天才、歩み寄る。
翌日、ミスクさんは緊張した顔で出勤してきた。
「・・・絶対、何か言う気満々なんだよね・・」
思いっきりため息をついていた・・。
作業台で実験の準備をしながら、もう一度大きな深い、深いため息をつく。これは相当なんだな・・。
「夕方まで仕事してから帰るの?」
「ううん・・、お昼食べたら帰る・・、会いたくないけど」
ミスクさんに会いたくないと言わせてしまう親御さん・・どんなんだ。
レイト君をチラッと見ると、肩をすくめて両手をオーバーに上げてた。外人か。あ、異世界人か。
「そういえば・・、ミスクさんは何を作ってるの?」
「あ、私?冷蔵はできる箱があるから、冷凍って言って、物を凍らせる箱を作ってるの・・」
「え!!そうだったの?あ、そういえば・・冷凍箱?ってなかったかも・・!ええ〜〜、できたらすごく便利ですね!!」
アイスもできるし、ジュースに氷も入れられるし、食品の保存も可能ではないか!!
ミスクさんはにっこり笑って、私を嬉しそうに見る。
「そうでしょ〜?そうでしょ〜〜??りつならそう言ってくれると思った〜!もう少しで出来あがりそうなんだけど・・、ここの回線で悩んでるのよね・・」
「か、回線・・・!!!!」
回線なぁ〜〜〜。
私も、アル君も苦手なんだよね〜・・・。
チラッとレイト君を見たけど、あっちもあっちで大変だしなぁ・・。
ミスクさんは、設計図を見ながら「とにかく頑張る!」と張り切ってまた実験を始めたので、少し安心した私は自分の作業台に戻って、カバンの試作品を作るべくアル君とまた黙々と縫うのであった・・。指が!指がぁあ!!
お昼を一緒に食べてから、ミスクさんはしかめっ面になりながら帰っていった・・。大丈夫かな・・。ちょっと不安に思いつつ、仕事場に早めに戻るとレイト君がミスクさんの設計図を見ていた。あ、珍しい・・。
「・・・ミスクさん、どうだった?」
「ん〜〜・・、すっごいしかめっ面しながら帰っていった」
レイト君も心配してたのか・・。優しいな。
「ミスクさん家も、あんまり親御さんと仲良くねーからな・・」
「そうなのか・・難しいねぇ・・」
設計図を私を見てみるけど・・、すっごい複雑だな・・、目がチカチカする・・。でも、冷凍できる箱が出来たらアイス作りたいなぁ。そんな風にじっと設計図を見ていると、視線を感じて顔を上げるとレイト君と目が合った。
「・・ん?何?」
「お前の家は?」
「あー・・・、うちもあんまり?もう多分一生会わないよ・・」
というか、会えないんだけど。心の中で、ポツリと呟く。レイト君は、「そっか・・」と呟いて設計図をまた見つめた。
「まぁ、今はミスクさんやレイト君達がいるから、寂しくないよ。むしろ、今の方が楽しいかも」
そう言ってレイト君に笑いかけると、レイト君はちょっと眉を下げて笑った。
本当だぞ?無理してないぞ?我慢もしてないぞ!
じっとそう訴えかけるように、私がレイト君を見つめると、レイト君はちょっと目元を赤くして、大きな手で私の頭をわしわしと撫でる。
「・・・そんな、見るな」
「え〜〜、心配しないように、こう元気だぞ!って訴えたんだけど・・」
ちょっと拗ねましたよ、私。
せっかく元気だぞって訴えたのに・・目線でだけだけど・・。
「・・・・勘違いしそうだから・・」
「勘違い??」
何を勘違いするんだろう?
元気だぞって訴えかけても、心配になっちゃうのか?
不思議に思って、レイト君をもう一度見つめてみた。
えーと、元気だし、楽しいよ!心配ないさー!!って、どっかの劇場の動物みたく心の中で歌ってみると、レイト君はグッと何かを耐えるような顔をして、それからちょっと視線を彷徨わせた。
そうして、私をじっと見つめたと思ったら、頬にそっとキスしてきた。
ん・・・・・
んん・・・・・?
バッと、勢いよく後ろに飛んだ。とりあえず飛んだ。
え?なんで??
真っ赤な顔で、口をパクパクとさせていると、レイト君はイタズラが成功したような笑顔でこちらを見ていた。
「こういう事だ」
って言うけど、どう言う事なんでしょうか???天才の言いたい事が理解できなくて、私にはさっぱりです!!




