第56話 大陸探索、始動
まだまだ改善点はいっぱいだが、生活の基盤もある程度はできあがり、娯楽施設も設けた。煌星村の出だしも、上々といったところだろう。
だがしかし、だ。俺たちの野心はこんなところで終わることはない。まだまだこの大陸、そしてこの惑星コンスタンティアを、ほとんど探索していない。そのための準備が必要だろう。
居住棟の中の長机で、陽奈と楓、葉月、それから雫が準備をしてくれた朝食を食べていると、ヨルが報告をしてくる。
「アルゴスの追加生産、全部終わりました。今朝、テスト飛行も終え、そのまま大陸の内陸部へ向かわせました」
俺はスープを一口すすってから答える。
「ありがとう、ヨル。これで何機になったんだ?」
「全部で十二機ですね。私が全部を統括して、リアルタイムでデータを管理します」
「へえ・・・・・・これで、めっちゃこの大陸のこと、知ることができるね」
陽奈がワクワクした表情で、言う。
「まずは、この村から半径二百キロ圏内といった範囲をざっと見て回ります。この方法なら、今日のお昼頃までには、簡単な地図が完成するはずです」
そうか。そいつは楽しみだな。
♢
昼過ぎ。ヨルの言っていたように、最初の大まかな地図が完成したようだ。
端末を操作すると、机の中央にホログラムの立体地図が展開された。俺たちは、それを囲むように覗き込む。ゼウス号以前の探査データと照合すると、煌星村と分星村は、大陸の南東沿岸にあるようだ。地図はそこから北、そして西へと広がり始めている。
「すごいわね・・・・・・これ、全部アルゴスが?」
陽奈が息を呑む。
「十二機体制だと、一日でかなりの面積をカバーできます。私一人の力ではなく、アルゴス同士が通信で連携して、効率的に分担しながら飛んでいます」
地図の一部を拡大する。そこには、蛇行しながら海へと注ぐ大河と、その流域に広がる緑の大草原が映し出されていた。
「ここ、見てください。川の周りに、これだけ広い草原が広がってる。放牧とかに最適かもしれませんね」
「そうね。家畜も、必要なときが来るかもしれないわね」
雫が地図の別の場所を指さした。
「こっちはなに? 大きな湖がいくつも連なってる。周辺の森は原生林で、かなり古い樹種が残ってるみたい」
「水深のある湖か。水質が良ければ、漁業もできそうね。トリトンを飛ばして調査してみる?」
それも良いかもな。湖となると、また新たな生物も発見できる可能性もある。
「ねえ、ここ見て」
楓が地図の北西部を拡大する。
「標高がぐっと上がって、山脈の向こう側に雪を頂いた山が連なっている。で、山の麓には温泉らしき地熱反応が出てるよね」
「温泉! いいなあ、いつか行ってみたい」
陽奈が目を輝かせる。
「でも、さすがにちょっと遠すぎるかな」
行くだけなら、デミの重力制御でひとっ飛びだが・・・・・・ここまで道を通して、村の住人も行き来できるようにするのは、まだしばらく先になるだろう。
「ねえ、山脈の手前には広大な森林地帯が広がってる。ここだけでも、調べる価値はありそう。新しい薬草や果実の木が見つかるかもしれないわよね」
葉月が指摘する。
俺は三次元地図をじっと見つめながら、頭の中で優先順位を整理する。魅力的な場所はいくつもあるが、一度に全部は行けない。
「ここはどうだ」
俺は大草原を指し示す。
「地形とか見るに、この村から一番行きやすいと思う。どうだ、ヨル」
「はい。その見立ては間違いないでしょう。みなさん、ここに行きますか?」
「いいわね。そろそろ農業に続き、牧畜もやってみたかったのよね」
雫がうなずき、陽奈も食い気味に乗ってくる。
「私も賛成! でも、家畜化できる生き物ってなにがいるのかな?」
「それについては、また調査します・・・・・・お任せください。アルゴスを広域探索モードから、範囲限定探索モードに切り替えます」
「どれくらいかかりそうだ?」
「明日の夕方までには、終わるでしょうから、明後日には入れますよ」
「よし、次の探索はその大草原にしよう。ヨル、よろしく頼む」
「はいです」
こうして、俺たちの大草原探索が決まった。




