↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/114

第87話 広がる世界


 水路の拡張工事が一段落して、牧場の柵も無事に修理した俺は、一度格納庫に戻る。


 資材モジュールから搬入してきた物資の確認でもしておこう。


「一つ、二つ・・・・・・と。うん、まだまだ余裕がありそうだな」


 コンテナを数えていく俺に、ヨルからの指摘が入る。


「はい。現時点での備蓄は、村の人口約百四十人を維持するのに十分過ぎる量です。ただし──」


 ヨルが、一拍置く。


「今後、ますます人口が増えると考えると、心もとない、というのが正直なところです」

「だろうな」


 俺は考える。ゼウス号の他の乗員たちがどうなっているのかは分からないが、村が大きくなればなるほど、居住棟はじめ、色々建てないといけなくなる。現状だと、それがいつまで持つことか。


「エネルギーについては、かなり余裕はありますけれどね。そこで一つご提案ですが、ゼウス号には、まだ未回収の資材モジュールがいくつか残っているはずです。それを探していくのもありかもしれません」

「そうだな。でも、他の奴らが既に見つけているかもしれない」


 俺は、手に持って確認していた資材の小箱を、そっと棚に戻す。


「はい。その場合も、もう一つの案も検討するべきかもしれません」

「なんだ?」

「鉱山の開発です」

「鉱山開発って・・・・・・また随分とスケールの大きな話だな」


 しかし、ヨルはいたって真剣な口調で続ける。


「今、私たちの金属資材はゼウス号由来のものが大半です。これらを再利用し続けるにしても、いずれは限界が生じます。ですが、事前調査の結果、この惑星コンスタンティアには豊富な鉱脈が眠っていることが分かっています。大規模な鉱山開発ができれば、より一層、村も発展することでしょう」


「だが、その鉱山をまず見つけないと話にならないな」

「その通りです・・・・・・ゼウス号爆散の結果、地理的な情報を失っているいまの私の中には、漠然とした情報しか残っていません」

「分かっているよ。ま、そのうちな。それよりいまは、やれることをやってくんだ」


 格納庫の隅にあった探索用ドローン・アルゴスの予備部品を見る俺。そこには、前回の増産で余ったダクテッドファンや、制御基板、それにカメラモジュールが整然と積まれている。


「これを、もう少し増やすか」

「アルゴスの増産ですね」


「ああ。今、アルゴスは八機くらいだよな。この機体を、もっと増やしたい。そうすれば、大陸内をより深く知ることが出来るし、未回収のモジュールも発見できるかもしれないしな。あと、この前話していた潜水艦も、どこかの浜辺に打ち上げられていて、見つけられるかもしれない」


「リヒトさん・・・・・・でも、あの潜水艦の船員は冬眠ポッドで眠っているはずですからね。そこまで気にしなくてもいいですよ」


「いや、気にするだろ普通。そりゃ、身の安全は確保されているかもしれないが・・・・・・見つけないと、いつまでも眠ったままだぞ」


 それ以前に、ちょっと興味があるというのもある。俺たちが来る前に惑星コンスタンティアの海洋をくまなく探索していたのが、どんな人たちなのかということを。


「分かりました。でもまあ、そう簡単に見つかるかはまた別問題ですけれどね」

「もちろん、そんなことは百も承知さ。つーことで、いずれにせよまずはアルゴスを増産しよう。モジュールも潜水艦も、見つけるための空の目は、多いに越したことはないからな」

「了解です。それでは、始めましょう」


♢


 格納庫にデミを据え、アルゴス作成に精を出していると、陽奈《ひな》がやってきた


「リヒトくん、何作ってるの?」

「アルゴスの増産だ」

「へえ、でも今のアルゴスたちでも、充分働いてくれてるんじゃないの」


「ああ。だけれど、今ある八機だけじゃ、大陸の探索も中々進まないと思ってな。もっと、色々とこの星を調査しないとな」

「たしかに。ねえ、私も手伝うよ」

「ああ、頼む」


 陽奈は、すぐに袖をまくって隣に並んだ。基本はデミがやってくれるとはいえ、機体フレームの組み立てを、配線、カメラモジュールの固定などをしてくれる。その手つきは、もうすっかり馴染んでいた。


 作業をしながら、俺はヨルから聞いた潜水艦の話を陽奈にする。話を聞き終えた陽奈は、開口一番、俺に尋ねてくる。


「ねえリヒトくん。その潜水艦、見つかったらさ、どうするの?」

「どうするって、船員が眠ってるなら、起こしてやらないとな。それに、海洋調査の船だろ。この星の海についてのより詳細なデータを、持っているかもしれないしな」


 陽奈は、少しだけ考えてから、ぽつりと言った。


「それは、会ってみたいね」

「だろう?」


 台の上で、今まさに形を成しつつあるのは、小さなドローンだ。だけれど、この小さな機体が、俺たちをより広い未来へと導いてくれるのかもしれないのだ。


 俺たちは、黙々と作業を続ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。