第45話 進む開発
翌朝。俺たちは早速行動に移る。
「おはようございます~、あれれ? リヒトさん、これは・・・・・・」
昨夜はぐっすりと眠ったのだろう。遅めに起きてきた美玖、ゆかり、萌奈の三人が、作業中の俺たちを見て、息を呑む。
「これは、タロスっていうんだ。人型パワードスーツ。今改良中でな」
「リヒトさん、戦争でもするつもりですか?」
無骨なタロスの巨体を見上げながらのゆかりの問いかけに、俺はゆっくりと首を振る。
「備えあれば憂い無し、てやつだ」
葉月が、三人に声をかける。
「美玖ちゃん、ゆかりちゃん、萌奈ちゃん。朝ご飯出来ているよ~」
「あ、はい」
三人はいそいそとリビングに向かう。そういえば、あの三人分の椅子が必要になるな。昼までに、作っておこう。俺は作業に集中する。
♢
デミが唸りをあげ、資材用の合金が次々に削り出される。アルテミスの四号機から七号機までが、組み立てられていく。装甲はちょっとやそっとの攻撃にも耐えられるよう二重構造に強化して、武装もネットガンやスタンロッドを装着していく。
「リヒトくん、ドローンの方はどんな感じ?」
陽奈が組み立て中のアルテミスの機体を覗き込みながら、訊いてくる。
「アルゴスと同じシリーズのを三機追加。偵察範囲を大陸全体に広げられる。それから、こっちは新しく作る攻撃型ドローン。閃光弾と煙幕弾を投下できる」
「戦闘用、ね」
楓が少しだけ表情を曇らせる。俺は彼女の肩を軽く叩く。
「もちろん、使わずに済むのが一番だ。でも、万が一のためには、あった方がいいだろう」
「うん。それは充分過ぎるほど分かっているよ・・・・・・なんか、ごめんね」
「気にするな」
「タロスの方は、どうなの?」
「バッテリーは完全充電済みです。駆動系も問題ありません」
ヨルが答える。
「ただし、制御系に少し問題がありました。元が重作業用なので、繊細な動きには向いていないんです。格納モジュールのデータとアルテミスの制御プログラムを応用して、戦闘用に最適化できる見込みです」
「戦闘用というか、警備用だ。人を傷つけるためのものじゃない」
「はい。防御と制圧に特化した形に改良します。ミサイル攻撃に耐えられる装甲、ドリルを装備した腕部、そして背部に煙幕弾の発射機。機動力も、ジャンプユニットの追加や、駆動系の改良で、地形を選ばず移動できるようにします」
「よし、それでいこう」
タロスの巨体に、一枚一枚新しい装甲が取り付けられていく。背部にはスラスターユニット、腕部にはスタン機能付きの大型グリップも追加される。胸部には煙幕弾の発射口が増設された。
「なんだか、タロスが別人みたいだね」
陽奈が言う。
「ああ。新しく生まれ変わっているんだよ」
もはや、元の面影はうっすらとしか残っていない。それは開拓用の作業機械ではなく、俺たちの村を守る守護者の姿だった。
それから夕方まで、俺たちは準備に没頭した。
新たな四機のアルテミスは無事完成して、格納庫に加わった。
偵察用ドローンは三機、攻撃用ドローンも二機が無事に完成した。人型パワードスーツのタロスもまた、格納庫の中央で静かに起動のときを待っている。
「これだけあれば、エインダも話し合いくらいには応じてくれるんじゃないかな」
陽奈の言葉に、雫が溜め息交じりに返す。
「それなら、随分と楽なんだけれどね・・・・・・」
「ヨル。エインダたちの様子は、確認できたか?」
「はい。アルゴスによると、大した動きはないようですね。食糧庫を中心にして、小さな村のようなものができています。村、といっても、テントを張っただけの、創星村と比べれば、随分と粗末なものですけれど」
美玖が口を開く。
「あたしたちも協力します。知ってることはあんましないけれど・・・・・・可能な限り、手伝います」
「ありがとうね。でも美玖ちゃん、まずは、あなたたちがここで安心して暮らせるようになるのが第一よ」
陽奈の言葉に、美玖は少し驚いた顔をして、それから照れくさそうに笑った。それに応じるように、ゆかりと萌奈も深くうなずく。
「ところでリヒトさん。まだ作業は残っていますよ。オデュッセイア号の改良という大仕事が・・・・・・」
「あ、そうだった・・・・・・みんな、もう一仕事頑張るぞ」
「リヒトさん、今日はみなさんもうお疲れですよ。まずはゆっくり休んで、明日からまた作業を再開した方が、効率も良いでしょう」
「そうよ、リヒトくん。今日はもう、終わりにしましょう」
言われてみれば、そうだな。今日はもう終わりにしよう。俺たちは、片付けに入る。




