第52話 大陸での農業
どんちゃん騒ぎの宴から一夜、俺たちはその次の日もせっせと働いて、新たな拠点――煌星村の開拓にいそしむ。
創星村で一度経験があるから、思いのほか順調に作業ははかどる。水路の掘削作業も無事に終わり、水が通る。居住棟も、今後を見据えて百人分のキャパシティのを建てる。すべては順調そのものだ。
しかし――ここでひとつ、問題が発生した。
「ねえ、リヒトくん。ケレス、ここに持ってくる?」
土を耕して、畑をつくろうとしたときに、陽奈から指摘を受ける。
「そうだった・・・・・・でも、ケレスは今、無人島だよな」
万能耕作機械ケレス。畑の管理でも何でもこなしてしまう便利過ぎるマシン。
「ヨル、ケレスをもう一台作ることは出来ないのか」
「うーん・・・・・・残念ながら、現在私たちが確保している資材では、不可能ですね」
「そうか・・・・・・」
この煌星村は、結構な広さを誇るから、農作業にはもってこいだったのだが・・・・・・。
そんなとき、一人の三十代くらいの男性が、声をかけてきた。
「リヒトさん、どうしましたか? 何かお困りのようですが」
「ああ、実はですね・・・・・・」
俺はかいつまんで事情を説明する。
話を聞き終えた男は、あっさりとした口調で、
「なんだ、そんなことですか。だったら、ここにいるみんなで、畑を管理すればいいじゃないですか」
「あ・・・・・・でも、良いんですか? 俺たちばっかり、耕作機械を独占したら、悪いような・・・・・・」
「なに言ってるんですか。リヒトさんがいなかったら、我々はもう死んでいた可能性すらありますからね。それくらい、なんてことないですよ。それに、三十人以上いるんだから、なんとかなりますよ」
にかっと白い歯を見せて笑う。
「ありがとうございます・・・・・・!」
俺と陽奈は、何度も頭を下げる。
「リヒトさん。提案ですが、煌星村にアルテミスを置いておきましょう。汎用型ですので、畑に関する作業も、プログラムすればすぐに出来るようになります。アルテミスなら、あと二十台近くは作成可能ですからね」
「おお、それだ!」
ヨルの言うとおりだ。ケレス以外を利用すればいいのだ。
「とはいえ、今後さらに大規模な農作業が必要とされるかもしれませんからね。そのときに備えて、アルゴスを飛ばして、他のゼウス号の残骸を探しておきましょう」
「よろしく頼む、ヨル」
「それでは、早速準備にとりかかりますね・・・・・・」
そんなこんなで、煌星村での農業については、以下のように決まった。
一、煌星村におけるの宇佐作業は、住人たちによって行われる。
二、今後、万能耕作機械ケレスが他にも発見された場合、煌星村に優先的に譲渡する。
三、無人島でケレスによって収穫された作物は、その余剰分は可能な限り、煌星村に分配する。
「それでは、よろしく頼みますよ、リヒトさん」
「ええ、こちらこそお願いします」
俺たちは、がっしりと握手を交わすのだった。
♢
その日の午後から、煌星村の裏手の平地に、鍬を入れ始めた。
約二十人ばかりの住人と、アルテミス三体が、並んで地面を耕している光景は、壮観だった。
面白かったのは、手の空いた陽奈と葉月が、みんなのためと麦わら帽子を編み始めたことだ。黄金色の帽子が、みるみるうちに増えていく。
もちろん、残りのメンバー・俺や楓、雫も遊んでいたわけではない。楓は新しく完成した居住棟の点検をしているし、雫はこどもたちの遊び相手でてんやわんやだ。
そして俺も、自動釣りマシンを搭載した小型無人船の作成で、これまた大忙しだ。
無人惑星での生活は、順調に進んでいく。




