第4話 一晩、明けて
唐突な陽奈の提案に、俺は動揺を隠せない。
「なななに言ってるんだ?」
そんな俺の様子を、どこかおかしそうに見る陽奈。
「だって、このベッド、わたしとリヒト君くらいなら、入れるでしょう?」
「いや、そりゃそうかもだけれどさ・・・・・・」
万能工作機械のデミが作ってくれたのは、結構大きめのサイズのベッドだったのだ。
「それじゃ、決まりね! ふぁぁ・・・・・・わたし、眠くなってきたから、もう横になるね」
「陽奈。いくらなんでも、不用心過ぎるだろ。男の俺とそんな・・・・・・何かあったら、どうするんだ?」
「・・・・・・クラスメイトとして思うけれど、リヒトくんって、人の嫌がることはしないでしょ?」
「そりゃあ、しないけれどさ。でも、俺とて健全な年頃な男子なわけで・・・・・・」
「陽奈さん、安心してください。もしリヒトさんが、眠っている陽奈さんに何か仕掛けようとした場合、私がサイレンを鳴らして起こしますから」
俺たちの会話を聞いていたヨルが、そんなことを言い出す。それを聞いて、陽奈は満足そうに「うん、それなら安心ね」と言い、横になる。
「・・・・・・・・・・・・」
まずい。このままここに陽奈を置いて、ポッドに向かえば良いのだが・・・・・・とにかく眠たくなってきた。
「仕方ない。本人が許可しているんだから」
自分で自分に言い訳しつつ、俺も陽奈と反対側のベッドに横になる。睡魔がすぐに襲ってきて、泥のような眠りにつく。
♢ ♢ ♢
翌朝。まだ周囲は薄暗く、ベッドの隅で陽奈はぐっすり眠っている。俺はそっと家から抜け出し、家の前に置いておいた万能工作機械・デミを手に取る。
「おはようございます、リヒトさん。今日は早いんですね」
「ああ。ちょっと作りたいものがあってな」
俺はデミを抱え、砂浜へと向かう。
家のクラフトのための材料で、だいぶ解体したが、それでもゼウス号の一部の残骸は、まだまだ残っている。
「リヒトさん、何を作るつもりなんですか?」
「それはだな・・・・・・」
俺は、今朝、不意に思いついた案を、こっそりと口にする。それを聞いたヨルは「もう、リヒトさんたら・・・・・・陽奈さんが来たからですよね?」と返す。
「ま、そうだな。それじゃデミ、材料加工を頼むよ」
デミはピピピ・・・・・・と電子音を鳴らし、黙々とゼウス号残骸から材料を切り出し始める。よし、ここはひとまず任せておいて。次は朝食にするための食材調達だ。自動釣りマシンは・・・・・・お、よしよし。一晩でもたっぷり釣れている。それから、濾過器に貯まった真水を回収して・・・・・・。
俺は朝食の準備をする。
♢ ♢ ♢
「おはよう、リヒトくん・・・・・・え? これ、もしかして朝ご飯?」
「ああ。口にあうかは分からないがな」
「リヒトくんって、料理できたんだ・・・・・・」
「いや、そんな料理ってほどのものじゃないけれど。ほら、食え」
これまたゼウス号の残骸から作った食器に盛られた魚を、俺は陽奈に差し出す。シオカゼ草という植物を体内に詰めて焼いた、そう大した工夫のない料理だ。
陽奈は焚き火のそばに腰掛けて、俺の料理を食べ始める。
「うん、昨日のより美味しい」
「だったら良かった。腹一杯食べてくれ」
ぶっちゃけ、ちょっと釣れすぎたからな。残りは干物か燻製にでもしておこう。燻製機も作らないとな。
朝食が終わり、再び砂浜に行こうとすると陽奈に呼び止められる。
「リヒトくん・・・・・・なにか手伝えることない? わたしも、リヒトくんの力になりたい」
「ん? そうだなあ・・・・・・じゃあ、ヨルと果実の採集をお願いしようかな。俺は、ちょっとやることあるから」
「りょーかい。ヨルちゃん、お願いね」
「はいですー。陽奈さん、それじゃ行きましょう!」
「なんかあったらすぐ読んでくれよ」
そうして、陽奈は森の中へと姿を消す。ヨルのサポートがあるから、きっと大丈夫だろう。
さてと。俺には俺の仕事がある。再び砂浜へと向かう俺。
「おー、出来ている出来ている。」
デミはすっかり俺の頼んでいた工程を終えていた。残骸のそばに、必要な資材がすべそろっていた。
「よし、それじゃあ始めるぞ・・・・・・」
俺はデミの重力操作をオンにして、資材を居住スペースへと運ぶ。
さて、いよいよクラフト開始だ。




