凡人、気遣われる。
ちょっと落ち込んでいるミスクさんに、少しでも元気になって欲しくて、ご両親が帰ったらまたお茶しに行こうと約束した。何か先に楽しい事があれば、気持ちも違うかなって。
ミスクさんはようやく笑顔になって、ご飯を食べ終わったら玄関まで見送った。
今日から寮生活かぁ〜・・。
寮の玄関に入ると談話室があって、左手の壁にはカウンターが奥まで設置され、一人用のソファーがいくつかカウンターの前に並んで置いてある。そこで話をしたり、仕事してるのか、何か本を読みながら作り物をしている人もいる。
ふと、その一番奥にレイト君が本を読みつつ、座っているのが見えた。
へ〜・・、さっさと部屋に篭りそうなのに、談話室で過ごす事もあるんだ・・。意外だな〜と思って見ていると目が合って、手招きされたので、ちょっとドキドキしつつ近くへ行く。
「ミスクさん、大丈夫だったか?」
「お茶の約束したら、大分元気になった・・かな?」
「なんで疑問形になるんだよ・・」
「いや、私ごときとお茶の約束をして嬉しいものかな・・と思って」
なんせ、おんぶに抱っこしていた相手に、お茶しよう!って嬉しいのか?
って、思ったら・・ちょっと自信がなくなってきて・・、レイト君はソファーに寄りかかりつつ、面白そうに私を見る。
「意外、そんな風に考えるんだ」
「・・・私は、どんな図々しい人だと思われてたのかな?」
これでも私は謙虚に生きてきた・・はず。
隣の一人用のソファーに座って、目の前のいくつか並んでいる窓の外を見る。
「・・・これでも結構必死で生きてるんですけど」
「まぁ、そうだな」
レイト君が、開いていた本に栞を挟む。
あ、作った栞だ!鉛筆の栞を見て、嬉しくなってにこ〜っと笑ってしまう。
「・・必死に生きている割りに、すぐ緩む頬だな」
「嬉しいなって思ったら、すぐ喜ぶという素敵なシステムなの」
全くこの天才は、すぐにツッコミを入れたがるな。
ブスッとしつつ、本を返そうと思っていた事を思い出してソファーから立つと、レイト君が私を見上げて、
「もう部屋戻るのか?」
って、聞くので「本を取りに・・」って言うと、ふーん・・と言いながらまた本を読みだした。なんだね、聞いておいて。
「席、戻ってくるから取っておいて」
「はいはい」
そういって本を取りに部屋へ戻って、せっかくだし・・と、折り紙を一つ折って本に挟んでおいた。談話室へ戻ると、レイト君は本を黙々と読んでいて・・、私より年上に見えるな、うん。デカイっていいな・・って思った。
「レイト君、これ・・本、長い間貸してくれてありがとう」
「ああ・・」
「レイト君も談話室とか使うんだね〜、なんかすぐ部屋に戻ってそうなイメージだった」
「まぁ、いつもはそうだな」
へぇ・・そうなの?やっぱり??
私がレイト君を見ると、返した本を開いて折り紙を見つけた。あ、早いな。
「今日は泣いてたのに、いきなりの寮暮らしだからな・・」
そう言われて、ようやくわかった・・。
心配してくれたのか・・それで、私の事を待っててくれたのか・・。
な、なんだそれ・・。嬉しくなってしまうではないか。
レイト君は、私の作った紙風船をちょっと引っ張ってみたり、折り目を観察して・・、私を見ると、紙風船を渡す。
「空気、どこに入れるんだっけ?」
「あ、ここ・・」
「やって」
「え〜〜、これ、自分でやるから面白いのに・・」
まぁいっか、そう思ってふっと息を入れると紙風船は膨らんで、魔法をかけておいたので、淡く光ると・・レイト君は私の手の中の明かりを、面白そうに見る。
「・・これ、いいな」
「ありがたき幸せ・・」
ちょっと照れくさくて誤魔化すように茶化したら、小さく笑って私の手の中の明かりをそっと取ってじっと見るから・・、なんというかええと・・・非常ーーーーに照れ臭い!!




