表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/5

-episode2-

魔物は、イノシシに似ていた。

似ているだけで、同じではない。


魔素で形を保った塊が、

地面を抉りながら進んでいる。


狙いは俺じゃない。

背後の人間の塊だ。


正面から受ける選択肢は、最初からない。

あれに触れた時点で、終わる。


「風、半拍」


踏み込みと同時に、空気を叩きつける。

表皮が揺れ、毛並みのようなものが乱れた。


その瞬間、

魔物の進路が、わずかに歪む。


風に含まれた魔素を感知したのだろう。

次の瞬間、

その視線が、こちらに向いた。


進路を捨て、

俺を障害物として選んだ。


……来る。


魔物は迷わない。

重たい身体をひねり、一直線に突っ込んでくる。


俺は半歩、横に流れた。


その瞬間、地面が爆ぜる。

突進が通った跡が、

溝のように抉れていた。


半歩遅ければ、鋤骨が砕けていた。


背中に、冷たいものが走る。

余裕はある。

だが、安全ではない。


魔物が身体をひねる。

曲がりは遅いが、重さが違う。


俺は踏み込み、内側に潜り込む。


刃を振るう。


当たった感触は、軽い。

肉でも骨でもない。

削れた部分が歪み、元に戻ろうとする。


――深く入れない。


倒せる。

判断は早い。

油断ではない。


「風、連続」


短く、細かく。

刃に沿わせるように風を走らせる。


狙うのは中心。

魔素の流れが、一番歪む場所。


剣を突き立てる。


抵抗は一瞬だった。

押し切る。


魔物の動きが、乱れる。


その隙に、横から叩き斬る。


形が崩れ、

身体が裂け、

魔素が霧のように散った。


魔物は声を上げない。

それでも前に進もうとして――


そこで、崩れた。


地面に残ったのは、

抉れた跡と、焦げた土だけだ。


俺はすぐに剣を構え直す。

呼吸を整える。


……一体だけ。


背後で、誰かが息を吐いた。


振り返ると、

転んでいた老人が、膝を押さえている。

血は出ているが、生きている。


紙一重だった。


俺は剣を下ろす。


誰も見ていないのを確かめて、

一度だけ、息を吐く。


――僕は、遅れた。


本来なら、

誰一人、あそこまで近づけさせないはずなのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ