第66話 創星村での休暇
創星村に久しぶりに泊まった翌日。
俺たちは五人とも揃って、昼前くらいに起床した。
「ひゃあ・・・・・・わたしたち、随分と寝ちゃったね」
陽奈が寝ぼけた顔をこすりながら、リビングでぼやく。
「皆さん、知らず知らずのうちにお疲れが溜まっていたということでしょう」
「そう、なのかしら」
首をかしげる雫に、ヨルは力強く主張する。
「はい、間違いありません。よく考えてみれば、リヒトさんも陽奈さんも葉月さんも楓さんも、毎日毎日、村の拡張に、村人たちの娯楽提供・・・・・・大忙しな毎日を送っていますからね。昨日だって、またこの創星村を色々と改良したじゃないですか。地味に神経使っていますよ、皆さん。それが、ここに来て一気に解けたのでしょう」
「だから、あんなにぐっすり眠ったわけか」
「そうです。なんといっても、この無人島は皆さんだけのもの――いわば故郷ですからね」
充実した毎日を送っているつもりだったが、やはり気疲れはあったんだろうな。
「とりあえず、朝食、というか昼食は、簡単なものでいいかな? 燻製肉もあったし、それから・・・・・・」
「ああ、そうだな」
俺たちは、食事の準備を始める。
♢
食事を終えた俺たちが何をしたかといえば――ただ、村内を散策して、その様子をぼんやりと眺めるだけだった。やはり、ヨルの指摘通り、ちょっと働き過ぎていたのかもしれん。
「畑、だいぶ育っているね」
「だな」
葉月の言葉に、緑の面積が確実に広がっている畑を眺めながら、うなずいて返す俺。この調子だと、近いうちにまた色々と作物がとれるだろう。
「そうしたらさ、煌星村の人たちにも配ってあげようね」
「ああ」
きっと、俺たちだけじゃ食べきれないくらいに収穫できるだろうからな。
「水路も、順調に機能しているみたいね」
雫が屈んで、水の様子を見ている。
「そういや、大陸の方の水路、ちょっと気になる箇所があったんだ。煌星村から百メートルくらいのところで、ちょっと損傷しているんじゃないのかって」
「リヒトさん。アルテミスを派遣して、調査させておきますね。問題があれば、素早く修復しておきます」
「ありがとう、ヨル」
本当、頼りになるパートナーAIだ。
「でもさ、ゼウス号に乗ってた人って、まだまだ沢山いるよね。その人たち、いまどうしてるのかな」
楓が、ふとそんな疑問を口にする。
「どうだろうな・・・・・・ただ、いざとなったら冬眠ポッドで救援が来るまで待つという手段があるから、ほぼ無事だと思うけれど」
「本当だったら、みんなで協力してこの惑星コンスタンティアで生きていくはずだったんだよね・・・・・・だから、できるだけ早く、そういう人たちとつながりたいっていうかな・・・・・・」
楓の意見には、俺も同意だ。エインダみたいに、独裁を敷いている奴もまだいるかもしれないしな。出来るだけ、この惑星にいる地球人同士の情報は、把握できるようにしておきたい。
「でも、この惑星コンスタンティアって、すごく居心地が良い場所よね・・・・・・気候も最適で、食べ物も豊富で」
「だからこそ、移住先に選ばれたんだろうからな」
「そうだね・・・・・・あ、リヒトくん、ちょっとこっち来て」
陽奈が、俺の腕をぐいと引っ張る。
「これ、見て!」
「え・・・・・・これは・・・・・・?」
陽奈が案内したのは、村の一角の岩壁部分。少しくぼんだ部分に、小さな花が咲いていた。それは、この惑星に来てから見たことのないもので、花弁がそれぞれ虹色に輝いていた。
「めっちゃ綺麗じゃない?」
「ああ。でもこれ、なんていう名前なんだろうな・・・・・・ヨル、分かるか?」
「申し訳ありません。少なくとも、私のデータベースには、この花についての情報はありません」
「へえ・・・・・・ということは、新種の花だね」
「となると、第一発見者は陽奈になるんだな」
「えっ!?・・・・・・そっか、そうなるんだ・・・・・・じゃあ、名前をつけることもできるのかな」
「名前、何にする?」
「うーん・・・・・・創星花、とか」
「さすがにちょっとそのまま過ぎないか」
「いいじゃん! わたしたちの村で見つかったんだからさ・・・・・・」
陽奈はぷくりと頬を膨らませる。その様子はやたらと可愛くて、俺はドギマギしてしまう。
「ま、まあ、皆であとで考えようぜ」
ごまかすように、そう言う俺だった。




