第19話 午後の作業
午後、俺は大陸への横断に向けた小型船舶・オデュッセイア号の調整をする。大陸に行くのは、まだしばらく先のことだろうが色々と準備はしておきたい。それに、オデュッセイア号で、島の近辺の海を往来するだけでも、行動範囲はぐっと広がる。
日が暮れて作業が一段落したとき。ドローンのアルゴスが、帰還した。
「リヒトさん、見てください! 今日一日でも、ものすごいデータ量です・・・・・・ドローンを作って、正解でしたね! データを反映させた三次元マップを、ひとまず端末に転送しておきます」
俺、陽奈、葉月の三人は早速端末を確認してみる。この島の詳細な三次元地図が、ホログラフィーで浮かび上がる。
「へえ・・・・・・これ、すごいね。めっちゃ細かい・・・・・・」
「北側ってこうなっているのか」
「あ、この川、以前渡ったのだね。結構大きい川なんだ」
「どうです、皆さん? ドローンのアルゴスちゃんの探索と、私の地図作成の能力は」
まるで胸を張る姿が見えるような、ヨルの誇らしげな声が、どこかおかしかった。
「ああ。まったくもって、すごいよ」
俺が褒めそやすと、「ふふん、そうでしょ~?」とヨルはますます得意げになる。
「ヨルちゃん、そういうばこの島に、他にはゼウス号の残骸ってあるのかな?」
陽奈が質問する。ゼウス号のモジュールは、まだまだ色々な種類があるし、それが発見できたら、また出来ることもますます増える。
「島内には、もう無いようです。ですが、島付近の海底には、スキャンの結果どうもまだ三つほどあるものと考えられます」
「へえ、そうなのか。じゃ、近いうちにまた探索するか」
「はいです!」
ゼウス号のモジュール。今度は何が出てくるんだろうな。
♢
オデュッセイア号の調整が一通り終わったとき。
「リヒトさん。ヨルからの提案です。培養器を作ってみませんか? 確認したところ、ゼウス号格納モジュールにある残骸で、作れそうです」
「培養器って、何を育てるんだ?」
「ラズルグレナですよ」
ああ、あの食べ物にも建築資材にもなるとかいう、ミドリムシみたいな生物か。
「ヨル。いまのところ、食料は充分過ぎるほどあるし、後回しでよくないか、それ」
「いいえ。仰るとおり、食用としてのラズルグレナは不要でしょう。でも、ラズルグレナは優れた燃料にもなりますからね。なんなら、高エネルギーの電池とかもできますよ」
「なるほど。まあ確かに、エネルギーの安定供給は必須事項だな」
格納モジュールの残骸から持ってきた電池も、限りがあるしな。
「分かったよ、ヨル。それじゃ、一つ試作機を作るか」
「ありがとうです!」
「よーし、デミ。それじゃ頼むぞ・・・・・・」
デミが動き出して、作業を開始する。
♢
一時間半ほどで、ラズルグレナ培養器試作一号は完成した。
太陽光を効率よく取り入れるよう設計された透明なタンクに、ポンプ、攪拌機、濾過槽、収穫槽が取り付けられている、至ってシンプルなデザインだ。あとはこの中に採取してきたラズルグレナと水を入れれば良いらしい。
「あれ、リヒトくんそれ何?」
陽奈が気付いて、こちらにやってくる。俺は解説する。
「へえ・・・・・・いいね。あ、そうそう。それなら丁度良かった。ほら、この前の海底探索でいたあのヤドカリさん・・・・・・トリケラ・コリコラ、だっけ? が、なぜか釣りマシンに引っかかっていたんだよね。このヤドカリさん、ラズルグレナを体内で育てていたよね」
「おお~、早速ラズルグレナ、ゲットです! 陽奈さん、ありがとうございます!」
「いいのよ、たまたまだし」
「ありがとう、陽奈。それじゃ、ひとつ培養してみるか」
俺は陽奈が採取してきた魚介類たちが詰まったバケツの中から、トリケラ・コリコラを取り出して、ラズルグレナ培養の準備を始めるのだった。




