第38話 ベースキャンプにて
ベースキャンプに戻ると、俺たちは簡易テントの前に焚き火を熾した。辺りはすっかり暗くなり、星が瞬き始めている。火を囲みながら、俺たちは持参した燻製と乾燥野菜のスープで夕食をとった。
雫はラズルグレナのスープを一口すすると、目を見開いた。
「これ・・・・・・すごく美味しい。あなたたち、これも自分たちで?」
「はい。ラズルグレナっていう微生物を培養してるんです。栄養価が高くて、様々な用途で使える万能生物で」
俺の説明に、楓が付け加える。
「それに、この燻製もです。アルテミスっていう狩猟ロボットが捕ってきたクサムラウサギなんだよ」
楓は燻製肉を一切れ差し出す。
「狩猟ロボット・・・・・・? あなたたち、本当に何者なの?」
雫が呆然とした顔で俺たちを見る。
「一応、高校生です」
俺は肩をすくめる。
「でも、この星に来てからは開拓者だよねね。自分たちで必要なものは全部作ってきたんだし。食料も、水も、エネルギーも、今は自給自足しています。だから、食糧庫を誰かが独占してるって聞いても、わたしたちからしたら・・・・・・言い方は悪いですけれど、他人事です」
陽奈が胸を張って、言う。
「うん。でもさ、陽奈。もし私たちがあの島で自給自足できてなかったら、きっと同じように、その食糧庫を独占している人に従うしかなかったんじゃないかな」
葉月が、静かに突っ込む。
「でも、実際のところ、私たちは違うよね」
楓が言った。
焚き火の火が静かに揺れる中、雫はため息混じりに言った。
「あなたたちの話を聞いていると・・・・・・なんだか希望が湧いてくるわね。たった四人の高校生が、ここまでやっていけているなんて。私ももう少し、頑張れろうかな」
「雫さん、一人じゃないですよ」
陽奈が雫にそっと手を差し伸べる。
「私たちの村に来ませんか? 創星村っていうんです。この大陸からちょっと離れた島にあるけど、オデュッセイア号ですぐに往来可能です」
雫はしばらく考えてから、首を縦にに振る。
「ありがとう。あなたたちのお言葉に、甘えさせてもらいます。でも、ひとつだけ。わたしは、食糧庫を独占しているあの人たちから、逃げることはないから。必ず、向き合ってみせるから。でも、いまは、あなたたちの作り上げた村とやらも、気になるし・・・・・・一度、お邪魔させてもらうわね」
陽奈が、葉月が、楓が、表情を明るく輝かせる。
「やったー! 雫さん、ようこそわたしたちの村に」
「同じ船に乗ってた仲間同士、頑張っていきましょう!」
なんやかんやと打ち解けた雰囲気になる一同。これから仲良くやっていけたら、それにら越したことはない。
「みなさん。私も、雫さんを一度島に連れていくのは賛成です。村を見てもらいたいというのもありますが、なにより、その食糧庫占拠組に対処するためには、それなりの準備が必要です。先ほど、アルゴスでこっそり偵察したのですが、結構な武装でして・・・・・・」
「そうなのか。だとしたら、もっと対策しておかないとな」
「? あなたたち、誰と会話しているの」
首をかしげる雫に、俺は、
「ああ、これはヨルっていうアシスタントAIです。このイヤリングを通して、会話できて・・・・・・予備のがなかったかな」
「たしか、オデュッセイア号にあったよね」「船内の予備棚Bに、ありますよ」
「おっけー。じゃ、持ってくるね」
陽奈が一目散に、オデュッセイア号へと向かう。
また新しい仲間ができそうだ。さあ、忙しくなるぞ。




