第23話 海の探索者
今日も一日が始まる。朝食をとっているとき、ヨルが報告してくる。
「リヒトさん。探索用ドローン・アルゴスの活動は好調です。昨日も新たに島内の洞窟を発見しました。地図に反映しておきますね」
「おう、了解」
ドローン・アルゴスの活躍はめざましく、この島の地図は、日々アップデートされている。
「ところで、リヒトさん。島の陸の方は、アルゴスちゃんが探索し続けて大丈夫なんですが・・・・・・残念ながら、周辺海域の地形図はまだまだ上手くいっていない様子です。そこで、提案です! 今日は、新しく海中ドローンを作りませんか? そうすれば、海図も作成できますし、今後、ネプチューン号での航海の際の安全な航路も引けますよ」
そっか。アルゴスに海中探索モードとかないもんな。
「材料は大丈夫なのか?」
「はい! 調べましたら、いま村の中にあるゼウス号の残骸を利用すれば、充分に作成可能です」
「分かった。それじゃ、今日はそれを作ろう」
とまあこんな形で、午前中の予定が埋まっていく。
♢
格納庫でデミが低くうなりながら作業を続ける。
まずは機体のメインフレームだ。合金パネルを筒状に削り出し、内部に隔壁を何枚も設けて水圧に耐える構造にする。次に安定翼、後部に推進機を取り付ける。配線を引き込み、制御基板を固定し、複合センサーとソナーを収める。
「ねえ、リヒトくん。この水中ドローン、名前なんにする?」
陽奈が問いかけてくる。
「水中ドローンだが・・・・・・何か良い案ないか?」
「トリトンとかどう?」
葉月が提案する。
「ギリシャ神話で、ポセイドンの子。ほら貝を吹いて海を鎮める神様」
「ネプチューンとかの、海の神様つながりか。ま、いいんじゃねえか」
「じゃあトリトンで決まりね!」
陽奈が両手を合わせる。
そして、トリトンは完成した。
「おお~・・・・・・なんか、すごい格好いいね」
銀色の流線型ボディ、四枚の安定翼、小さくも精悍な姿を目にして、陽奈が言う。
「早速、テスト潜航をしちゃいましょう! 沿岸の浅瀬で基本動作を確認して、問題なければそのまま深場へレッツゴーです」
ヨルが、期待に満ちた声で言う。
俺たちはトリトンを連れて砂浜へ向かった。
波打ち際で機体を抱え、そっと海面に置く。トリトンはゆっくりと沈み、透明な水中にその姿を浮かび上がらせる。
「深度五メートル、姿勢安定。ソナー起動、通信良好です」
ヨルの声がイヤリングから流れる。
「推進機、始動」
トリトンのスクリューが静かに回り出し、白い航跡を曳いて機体が滑り出す。浅瀬の海底をなぞるように進み、やがて岩場の縁に差しかかった。
「深度十メートル。三次元スキャンを開始しました。データ、きれいに取れてます」
陽奈が端末を覗き込む。画面には、トリトンが捉えた海底の立体映像がリアルタイムで描き出されていた。
「すごい、ネプチューンで見たみたいに、鮮明な映像・・・・・・あ、あれ、アウレア・スピラ? だっけ」
「これ、海底洞窟とかも見つけられるかもしれないね」
「海底洞窟か。それ、ちょっと面白いな。未知の生態系があるかもしれない」
「この前、リヒトくんが言ってたみたいな、この惑星の未知の文明とか?」
「ああ。あるいは、深海に沈んだ古代文明の遺産とか、な」
「リヒトくん、ロマンあふれすぎよ」
「いいだろ、それぐらい合った方が、心が豊かになれるぜ」
そんなふうに軽口を叩きながら、三人で顔を見合わせて笑う。
試運転を終えたトリトンは、いよいよ本格的に海中の探索を始める。
トリトンは順調に航行しながら、海中を探索していく。俺たちは、じっと画面を見つめる。




