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第11話 思わぬ再会


 創星村そうせいむらへの帰路は、行きよりもずっと和やかな雰囲気になった。


「船かあ・・・・・・楽しみだね」


 陽奈が、運んでいるオデュッセイア号を見ながら言う。


「釣りマシンだけじゃなくて、自分たちで沖に出て魚を捕れるんだよ。それに、潜水艇で海の中を探検したり」

「ああ。それにパワードスーツがあれば、大規模な建築もできる。創星村も、もっと大きくできるぞ」

「楽しみだねえ!」


 陽奈の笑顔がまぶしい。


 実際、今回のゼウス号探索の意義は、極めて大きかった。万能工作機械デミが、いくら何でも作れるといっても、そもそも材料が必要だ。ゼウス号という最先端の科学の粋を集めた材料が見つかっただけでも、作れるもののレパートリーは大きく広がるだろう。


 そんなふうに話しながら、森の中を進んでいたときだった。


 ガサガサ、と音がした。


 俺たちは、思わず身構える。動物のたぐいだろうか。万が一危険なものだった場合、デミの重力制御で対処しようか。頭の中で、いくつもの案が駆け巡る。


 ざり、と足音がする。木々の間から人影が現れた。


 そこに姿を現したはの、一人の少女だった。


 年は俺たちと同じくらいだろうか。短めの藍色のショートの髪。細身の体を引き締まった印象の黒いジャンプスーツが包んでいる。その手には、サバイバルナイフが握られていた。


 ・・・・・・あれ? この子、どこかで見たような・・・・・・。


葉月はづき! 葉月なの!?」

 

 陽奈が、はじけるように少女の元へと駆け寄る。


「葉月・・・・・・あ、土御門つちみかど?」


 俺もまた、思わず声をあげる。


 土御門つちみかど葉月はづき。地球で、クラスメイトだった少女。そして、陽奈といつも一緒にいるほど、仲の良かった子だ。


 サバイバルナイフをしまった土御門は、驚いたように陽奈と俺を交互に見る。


「えっと・・・・・・陽奈・・・・・・そして、蛍坂ほたるざかくん? どうして二人が一緒に・・・・・・?」

「葉月。話せば長くなるんだけれど・・・・・・良かったら、私たちの村に来ない? そこでゆっくりと、これまでのこと話そう。ね?」

「え、ええ・・・・・・」


 葉月は、不穏な顔で、俺たち、そしてデミによって空中にふわふわと浮かぶゼウス号の機械を眺めつつ、首肯しゅこうする。


 新たに葉月を加えた俺たち三人は、創星村そうせいむらへと歩く。


「葉月、ポッドで目覚めたんだよね?」

「うん。一週間ほど前かな。それで、食料と水はポッド内の設備でなんとかなっていたのだけれど・・・・・・さすがにひとりでのサバイバル生活は、そろそろ限界を感じていたから、冬眠しようかと考えていたところだったの」

「良かったー! わたしたちと出会えたから、もう安心して! 水も食料も、たっぷりあるから」


 陽奈は嬉しそうに、葉月に頬ずりする。少し迷惑そうで、それ以上に安心したような表情になる葉月。


「そういや、土御門つちみかどさんも、ゼウス号に乗っていたんだな」

「うん、まあね。うちと陽奈は、家族全員でこの惑星コンスタンティアに移住することにしたから」

「そうそう! というか、わたしたち、それで移住決めたところあるよね。一人だけだと不安だけれど、友達と家族が一緒なら、ま、いっか、て」


 なるほど。だとしたら、陽奈と葉月の家族もそのうち探さないといけないな。無事でいてくれるといいが。


「陽奈。で、あなたと蛍坂くんはなんで一緒にいるわけ?」

「あ、そうそうそれがね・・・・・・リヒトくん、すごく頼りになるんだよ!」


 陽奈が、俺たちのこれまでを手短に解説する。それを聞き終えた葉月は、目を丸くする。


「へえ・・・・・・蛍坂くん、運が良かったんだね」

「ま、そういうことになるかな。あと、俺の名前はリヒトでいいぞ」


 俺は返しながら、慎重に歩みを進める。もうそろそろ、拠点に到着だ。

 

「うそ? これ、陽奈たちが作り上げたの? たった一週間くらいで?」


 創星村そうせいむらに入った葉月は、目を丸く見開いて、周囲を見回す。居住棟、調理場、シャワールーム、開墾した畑、水場。森の空き地だった場所は、いまはさながら小さな集落の様相だ。


「厳密には、リヒトくんがほとんどだよ。わたしはただ、手伝っただけ」

「いや、より厳密には万能工作機械・デミがやってくれたんだよ。それから、ケレスもな」


 畑で農作業にいそしむ万能耕作機械ケレスを、葉月は興味深げに見る。


「リヒトさん、陽奈さん! 葉月さんのポッドには、サポート音声AIがいなかったのか、ちょっと聞いてもらえませんか?」

「ああ、そうだな・・・・・・」


 ヨルに言われるまま、俺たちは葉月に尋ねる。


「音声AI? うん、確かにいたけれど・・・・・・え、あれって、そういう形で遠距離連絡ができたの? どうせすぐポッドに帰ると思って、そういうことは考えなかったけれど・・・・・・」

「リヒトさん。私のイヤリングは、まだ予備がありましたよね? それを葉月さんに・・・・・・」

「ああ、分かった」


 俺は、自室に戻り、予備のイヤリングを取ってきて、葉月に手渡す。これで、彼女もヨルとの交信がいつでも可能だ。

  

「葉月さん、こんにちは~。私、アシスタントAIのヨルです!」

「うわっ、びっくりした・・・・・・」

「ヨル、陽奈と一緒に、この創星村そうせいむらの案内をしといてくれ。俺はゼウス号から奪取してきた材料を整理しておくから」

「了解~。葉月、行こ。まずはあの調理場・・・・・・昨日作ったばっかりなんだけれど・・・・・・」


 並んで歩く陽奈と葉月を見送り、俺はゼウス号から持ってきた大量の工具の整理をする。すごい数だな・・・・・・デミがいるから、使うときが来るかは分からないが、何かの役に立つだろう。それから、人型パワードスーツ・タロスのマニュピレータ部分。これを活かして、何か作れそうだ。あと、やはり小型船舶・オデュッセイアの修理。これが一番大切だ。デミ、頼むぞ・・・・・・え? 部品が足りない? うーん、もう一度ゼウス号残骸までいくか。


 葉月という新しい住民も増えた。することは沢山だ。だが不思議と、不快な気持ちはなかった。むしろ、誰かに頼られている居心地の良さをじんわりと感じていた。


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