凡人、頑張るぞ!
午後の作業はどうしたかって?
ボロボロですよ?
針で私は何度自分の指を刺したかわからない・・。針山になったんじゃないかって思うくらい、ブッ刺した。
その度にアル君が心配そうに見たり、絆創膏みたいなのをくれた・・ごめん・・アル君。大人なのに、大人なのに・・めちゃくちゃ動揺して・・・、仕事にまで支障をきたす愚かな大人でごめん。
犯人は、すぐ隣で作業しながら面白そうに見てる天才です。体が子供の探偵がいなくても、一発でわかります。
「ごめんね・・アル君、私ポンコツで・・」
「そんな事ないですよ、ミスクさんの事もあって心配でしょうし・・」
うあぁあああああ!!!!
私の中の良心が、今確実に死んだ!!そっちももちろん心配なんだけど!!!!思わず作業台に顔を突っ伏してしまった。
「・・・・ごめん・・、私は最低だ・・」
「り、りつさん!!!とりあえず休憩しましょう!休憩!!」
「・・・・ありがとうアル君・・。本当に頼りになる・・」
「い、いえ・・そんな事は・・」
ちょっと照れるアル君に、ほんわかと和んでいると、なんかレイト君が静かにこちらを見た気がしたけど、私は今アル君から貰った飴を舐めるのに必死なので、そちらは見ません・・。うう、甘くて美味しい。
アル君はちょっと落ち着いた私を見て、作っているカバンを広げてみせた。
「カバンの持ち手の所、今度少し補強しておきたいんです」
「あ、そこ・・やっぱり気になるか〜。軽いけど、ずっと持ってると手が痛くなるもんね」
「今度、しっかりめの作って・・」
そう言いかけた途端、ドアがバンっと大きく開かれて、ビクッと体が跳ねた。
慌てて振り返ると、ミスクさんが大きなカバンを持って立っていた。
「み、ミスクさん?!!」
「もー、こっちに住む!!!」
慌ててミスクさんのそばへ行くと、ミスクさんは怒りの形相でモーリスさんを見て、
「寮に申請してきます!!」
「はいはい、いってらっしゃい〜」
「りつ、詳しい話は後で!!ちょっと行ってくるわ!!」
そういうと、カツカツと足音を立てて行ってしまった・・。え、ええと・・?
モーリスさんは、大きなため息をついて・・、
「ありゃ、話し合いは上手くいかなかったみたいだなぁ・・」
「モーリスさん、知ってたんですか?」
「まぁ、何度か相談は受けてたし・・、まったく魔法が使えないと恥ずかしい・・みたいな意識、どうにかなんないかねぇ・・」
そう言って、またため息をついて椅子に寄りかかるようにモーリスさんは座った。
パルクさんもミスクさんの作業台を見る。
「・・本当なら、十分な偉業を成し遂げているんですがね・・」
そうかぁ・・その意識、ミスクさんの親も持っていたのかぁ・・そりゃ、上手くいかないな。アル君を見ると複雑な顔をしている。
「アル君の家もそんな感じなの?」
「いえ、うちは魔力はそんなにない家なので、馬鹿にされる側ですね」
「え??!少なくても、言われるの??!」
ちょっと頭が痛い・・。
なんで、少ないとか多いとか、ないとかあるとかで差別したり、馬鹿にするんだろう・・。私はアル君を見つめて、
「・・カバン、絶対作ってそんな考え、吹っ飛ばしちゃおうね!」
「・・はい!」
そういうとアル君もいい笑顔で笑ってくれた。
周りのみんなも、ちょっと嬉しそうで・・、頑張るぞってなんか・・力が湧いてきた。
レイト君も、そんな風に馬鹿にする人達の意識を変えたいって言ってて・・、私はサポートしたいって言ったけど・・、今は違う。私も微力だろうけど、変えていきたい!そう思った・・。
できる事なら、みんなが笑顔でいられたらいいしね・・。
そう思ってカバンに針を刺していると、レイト君が柔らかく笑うから・・、また照れてしまった。




