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51話 彼女の真意【湊視点】

 永遠に続くような気がしたこの居たたまれない時間は、予想とは裏腹にすぐに終わってしまった。


 さっきまで散々笑っていた広瀬さんが急に真面目な顔になり俺をまっすぐ見つめる。


 「湊……。緊張しすぎてもう滅茶苦茶じゃない。おかげで嬉しいを通り越して吹き出しちゃったじゃない。俺とか僕とか、乱暴な言葉使いかと思ったら丁寧な言葉使いに変わったりキャラぶれすぎて、本当の湊はどれ?って感じだったわよ」


 俺の告白の仕方が悪かったのだろうか……?いや、流石にそれはないだろう。告白するなんて人生で初めての経験だったのだ。多少テンパっていたとしても仕方ないじゃないか。


 「それでも笑うことはないだろ?」


 この場から逃げたい気持ちを抑え、俺は広瀬さんに向かって抗議の声を上げた。その声には少しだけ怒りの要素が含まれていた。


 「ごめんなさい、笑ってしまったのは謝るわ。でも湊の気持ちがとても伝わったよ……。告白してくれてありがとう」


 そう言ってはにかむ彼女に完全に毒気を抜かれてしまい、それ以上の抗議の言葉が俺の口から出てこず、ひっそりと静まり返る。


 「告白の返事の前に少しだけ話をさせてもらっていいかな?」


 俺は無言で頷く。


 「最近私が不機嫌だった理由なんだけど、実は焦ってたからなの。知ってるかどうか分からないけど私はあなたの内面に惹かれたんだ。そりゃこれで見た目が良ければ……って思ったことがないとは言えないけど」


 そう言って苦笑する広瀬さん。俺は言葉を発することなく黙って見つめる。


 「でもね、一つだけ。湊のおどおどした態度がすっごい嫌だった。でも、これから私が何とかすればいいやって思ってたんだけど、本当のあなたは挙動不審でも容姿に無頓着でもなかった。私が少しづつあなたの良いところを見つけて好きになっていったのに、外見だけで告白してくる女の子が許せなくてずっとモヤモヤしてた」


 俺が感じてたことを、広瀬さんも同じように考えていたとは正直思わなかった。こんなところまで同じだったなんて……。嬉しくてつい笑みがこぼれてしまった


 「ちょっと!?笑うなんて失礼じゃない!!あっ……」


 そう言った彼女が苦笑いを浮かべる。


 「さっきの私はもっと酷いことをしちゃったね。ごめんなさい」


 「これでお互いさまになったね。気にしないで続けて」


 俺は、広瀬さんに先を促す。


 「私はこんな性格だから、素直になかなかなれなくて。だから、湊の一番身近な存在になったなんて思えなくて、いつあなたの前に素敵な女の子が現れるかずっと心配だった。だから湊には目立ってほしくなかったから、今まで通りの姿でいてくれる様にお願いしたのに、ちっとも言う事聞いてくれないんだもん」


 「え……?あれお願いだったの……?」

 

 広瀬さんの目が細められる。俺はすぐさま自分の失態に気付いたが既に遅かった。


 「私の事が好きだったらそれぐらいの事は察しなさいよ!!本当に私の事好きなの!?信じられない!!」


 広瀬さんの物言いにカチンときた俺は間髪入れずに言い返す。


 「好きに決まってるだろう!!そういう面倒くさい性格も含めて大好きだよ!!」


 広瀬さんの顔がこれ以上ないぐらい真っ赤に染まる。周りを見渡せばいつのまにか大勢のギャラリーが居た。


 「広瀬さん……その。良かったら場所を変えようか?」


 「はあ……!?私にも返事ぐらいさせなさいよ!!」


 ダメだ、広瀬さんには全然周りが見えてないらしい。こりゃ後で確実に文句言われるだろうな……。ここまでの流れで、彼女の返事は聞かなくても分かる。きっと俺が望む形である事は疑いようがないだろう。


 にやけてしまいそうになる顔を真顔で保つのはなかなかの苦行だな……そんな場違いな事を考えながらこれから発せられる彼女の言葉を心待ちにしていた。

いつも読んでくださってありがとうございます。もう少しで本編終了の予定です。出来るだけ更新が遅れないように頑張れたらいいなと思います。

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