第24話 また新たなモジュール
ひとまず、海中探査はトリトンに任せておこう。
村に戻った俺たちは、大陸までの船・オデュッセイア号の準備をする。
「これで本当に大陸まで行けるのかな?」
「多分、な」
葉月が、ためらいがちな口調で、
「ねえ、リヒトくん。そもそもの話だけれど・・・・・・わざわざ大陸に行く必要ってあるのかな?」
「どうした、葉月?」
「いや、ほら、私たちのこの創星村・・・・・・結構発展しているでしょ? わざわざ、他のところに行く必要があるのかな、て」
「ああ、そんなことか」
俺は、葉月の疑問を払拭するように返す。
「基本的には、俺たちの拠点はこの島、この村だよ。作物だって、これから育っていくしな。でもさ、ゼウス号の他の乗組員が、いるかもしれないだろう? そういう人たちを探すのも良いかもな、て」
「リヒトさん、それ以前に、単に船を操縦してみたいだけなんじゃないですか? 大陸に行くだけなら、デミちゃんの重力操作でなんとかなりますよ」
「あ、それもそうか・・・・・・ま、いいじゃん」
「リヒトくん。私は別に、あなたの考えをどうこう言いたいんじゃないのだけれど・・・・・・つまり、もっとこの島を探険してもいいんじゃない、て言っているの」
「はづの言い分も、一理あるよね。ゼウス号の他の人たちって、いまどうしてるんだろ」
「大陸で、いくつかのグループに分かれて血みどろの抗争をしていなきゃいいがな」
冗談抜きで、その可能性が少し頭をよぎる俺。
「でもさ、逆にみんなポッドで眠って救助を待っている可能性もあるよ?」
「だとしたら、こんなサバイバル生活をしているのは、ひょっとして俺たちだけか?」
「かといって、今更ポッドに戻る気にもなれないでしょう」
葉月の言うとおりだ。なんだかんだ、この生活を俺たちは気に入っている。
「ま、なんか都合が悪くなったら、ポッドに逃げればいいさ」
「リヒトさん。できれば、それは最後の手段にしてくださいね。皆さんがいなくなったら、私も個人的に寂しいです」
「もちろんだ、ヨル」
♢
その日の夕方。晩ご飯の準備をしていたら、ヨルが興奮した声で話しかけてきた。
「皆さん、皆さん! 発見しましたよ! 遂に、発見です!」
「ヨル、落ち着け。何を発見したんだ?」
「沖合まで探索航行していたトリトンちゃんが、東部の海中で遂に見つけてくれました! ゼウス号の建築資材モジュールです!」
「へえ・・・・・・それ、そんなにすごいのか?」
今ひとつ、ピンとこない俺に、ヨルがまくし立てる。
「そりゃそうですよ! 良いですか? 建築資材ですよ! これで、今までみたいに、ゼウス号の残骸だけに頼る必要はなくなったのです! 好きなものを建築できますよ! これで、この創星村はますます発展しますです!」
「お、おお・・・・・・そうか」
とはいえ、水路も通したし、村には必要な建物は充分ある気がするが。
「ヨルちゃん、ひとまずその建築資材モジュールの様子を見せてもらえるかしら? あ、夕食のあとにね」
「はい、もちろんです!」
とりあえず、俺たち三人は夕食の準備をこなしていく。
そして夕食後。俺たちは端末を開き、トリトンから送られてきた映像を見る。
建築資材モジュールは、驚くほど損傷の少ない形で、海の底に眠っていた。トリトンのライトを受けて、銀色に輝くモジュール。
「スキャンの結果、資材を積んだコンテナも、ほぼ全部無事のようです」
「なるほど・・・・・・ヨル。ここ、潜水艇のネプチューンだとどれくらいで行ける?」
「海岸から、およそ十五分といったところでしょう」
「おし、それなら今から行ってモジュールごと引き上げて回収しよう。デミの重力制御があれば、可能だよな」
「はい。陽奈さん、葉月さんも一緒しますか?」
「あ、ちょっとわたしたちは・・・・・・ね、はづ?」
「そうね。他に作業が残っているから、リヒトくん、お願いできるかしら?」
「ああ。というか、ふたりに来てもらう必要はないしな」
ということで、俺はネプチューンのある浜辺へと向かう。
小型潜水艇・ネプチューンに乗ること十五分、建築資材モジュールの沈む海底部へと到着した。
「おお・・・・・・」
モジュールは、実際に目の当たりにすると、かなりの大きさだった。さすがは建築資材の保管庫といったところか。
俺は手元のデミを起動させる。重力制御により、ゴゴゴ・・・・・・と鈍い音をたてながら、建築資材モジュールが動き出す。
「リヒトさん、成功です。この調子で、モジュールを浜辺まで曳航しましょう」
「ああ、分かった」
俺は、ネプチューンで、元来た道を帰り始める。
♢
浜辺に打ち上げられた鯨のような、ゼウス号の巨大な建築資材モジュール。無事にここまで持ってくることが出来た。
「すごいですねえ・・・・・・リヒトさん、せっかくですから、何か作りませんか?」
「んなこと言っでもなあ・・・・・・あ、そうだ」
俺は、浅瀬にプカプカと浮いているネプチューンを見て、思った。
「ヨル。この海岸に、ネプチューンの格納庫を作れないか? 海上に設置していて、そのままネプチューンが発進できるようなやつ」
「建築資材を使えば、簡単です。早速やってみましょう! あ、そうそう。せっかくなので、今作っているオデュッセイア号のスペースもあった方がいいですね」
ヨルの声に背中を押されるように、俺は建築資材モジュールから、コンテナを取り出して、水上格納庫の作成に取りかかる。




