第111話 追加の設備
新しい住人の受け入れ準備も、かなり進んだ。
三百人分の居住棟が完成し、川からの新しい水路が通った。増設した貯水槽も満水、さらには濾過装置は倍増。燻製と干物は倉庫に積み上げられた。ラズルグレナの培養量も大幅アップ。医療棟にはベッドが二十床追加され、凛たち医療スタッフも準備万端なご様子。
俺たちはテーブルに集まって、チェックや確認をしていく。
「これで、いつでも起こせます。・・・・・・と言いたいところですが、まだちょっとご提案したいことがあります」
ヨルが、静かに報告した。
「なんだ?」
「設備の追加建設です。三百人が加わると、村の規模が一気に大きくなります。それに伴って、様々なところで弊害が生じる可能性がありますからね。考えられることは、未然に防ぐに越したことはありません」
「そうだな。で、何を建てるべきだ?」
「候補はざっとこんなところです」
調理場のテーブルに、ヨルのリストがホログラムで表示される。
· 学校の拡張:今の校舎では、子供の数が増えると対応できない。教室と教師を増やす。
· 医療棟の拡張:ベッドは増えたが、手術室や隔離病棟が不足。欲を言えばパナケイアも、もう一基欲しい。
· 大食堂:今の調理場では、三百人分の食事を一度に配れない。交代で食事をすれば良いが、やはり共同で多人数が食事ができる大規模な食堂も必要。
· 集会所:大勢で話し合いができる広間。雨の日でも使える。
· 治安・消防施設:人数が増えれば、当然、トラブルも起こるものと考えられる。また、火事のリスクも同様。警察と消防を兼ねた拠点を建設して、アルテミスを常駐させる。
· 娯楽施設:酒場、遊技場、スポーツ施設。ストレス発散の場。
「多いな」
桐生船長が、うなる。
「全部、いつかは必要になります。ですが、優先順位をつけて、いくつかを先に作成しましょう」
「まず、絶対に必要なのは、どれだ?」
俺が尋ねると、皆が、それぞれの意見を出す。
「治安と消防じゃないかな」
葉月が、最初に口を開いた。
「特に、火事が怖いよね。今の村には、火を消す専門の仕組みがないし。これはまず優先させるべきだよ」
「だな。アルテミスを消火用にプログラムして、常駐させる拠点はすぐにでも欲しい」
桐生船長が、うなずく。
「私は、大食堂かな」
陽奈が、手を挙げる。
「三百人も加わった村人たちの食事をいっぺんに、今の調理場で配るのは、絶対に無理。それに、みんなで食べる場所があると、自然と交流が生まれる。新しい人たちが、村に馴染みやすくなると思う」
「たしかに。食は、共同体の基本だな」
「医療棟の拡張も、急いだ方がいいよ」
と言うのは楓。
「今の設備じゃ、絶対に足りないからね。特に、手術室と隔離病棟は、感染症が出たときに必要不可欠だし」
「逆に、学校の拡張は、もう少し後でもいいかもしれない」
雫が言う。
「子供の数は、そこまで一気に増えないでしょう。しばらくは、今の校舎と、美玖たちの手伝いで、なんとかなる」
少なくとも、新たに加わる三百人のうち、何十人もがこどもだとは考えにくい。
「娯楽施設は、どうする?」
俺が尋ねると、桐生船長が、少し考えてから、口を開いた。
「最初から、酒場を作る必要はない。だが、人が増えると、ストレスも溜まる。簡単な遊技場か、談話室のような場所は、早めに欲しいかもな。今の温泉の談話室を、村の中心にも、という感じで」
「よし、まとめよう」
俺は、リストを見ながら、優先順位を決めた。
第一:治安・消防拠点、医療棟。大食堂。
第二:大浴場、談話室兼遊技場。
第三優先:学校の拡張、図書館、集会所、工房の拡張等々。
「まずは、この三つかな。治安拠点、医療棟、大食堂」
「賛成」
「異論なし」
「私も」
「では、さっそく取りかかりましょう」




