第40話 装備品作成
翌朝。俺たちは、雫を囲んで朝食をとる。
「雫さん、よく眠れましたか?」
「おかげさまで。リヒトくんの腕が良かったのかしら。あのベッド、ぐっすり眠れたわね」
「どういたしましてです、雫さん」
そう返してスープを一口すすっていたとき、ヨルの連絡が入る。
「皆さん。アルゴスからの最新情報です。昨夜一晩中かけた、食糧庫モジュール周辺の詳細な偵察データがまとまったみたいです。立体地図を表示します」
テーブルの上に、高精細のホログラムが浮かび上がる。食糧庫モジュールは、大陸の沿岸部から少し離れたところの、丘の中腹に位置していて、周囲にはバリケードや見張り台らしき構造物まで築かれていた。
「ちょっとした要塞って感じだな」
俺は眉をひそめる。
「エインダたちも、食料を盗まれるのが心配なんでしょうね」
雫も苦い表情で地図を見つめる。
「人数は正確にわかるか?」
「アルゴスの熱源スキャンによれば、三十五名程度。うち武装しているのは十名ほど。残りは非戦闘員──従うことを選んだ生存者でしょう」
雫は、テーブルのホログラムにじっと視線を落とす。
「エインダは、自分に従えば安全だって言い続けてるのよ。食料も寝床も与えるってね。実際、一人で放り出されるよりは、従ったほうが生き延びられる。もちろん、ポッドで冬眠するという選択肢もあるけれど・・・・・・でも、それは不安だという人も一定数いる」
「それだけの分量の食糧がまだ残ってるのか?」
「ええ。あの食糧庫は、数百人を一年以上養える規模だった。まだかなりの備蓄があるはず」
「でもさ、それっていつかは尽きるわけじゃん。ただゼウス号の食糧を食い潰していくだけじゃ、時間が経てば経つほど、状況は悪くなっていくよね」
陽奈の指摘に、雫は無言でうなずいた。
「俺たちだけで乗り込んで、どうにかできる問題じゃないかもしれない」
「でも・・・・・・放っておけないよね」
楓が俺たち全員の顔をまっすぐ見つめて言う。
「雫さんみたいに、本当は従いたくない人もいるんだもん」
「だけれど、暴力的なのは嫌だな。あくまでも、話し合いで解決したい。同じゼウス号の生存者同士、争う意味はない。でも──」
俺は立ち上がった。
「備えは必要だ」
格納庫に集まった俺たちの前で、デミが静かに唸りをあげている。
「まずはアルテミス増産しよう。現行の一機だけじゃ、三十五人を相手するには心許ない」
「同型機の複製ですね。ゼウス号の格納モジュールまで、もう一度行きましょう」
ヨルの言葉に、俺は頭の中で計画を練り、格納庫の在庫を確認する。ゼウス号の格納モジュールから運び込んだ合金パネルとパーツ類には、まだ余裕があるが、追加で欲しいものも発生するだろう。
「まずは二機ほど、追加で作ろう。アルテミス二号、三号だ。武装は一号と同じくネットガンと電磁ワイヤー、それに熱源センサー。狩猟用のプログラムと警備用のプログラム、両方を入れておこう」
「了解です、リヒトさん。今、材料の過不足をチェックしますね」
ヨルがデータを読み取り、行動に移る。
「それから、武器も作ろう。現状、俺たちにとっての武器らしい装備品といえば、葉月のクロスボウだけだ。他の奴にも必要だろう」
「ありがとう。私、一応護身術は習ってたから、接近戦でも最低限は対処できるよ」
雫が言う。
「私も、クロスボウを扱えるようになりたい。前線には出られなくても、いざというときに」
楓も口を開く。
「わかった。じゃあ、となると・・・・・・」
まずはクロスボウを追加生産し、矢も増産する。それに加えて、ヨルが新しい装備を提案してきた。
「データを分析したところ、非殺傷用の閃光弾と煙幕弾も作れます。格納モジュールの予備パーツに、ちょうど使える化学反応管があります」
「了解。格納モジュールに、取りに行くぞ」
「それと、折りたたみ式の防護盾も。合金パネルを軽量化して持ち運びやすくしたものです。敵は銃火器も持っているので、それくらいの防備は必要不可欠です」
「よし、それも作ろう。みんな、手伝ってくれ」
「了解」
「らじゃー」
「うん、リヒトくん、お願いね」
「それじゃ、みんなで作成開始よ!」
俺たちの声が、村に響く。




