第44話 ひとまず、大陸へ帰還
大陸への足がかりとしての拠点・分星村の防衛は、アルテミスたちに任せて、俺たちは一度、島に帰ることにした。
エインダ率いる食糧庫モジュール勢に対抗するためには、武力が必要不可欠だ。しかし、その装備を揃えるためには、無人島に戻った方が良い。あそこには、資材モジュールもあるので、作成できる物のレパートリーは多いだろう。
「へえ・・・・・・これが、オデュッセイア号・・・・・・リヒトさん、これ全部ひとりで作ったんですか?」
美玖、ゆかり、萌奈の三人は、オデュッセイア号の船体を見て、驚く。
「厳密には、万能工作機械・デミが作ったんだけれどな」
簡単に解説して、俺たちは船に乗りこむ。水平線の彼方に、沈みつつある夕陽が輝いている。夜までには、無人島に戻りたい。
「でも、大丈夫かな。わたしたちが留守にしている間に、分星村がエインダたちの襲撃を受けたりしないといいけれど・・・・・・」
不安を隠さない陽奈に、ヨルが静かだが自信に漲った口調で答える。
「アルゴスによる空中偵察を、二十四時間体制で行っています。村に近付く輩がいたら、すぐに分かります。そして、現在アルテミスにより即席の罠も設置しています。アルテミスも一号から三号まで、そこそこ協力な武器を持っています。村の防衛は、万端です」
「そう・・・・・・なら良かった」
とはいえ、エインダたちがどんな武器を持っているかは分からない。いずれにせよ、早めに動くに限る。
「それじゃ、出航だ」
俺たちを乗せたオデュッセイア号は、静かに、海を走り始める。
「わあっ、海だ海! 久しぶりだー!」
美玖が、デッキの手すりにつかまり、こどもっぽくはしゃぐ。
「船に乗るのってゼウス号以来よね」
「うん。でも、あれは船といっても宇宙船だからね・・・・・・」
ゆかりと萌奈も、楽しげに会話している。
大陸から離れることになり、ひとまずエインダたちからの危険から去ることが出来て、三人とも気が楽になったのかもしれない。
「そういえば、この船って、誰が操縦しているんですか?」
「それは、私です!」
萌奈の問いかけに、ヨルが出しゃばってくる。
「へー、ヨルさんってすごいAIなんですね」
「そうですよ! 私は、何でも出来るんです」
「ヨル、あんま調子に乗りすぎるな」
俺たちは軽口をたたき合いながら、航路を進む。
♢
猛スピードで海上を走ること数時間、俺たちを乗せたオデュッセイア号は、無人島のアクアベースへと到着した。
「ここが無人島ですか・・・・・・」
「なんだか、大陸と雰囲気がちょっと違いますね」
俺たちと似たようなことを言う、美玖たち三人娘。
「さ、もうちょっとだよ。もうちょっとで、私たちの創星村だから」
葉月が先導して、三人を案内する。
♢
「え・・・・・・これ、本当に全部作ったんですか? この短期間で?」
「あの建物は何ですか?」
「あれは居住棟よ」
「すごい・・・・・・水路までちゃんと通っている」
「おまけに畑まで・・・・・・」
「あれは格納庫ね。色々メカが入っているわよ」
「「「すごーい」」」
俺たちの案内を受けて、歓声を上げる三人。そんな三人を見ていると、この村を作って本当に良かったな、とじんわりと胸に染みるような感情が広がっていった。
♢
美玖たちは、先にお風呂に入って、陽奈の寝室に三人で今日は眠ることにした。
そして、俺、陽奈、葉月、楓、雫の五人は、テーブルを囲んで、明日からのことを話し合う。
「明日から、本格的にエインダたちへの対抗手段を考えていく。まずは、アルテミスをもっと増やしたい」
しばらく使っているが、アルテミスの汎用性は、想像以上だ。もっといれば、戦闘だけでなく、いろいろなことに役に立つのは間違いない。
「格納庫モジュールの材料などから推定すると、アルテミスはあと八体ほどは作成可能です」
ヨルからのアドバイスをメモする。
「ねえ、ヨルちゃん。あの二足歩行の人型スーツ・・・・・・タロス、だっけ? あれを戦闘用に改良することは、できるかしら」
「もちろんです。ちょっと待ってくださいね・・・・・・今、この村の管理下にある資材から、どのような改造が可能か、複数のプランを考えています・・・・・・」
テーブルの上に、ヨルの考案するアイデアが次々と三次元映像で投影されていく。
「それから、偵察用の空中ドローンもいるわよね」
「はい。アルゴス一機だと、場合に寄っては撃墜されるかもしれませんしね。予備は欲しいところです。こちらは最大十二台までは作成可能ですが・・・・・・」
「あれ? でも、タロスって、大陸までどうやって運ぶのかな」
「はっ!! そうでした!!・・・・・・ひとまずは、デミちゃんの重力操作を使いましょう。タロスちゃんを載せるには、オデュッセイア号の大規模改造が必要です」
「ヨル、資材があるなら、オデュッセイア号の改造もしようぜ」
「そうですね。ちょっとお待ちください。今、プランを練り直します・・・・・・」
俺たちの準備は着々と進んでいく。




