第35話 大陸到着!
カードゲームに興じるうちに、二時間が過ぎ、三時間が過ぎた。船内で早めの昼食を食べ終わったとき、ヨルの声が響いた。
「皆さん。間もなく、大陸に到着です」
船窓の外を見る。
これまで水平線の向こうにあるぼんやりとした影のようだった、大陸。その輪郭はいまや鮮明になり、緑の濃い海岸線と、その奥にそびえる山々が姿を現していた。
「あれが・・・・・・大陸」
「思ったより、ずっと大きいわね」
「そりゃ、大陸っていうくらいだしな」
島とは比較にならない広大な陸地。どこまでも続く森。さらに遠くには雪を頂いた山脈までも、微かに見える。
「熱源反応のあった地点は、沿岸部から少し内陸に入った場所です。河口付近に着岸します」
オデュッセイア号はゆっくりと大陸の海岸へと近づいていく。
それからさらに三十分ほどして、オデュッセイア号はついに、大陸へと到着した。河口には砂浜が広がり、大きな川が海へと注いでいた。水は澄んでいて、魚の影がいくつも見える。
「着岸します。皆さん、船内の手すりにおつかまりください」
艇体が砂浜にそっと乗り上げ、静かに停止する。
「・・・・・・着いた」
俺は、ほっとして息を吐く。いくらヨル任せとはいえ、無事に航海が成功するか、無意識に不安だったのだなと、気付く。
ハッチを開けると、潮の匂いに混じって、森の濃い匂いが流れ込んできた。湿った土の匂い、花の香り、それから見知らぬ植物の甘い匂い。
「ここが大陸か……」
俺はハッチを降りて、大陸への一歩を踏み出す。
陽奈、葉月、楓もそれに続き、砂浜に降りる。
「なんか・・・・・・ちょっと雰囲気が違うね。上手く、言語化できないけれど」
陽奈が、周囲を注意深く観察しながら、そう呟く。
「なんか、空気が違うのかな。無人島の空気と大陸の空気・・・・・・」
楓が、そう言う。
ふと空を見上げると、探索用ドローン・アルゴスが上空を旋回している。
「ヨル、アルゴスを連れてきたのか?」
「もちろんです。大陸には、何がいるか分かりませんからね。目は多くあるに越したことありません。ついでに言うと、トリトンもオデュッセイア号とずっと一緒に着いてきて、航行のサポートをしてくれましたよ」
なるほど。ま、ドローンがいれば心強いことこの上ない。
「まずは、ベースキャンプの設営をしましょう」
ヨルの声が、穏やかに言う。
「川の水質も安全です。飲料水に適しています。まずは簡易テントを張り、探索の準備を進めましょう」
四人で顔を見合わせる。新しい土地。新しい探索の始まりだ。
♢
オデュッセイア号を河口の砂浜に係留する。
アルゴスは上空から偵察を続け、トリトンは河口の水中をスキャンしている。
「熱源反応があったのは、ここから北西に約三キロです。まずはそこを目指しましょう」
「でも、大丈夫なのかな? 本当に、そこに人がいるのかな?」
「んー・・・・・・それについては、まだ断定は出来ません。ですが、アルゴスの探索も同時進行で行いますし、何か危険があれば、私がすぐにお伝えします。なので、ご安心ください」
「うん、分かった」
陽奈がうなずく。
「三キロなら、今日中に到達できる距離だな。でも、いきなり突っ込むのはちょっと危険だ。まずはベースキャンプを張って、周辺の探索から始めよう」
「うん、そうだね」
俺の言葉に三人が同意する。
簡易テントは、河口から少し離れた砂地と草原の境目に設営した。水に近すぎず、森に近すぎず、見通しのいい場所だ。陽奈と楓がシートを広げ、葉月がポールを組み、俺がペグを打ち込み、テント設営は完了だ。
「オデュッセイア号の積荷はどうする?」
「必要なものだけテントに運んで、あとは船内に置いておこう」
「了解」
ベースキャンプの準備が整うと、俺たちは手分けして周辺の探索を始めた。陽奈と楓が川の水質と魚を調べ、俺と葉月が森の縁で植物や果実を採取する。
「川の水、すごくきれいだよ。濾過器なしでも飲める!」
陽奈が水筒で水を汲み、一口飲んで報告する。
「こっちにはベリーみたいな実がなってるわ。ヨル、毒はない?」
「分析中です。あと十秒で判断します・・・・・・大丈夫です。可食です。甘みが強く、ビタミンも豊富です」
「やった!」
こうして、俺たちの大陸探索の準備が、一歩一歩進んでいく。




