第32話 お肉ー!!
デミの重力制御でロボットを浮かせ、格納モジュールから創星村まで運び込む。
格納庫に着くと、陽奈と葉月、それに楓が待ち構えていた。
「リヒトくん、それ何!?」
陽奈が真っ先に駆け寄ってくる。
「ゼウス号の残骸で見つけた。汎用人型作業ロボットだ」
「汎用・・・・・・それで、なにかするつもりなの?」
「これを狩猟用に改造しようと思ってな」
「狩猟用・・・・・・!」
葉月の目が輝いた。
「ということは、お肉が食べれるようになるの?」
「そういうことだ。装甲をつけて、捕獲用のネットを撃たせる。うまくいけば、安全に肉を調達できる」
「すごい・・・・・・」
楓が物珍しそうにロボットを見つめている。
「これが、自分たちで動かせるようになるんだ」
「ああ。でもまずは充電だ。ヨル、バッテリーの適合は?」
「問題ありません。充電ステーションに接続すれば、約三時間で稼働レベルまで回復します」
俺はロボットを充電ステーションのそばに横たえ、ケーブルをつないだ。ロボットの胸部にあるインジケータが、かすかに点滅を始める。
「充電が終わるまでに、改造部品を作っておこう。必要なものは?」
「まずは装甲の増強ですね。胸部と脚部に増加装甲を取り付けます。素材は資材モジュールの合金を二重に重ねて・・・・・・」
「おーけー」
「それから、右腕用の捕獲ネットガン。圧縮空気でネットを射出する方式がいいでしょう。左腕には獲物を拘束するための電磁ワイヤー。それと、頭部センサーに熱源追跡モジュールを追加すれば、視界不良でも獲物を見失いません」
「よし、作ろう」
俺はデミの操作パネルを開き、ヨルから送られた設計図を呼び出す。
装甲プレートを削り出し、ネットガンの部品を組み立て、電磁ワイヤーのコイルを巻く。陽奈が部品を手渡し、葉月が装甲の取り付け位置を確認し、楓はヨルの指示で配線をチェックしてくれた。
「みんな、手際が良いな」
「そりゃあね。毎日のように何か作ってるからね」
三時間後。改造をも終わり、無事に充電も完了したロボットのインジケータが緑色に変わった。
「起動シークエンス、開始します」
ヨルの声とともに、ロボットの光学センサーが、ぽうっと赤く光る。関節部がかすかに唸り、一本一本の指が順に動き出した。
「・・・・・・起動した」
ロボットはゆっくりと上体を起こし、格納庫の中で立ち上がった。増加装甲をつけたシルエットは、発見時よりずっとたくましく見える。右腕のネットガン、左腕の電磁ワイヤー、頭部の熱源センサー。もはやただの作業ロボットではない。
「狩猟プログラム、インストール完了。基本動作テストを開始します」
ロボットが一歩、また一歩と格納庫の中を歩き出す。動きはぎこちないが、転倒する様子はない。
「よし、これで明日から狩りに出られる」
「ねえ、名前はなんにする?」
悠々と格納庫の中を歩くロボットを見ながら、陽奈がみんなに問いかける。
「アルテミス、とかどうかな?」
楓が、控えめな口調で提案する。
「いいんじゃないの?」
「異論ありません。それじゃ、それで正式登録しましょう」
アルテミスは、静かに動く。
「これで焼き肉が食べられるかもね」
「やったー!」
「焼き肉かあ。いい響きだ」
葉月も楓も笑顔だ。
「私、焼き肉のためのタレを考えておくよ。本で読んだレシピがいくつかあるの」
楓がそう言うと、陽奈と葉月がいっせいに「よろしく!」と声をそろえた。
頼もしい狩人が一人、俺たちの仲間に加わった。明日、どんな働きをしてくれるだろうか。
♢
アルテミスを作った翌朝。目覚めて、さて今日も朝食の支度をしようかな、と思い、調理場に向かうとき。その近くに、アルテミスが、静かにたたずんでいた。
「あれ? アルテミス、どうしたんだ・・・・・・て、あれれ?」
俺は、アルテミスの側に置かれていた籠を見て、驚く。そこには、鳥が何羽も入っていたのだ。
「おはようございます、リヒトさん」
「ヨル。これはどういうことだ?」
「はい。せっかくなので試運転も兼ねて、夜中にアルテミスちゃんの試運転をしてみました」
「おお・・・・・・」
つまり、この中に入っている鳥たちは、夜のうちにアルテミスが狩ってくれたものらしい。
「これはすごいな・・・・・・今日の四人分の食料は充分あるぞ」
そこに、起きてきた陽奈、葉月、楓の三人娘がやってくる。
「おはよ~、リヒトくん・・・・・・て、なにそれ!?」
大仰に驚き、籠に飛びつく陽奈。ヨルが手短に事情を説明する。
「いいわね~。それじゃ、今日は焼き肉ね!」
「葉月さん、ちょっと待ってください。これは焼き肉にするより、蒸し焼きにした方が美味しいかもです・・・・・・あ、ちょっと待ってくださいね。事前の調査情報と照らし合わせるとこの肉は・・・・・・」
ヨルが料理に関するアドバイスをして、陽奈や葉月、楓がそれに意見をする。どうやら俺たちの食生活は、一段、豊かになったようだ。




