表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/43

第37話 他の生存者

 

 彼女は両手を開いて、武器を持っていないことを示した。


 俺たちもまた、クロスボウやナイフの構えを解いて、敵意のないことを示す。


「俺たちは敵じゃありません。ゼウス号の生存者」


 女性は数秒間、じっと俺たちを見つめた。それから四人の顔を順番に見て、最後に俺に視線を戻す。


「あなたたち・・・・・・ひょっとして、ゼウス号に乗っていたの?」

「ええ、そうです。あなたもですか?」


 葉月が尋ねる。


「私はゼウス号の乗員。三島みしましずくよ。あなたたちは?」


 サバサバした雫の問いに、俺たちは簡単に自己紹介をする。


「あなたたち、遭難してから、ずっとこの辺りに住んでいたの?」

「いえ。無人島で生活しながら、ここまで来ました」

「島からこの大陸まで? いかだでも作ったの? よく来れたわね」


 雫の目が大きく見開かれる。


「まあ、そこまですごいわけでは・・・・・・雫さんの方こそ、今日までどうされてきたんですか?」

「私は・・・・・・逃げてきたのよ」


 そう言うと、彼女は少し顔をうつむかせる。


 俺たちは顔を見合わせる。何があったのかはわからない。でも、話を聞く必要があるようだ。


「よかったら、私たちのベースキャンプに来ませんか。食べ物もあります」


 陽奈がそっと声をかける。


 雫はしばらく黙っていたが、やがて小さくうなずいた。


 ベースキャンプに戻る道すがら、雫はぽつりぽつりと自分の状況を話し始めた。


「ゼウス号に乗って、ポッドの中で冬眠していた私は、気付いたら、この大陸の沿岸に不時着していたの。そのことは、みんなも多分同じだと思う」

 

 俺たちは静かに頷いて、先を促す。



「でも、この大陸には他にもたくさんのポッドが不時着していたみたいで、ほどなくして何人もの乗員と合流したわ。最初はお互いに助け合って、なんとかやっていこうって感じだったのだけれど・・・・・・」

「最初は?」


 俺の疑問に、雫は苦い表情でうなずいた。


「食糧庫モジュールが見つかってから、色々とおかしなことになったのよね」

「食糧庫・・・・・・ゼウス号のですよね」


 雫は静かに首肯する。


「ええ。ゼウス号の大型格納区画の一つで、長期保存食が大量に収められているの。ここから北に五キロほどの丘の中腹に、ほぼ無傷で落ちていたのよ」


 それは、俺たちが島で見つけた格納モジュールと同じくらいか、それ以上の規模の残骸らしい。雫の話では、中には数百人を一年以上養える食料があったという。


「それだけあれば、みんな助かるんじゃないの?」


 陽奈が首をかしげる。


「そう思うでしょ。でも、そうならなかった」


 雫は、三つ編みを弄りながら続ける。


「食糧庫を最初に発見したのは、とある五人ほどのグループだった。元々、地球では仕事か何かの仲間だったみたいで、まとめて同じところに落下したみたい。で、彼らは食糧庫を独占して、他の生存者にはただでは分配しないと言いだしたの」

「え、でもそれって・・・・・・どうして、そんなことをするんでしょうか」


 葉月は、心の底から疑問だという感じだ。


「リーダー格の女によれば――名前は、たしかエインダとか名乗っていたっけ――『資源は管理できる者が管理すべき。それが、この星で秩序ある生活を営むための鉄則だ』とかなんとか。もっともらしい御託ごたくを並べているけれど、要は自分たちが他者を従えたいだけなのよ」

「まるで王様気取りだな」


 俺は思わず声に出していた。


「うん、確かにそんな感じ。食糧庫を城みたいに占拠して、自分たちのルールで全てを決めている。従う者には十分な食料が与えられる。逆らえば追放される。武力で抑えつけるための武器も、食糧庫の中から見つけたみたい」

「そんな・・・・・・みんな同じゼウス号の生存者なのに」


 陽奈が顔を曇らせる。雫は、話を続ける。


「私も、こんなことをする人たちがいるなんて、最初は信じられなかった。でも、それが現実だった。私は従うのは嫌だったから、食糧庫を離れて一人で生きることにした。さっさとポッドで再び冬眠した人もいる。あそこには今、三十人ほどの生存者が集まっているはず」

「その三十人は、どんな人たちなんだ?」

「色々ね。一部は積極的にエインダに従っている。一部は生きるために、仕方なく。そして、私みたいに離脱した者もちらほら。でも、この大陸で一人で生きるのは簡単じゃないからね。食料を探すのも、水を確保するのも、原生生物から身を守るのも。冬眠ポッドで眠る選択が、本当は一番かもね」


 雫はそこで言葉を切り、少しだけ自嘲気味に笑った。その言葉を、陽奈が穏やかに否定する。


「そんなことないです」


 その声は、静かだが、はっきりとしたものだった。


「わたしだって、同じ状況だったら、雫さんと同じ選択をすると思います。いや、どうかな。すぐにポッドに逃げたかも」

「そうかしら・・・・・・」

「そうです。少なくとも、雫さんは何も悪くありません。わたしたちだって、リヒトくんがいなかったら、どうなっていたか分かりませんし・・・・・・」

「リヒトくん・・・・・・」


 雫は俺の顔をじっと見つめてくる。あの、そんなにじっと見られると、ちょっと気恥ずかしいんですが・・・・・・。


「リヒトくんは、すごいんですよ。一人で私たちの住む家を建てて、水も食料も確保して、畑も作って・・・・・・」

「えぇっ? リヒトくん、あなた、何者なの?」


 興味津々の様子の雫。俺は苦笑して答える。


「いえ、大したことありませんよ。ていうか、万能工作機械のデミがすごいんであって・・・・・・」

謙遜けんそんしないの、リヒトくん。あなただって、充分にすごいでしょ?」


 楓が、暖かく励ましてくれる。


「雫さん、とりあえず俺たちのベースキャンプに来ませんか? そこで、色々とこれからの対策を話し合いましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ