第70話 大陸に戻ると
創星村での数日間滞在したのち、俺たちはまた大陸の方へと戻る。
大陸最大の拠点・煌星村へと、久しぶりに戻る俺。
「あ、リヒトさん! よくぞお帰りになられました」
二十代くらいの、若い男性が俺に駆け寄ってくる。
「俺のいなかった間、何か異常はありませんでしたか?」
「あ、はい。あの、それが・・・・・・」
男は言いにくそうに顔を俯ける。
「実は、ウィンドリーフのレースに、みんなちょっと盛り上がってしまい・・・・・・盛り上がりすぎて、ちょっと過熱してしまって・・・・・・」
小声でそう言いながら彼は、村の片隅を指さす。その先には、大破したウィンドリーフの残骸が三台分、積み上げられていた。
「えっ!? うそ、事故が起こったってわけ? 大丈夫だったの!?」
陽奈が、驚き、心配の声をあげる。 男性は、静かにうなずく。
「はい。それが、ウィンドリーフの安全装置が、かなりのものだったみたいで、全員軽傷で済みました。その怪我も、すぐに凜さんたち医療班が、医療モジュールまで連れていってくれて、あっという間に治療してくれました」
おお、さすがは凜さんだ。
「医療モジュールまで、道路を敷いていて正解でしたね、リヒト村長。恐ろしいまでの早いスピードで、怪我人たちが運べましたからね」
そう言うのは、二十歳くらいの女性だ。
「まったく、うちの村の男どもときたら・・・・・・別にレースをすること自体、私だってなんら反対しませんよ。だけれど、意地になって、あんなチキンレースみたいなことをして・・・・・・」
呆れたように溜め息を吐く女性。
「具体的な状況を教えてください。どういう流れで、ああなったんですか?」
「最初は、普通のレースをしていたんですよ。ところが、とある若い男三人組が、もっとスリルをとかで、ほら、あの小高い丘あるでしょ? そこの切り立った小さな崖を目がけて、ウィンドリーフを走らせて、誰がギリギリまでブレーキをかけずにいられるかっていう競争を・・・・・・」
「完全なチキンレースじゃないですか」
俺たちがいない間に、そんなことがあっていたのか。
「申し訳ありません、リヒトさん。わたしは必死に止めたのですが、興奮状態の三人には、聞いて貰えず・・・・・・」
ヨルがしゅんとした声で、謝罪してくる。
「いや、ヨルちゃんが謝ることじゃないでしょ。にしても、よくそれで無事でいられたわね」
「ウィンドリーフの安全装置は、自信作ですからね。強い衝撃を受けて車体が破損した途端、安全クッション用特殊ゼリーが、操縦者の全身を包んで保護してくれます。ですが、今回三人に軽度とはいえ怪我をさせてしまったので、まだまだ改善の余地ありですね・・・・・・」
また落ち込んでくるヨルの声。これはちょっと励まさないといけないな。
「いや、ヨル。お前は充分に役目を果たしてくれているよ。てか、さすがにこういうのは想定の範囲外だろう」
「本当、医療モジュールを立ち上げておいて良かったね、リヒトくん」
「ああ、まったくだ」
「でも村長。今回の件を受けて思ったんですが、そろそろこの村にも法律みたいなのを制定しといた方がいいんじゃないですか?」
男性の提案に、俺は軽くうなずく。
「そうですね。法律とまではいかなくても、迷惑行為の禁止くらいはしておきましょう」
村も発展して、出来ることも随分と増えてきた。食うや食わずの状態は、すでに過ぎ去った。俺たちの村は、新たな段階になるときなのかもしれない。
「とりあえず、大破したウィンドリーフは修理しておきますね」
「できますか、村長」
「多分。ヨル、デミを使えば可能だよな」
「はい。予備の材料はたっぷりありますから・・・・・・」
「リヒトくん、なんか手伝うことがあったら言ってね!」
「ありがとう陽奈。それじゃ、ちょっとあの残骸の移動をまず一緒に・・・・・・」
俺たちは、ウィンドリーフの修理を始めるのだった。




