、ふところからデミで作成した地図を取り出す。この島の全体図、そして目指すゼウス号の残骸が大きく記されている。ヨルの分析能力も、大したものだ。


「それじゃ、行くか。ゼウス号残骸探索ツアーだ」

「レッツゴーです!」


 ヨルのやたらとハイテンションなかけ声を合図に、俺たちは森の中へと入る。


 空は、雲ひとつない快晴だった。


「絶好の探索日和ですね!」


 ヨルの声がイヤリングからはずむ。森には穏やかなそよ風が流れている。今日は、天気もばっちりみたいだ。


 俺は背負ったザックのベルトを改めて締め直す。中にはデミで作った簡易ツールキットと、地図に方位磁針、それから水と携帯食料が入っている。


「でも、ゼウス号探索、楽しみだね。何が見つかるかな」


 陽奈がこどものように顔を輝かせる。その表情からは、遭難直後には時折見受けられた不安が、すっかり落ちていた。純粋に未知のものへの好奇心に満ちている、そんな表情だ。


 創星村そうせいむらを出て、地図を頼りに西の方へとへと歩き出す。ヨルのナビゲーションに従い、森を抜け、小川を渡り、やがて岩場の多いエリアへと差しかかった。


「ここらは足元、気をつけろよ」

「うん」


 ザイルでしっかりと陽奈と体をつなげて、俺は岩場を昇り始める。登山靴が、岩をしっかりと踏みしめる。デミ製の装備はやはり優秀だ。


「陽奈、ペースが早かったら言ってくれ」

「うん、いまのところは大丈夫!」

「リヒトさん。落下した場合、デミちゃんの重力操作でキャッチしますからね」


 デミにはそんな使い方もあるのか。とはいえ、やはり落ちたくはない。俺は慎重に、岩場を上がっていく。

 

 更に湿地帯、草原と通り抜けると、大きな湖に出る。


「ヨル。ここ、どうやって渡ればいいんだ? いかだでも作るのか?」

「ん~・・・・・・それよりも、デミちゃんの重力操作で、お二人の体を浮かび上がらせて、渡りましょう」

「了解。デミ、頼むぞ」

「ひゃあっ!?」「うおっ!?」


 俺たちは、デミの重力操作で、一息に対岸まで飛ばされる。



 とまあ、こんな感じで歩き進むこと約二時間。


 森を出ると、視界が突然ひらける


「着いたぞ!」

「やった・・・・・・!」


 ゼウス号の巨大残骸が、そこにはあった。これまで見つけてきたのとは、規模がまるで違う。銀灰色の巨大な船体が、岩場にめり込むように横たわっている。高さはざっと三十メートル、横幅は優に二百メートルを超えるだろうか。合金で覆われた船体は、あちこちに焦げ跡があるが思っていたよりずっと損傷は少ないようだ。


「これは・・・・・・ちょっと待ってください。私の持つゼウス号のデータと照合します。・・・・・・船体区画のうち、A-02後部格納セクションですね」


 ヨルの声が、少し動揺しているように聞こえた。


「格納セクション?」

「はい。ゼウス号が搭載していた探査用機材や特殊車両を収容する区画です。思っていたより、ずっと状態が良いですね――」


 俺は、その格納セクションの残骸に向けて歩き出す。


 残骸の側面に大きな裂け目があった。どうやらここから中に入れそうだ。


「陽奈、ここで待ってるか?」

「やだ、私も行く」

「危ないかもしれないぞ」

「リヒトくんが守ってくれるでしょ」


 陽奈の大きな瞳にまっすぐ見つめられて、俺は何も言えなくなった。


「分かったよ。でも俺の後ろを離れるなよ」

「うん!」


 陽奈は意気揚々《いきようよう》と、俺の後をついてくる。



 裂け目の先には、薄暗い空間が広がっていた。


 天井は高く、あちこちにある裂け目から、太陽の光が降り注いでいて、視界は悪くなかった。驚くべきことに、ところどころにはまだ機能しているらしい非常灯が、かすかな青白い光を放っている。空気はひんやりとしていて、金属と潤滑油の匂いがした。


「すごい・・・・・・」


 船内の規模に圧倒されたらしい陽奈が、小声でつぶやく。


「リヒトさん、陽奈さん。右手の壁際を見てください」


 ヨルに言われて視線を向ける。そして、俺は言葉を失った。


 太陽の光に照らされて、そこには三台の機械が並んでいた。


 三台は流線型の小型潜水艇だった。全長は五メートルほどで、コクピットは二人乗り。ボディは分厚い透明樹脂と合金で覆われている。


「海中探査用小型潜水艇、型式名『ネプチューン』。深度三千メートルまで潜航可能です。向かって右の二台は、どうやらほとんど無事のようです。残りの一台は、動力系をはじめあちこち損傷しているみたいですね」


 ヨルが解説してくれる。


「次は、もうちょっと奥の方を見てください」


 俺たちは言われたとおりにする。


 そこにあったのは、一台の船だった。いや、船というより中型ヨットに近いかもしれない。全長は八メートルほど。折りたたまれた帆が見える。


「多目的探査艇『オデュッセイア』。太陽光パネルを備えたハイブリッド推進式の外洋航海艇です。帆走と電動機走の両方に対応。定員は十二名、連続航行期間は最大三十日です」


「すごい・・・・・・」


 陽奈が思わずつぶやき、俺も無言でうなずく。


「お二人とも、今度は左手を見てください」

 

 俺たちは目を向ける。すると、そこには人型をした五台の機械が並んでいた。


 高さは三メートルほど。ずっしりとした四肢と、背中に背負った大型のバックパックユニット。頭部にはカメラやセンサーらしきものが埋め込まれている。


「人型パワードスーツ『タロス』です。土木作業から重量物運搬、危険環境での探査活動まで対応する汎用作業機です。操縦者の動作をトレースするマスタースレイブ方式で、力は最大で人間の五十倍を発揮します。三台は、どうやら目立った外傷はなさそうです。残り二台は、脚部および腕部に損傷が見受けられます」


 ヨルの解説を聞きながら、俺は全身が震えるような興奮を覚えていた。


「ヨル。これって、動くのか・・・・・・?」

「はい。多少の損傷はあれど、デミちゃんを使って修理すれば、動かせるでしょう。ここには材料はたっぷりありますからね」


「すごいじゃん!」


 陽奈が飛び跳ねる。


「潜水艇に船に、ロボットまで! これがあれば、どこにだって行けるよ!」

「ああ・・・・・・行動範囲が、一気に広がるな」


 脳裏に、山頂で見た海の向こうの大陸の光景が、浮かぶ。


「はいです! これまで創星村から半径数キロが活動圏でしたが、これらの機体を使えば島全体はもちろん、海底も大陸も探索できます」

「つまりそれって・・・・・・」

「この星の海と陸を自由に行き来できる、ということです」


 頭の中に、無数の可能性がひらめいていく。


 まずは船で島の周囲を探索しよう。漁場を広げるのもいいかもな。それから、潜水艇で海底資源を探る。パワードスーツで開拓作業を効率化する。そして、ゆくゆくは大陸への遠征──。


「リヒトくん、あそこにも何かあるよ」


 陽奈が指さした先には、壁一面に並んだ収納ラックがあった。


 中には、各種の工具やスペアパーツ、専用のアタッチメント類がぎっしりと詰まっている。


「すごい量だな・・・・・・。この惑星で目覚めて以来、一番の発見だな」

「でも、とても全部は運べないね」

「では、優先順位をつけましょう」

「あのパワードスーツの、手の部分だけ持って帰れないか? マニピュレーターの仕組みを解析できれば、いろんな作業機械に応用できそうだ」

「あとさ、あのオデュッセイア号? とかいう船も、持っていけないかな。船が使えるようになるのが、一番いいじゃん」


 陽奈の言うことにも一理ある。俺たちは、少しの間話し合って、拠点へと持って帰るものを選ぶ。


 そしてデミを取り出し、慎重に重力操作モードを起動する。青白い光が対象――オデュッセイア号、工具一式、損傷したタロスのマニュピレータ――を包みこむ。重力制御フィールドが作動して、重量がほぼゼロになる。


「よし、さあ帰ろう」

「うん!」


 俺たちは、ゼウス号残骸をあとにする。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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